土砂災害を防ぐために全国各地の河川や渓流などに整備されている「砂防堰堤(さぼうえんてい)」を活用し、小規模な水力発電を行う取り組みが進んでいます。国土交通省は2026年11月6日、全国の既設砂防堰堤を活用した水力発電の取り組み事例をまとめた資料を初めて公表しました。
本事例集は、すでに全国で稼働している発電施設の中から掲載が可能な63件の事例を取りまとめたものです。従来は防災や治水のみを主目的としていた公的インフラを、持続可能なエネルギーの創出源としても多面的に役立てる手法が具体的に示されています。
既存の遊休インフラや公有地を有効活用した再生可能エネルギーの創出は、地域の脱炭素化を進めるだけでなく、新たな資産活用やインフラビジネスの可能性を広げる試みとして関心を集めています。
この記事のポイント
- 国土交通省が全国の既設砂防堰堤を活用した小水力発電の事例集を初公表
- 全国6万基以上の堰堤のうち、実際に稼働している63件の取組を紹介
- 本来の防災・治水機能を維持しながら再生可能エネルギーを創出する試み
- 遊休インフラの有効活用や地域脱炭素モデルとして投資関係者からも注目される可能性
ニュースの概要と背景
砂防堰堤とは、山間部などからの土砂流出を食い止め、下流にある住宅地や生活基盤を土砂災害から守るために設置された堤防のような工作物です。国土交通省の資料によると、日本全国にはすでに6万基以上の砂防堰堤が存在しており、膨大なインフラストックとして各地に維持管理されています。
近年では、地球温暖化対策やカーボンニュートラルの実現に向けた動きが活発化しており、地域固有の資源を生かした再生可能エネルギーの導入拡大が強く求められています。その中で、山間部の高低差と豊富な水流を備えた既設の砂防堰堤は、小水力発電設備を導入する基盤として有望視されてきました。
今回公表された「砂防堰堤を活用した水力発電の取組事例集」では、実際に稼働している63件の事例が整理され、どのような形で堰堤に発電設備を組み込み、電力を生み出しているかが紹介されています。治水施設としての本来の安全機能を維持しつつ、エネルギー創出を両立させる先例が体系化された形です。
公的機関がこうした実績を取りまとめて公表することは、今後同様の設備導入を検討する地方自治体や事業者にとって貴重な先行知見となります。既存資産の付加価値向上や地域活性化を目指すプロジェクトにおいて、実践的なモデルケースとして活用されることが期待されています。
不動産市場・投資家への影響
今回の取り組みは、不動産やインフラに関わる実務者や投資家にとって、公有インフラや未利用ストックの収益化・有効活用という観点から注目に値します。従来の不動産開発や土地利用とは異なり、既存の治水構造物を生かしたエネルギー事業は、新たなストック活用モデルの一例となり得ます。
昨今、ESG(環境・社会・企業統治)投資への配慮や持続可能な社会づくりへの貢献を重視するファンドや投資家が増加しています。地域インフラを活用した脱炭素プロジェクトは、社会的意義と安定したエネルギー事業を組み合わせた投資対象として関心を集める可能性があります。
ただし、砂防堰堤のような治水インフラを活用する事業では、本来の防災機能の維持が最優先されるため、関係行政機関との調整や各種許認可の取得が前提となります。また、河川の水量変化や土砂の堆積状況といった自然環境への対応など、一般的な不動産投資とは異なるリスク管理が求められる点には留意が必要です。
既存の社会インフラを多目的に利用し、新たな価値を付加していく試みは、地方創生や遊休資産の有効活用の議論とも深く結びついています。不動産業界やインフラファンドの関係者にとっても、地域資源と再エネを融合させた新たなアセットマネジメントの手法として、今後の展開を注視していく価値があるといえます。
出典:「砂防堰堤を活用した水力発電の取組事例集」を作成しました~既設砂防堰堤活用による再生可能エネルギーの創出~ | 国土交通省





