建物の屋上や外壁、バルコニーなどからの雨水の浸入を防ぎ、構造の耐久性を守る専門工事を担う「防水工事業」において、事業者の倒産が大幅に増加している実態が民間信用調査会社のまとめで判明しました。
東京商工リサーチの公表データによると、2026年1月から9月までの防水工事業者の倒産件数は46件に達し、過去に高い水準を記録した2008年同期の48件に迫る、18年ぶりの高水準を記録しています。近年頻発する豪雨被害や既存建物の老朽化対策により、本来であれば維持修繕工事の必要性が増している局面であるにもかかわらず、現場を支える施工業者の経営環境は急速に悪化しています。
気候変動による集中豪雨や大型台風などの大雨被害が相次ぎ、防災や減災の観点からも専門工事業者の役割は不可欠となっています。それだけに、小規模・零細企業を中心とした事業者の淘汰が加速することは、今後の不動産ストックの維持修繕実務や災害後の復旧活動に重大な支障をきたしかねないと懸念されています。
この記事のポイント
- 2026年1〜9月の防水工事業の倒産は46件で、2008年同期に次ぐ18年ぶりの高水準となった
- ハウスメーカー倒産の急増に伴う戸建て住宅着工の低迷が、受注減少の要因となっている
- 建設業界の下請け構造により、小規模・零細な防水工事業者の採算悪化が深刻化している
- 大雨被害が増加する中、施工業者の淘汰により建物の緊急修繕や復旧に支障が出る恐れがある
- マンションやビルの大規模修繕など、不動産ストックの維持管理や費用面への影響に注視が必要
ニュースの概要と背景
東京商工リサーチが2026年11月7日に公表した調査結果によると、2026年1〜9月期における防水工事業の倒産件数は46件に上りました。これはリーマン・ショックの影響が色濃かった2008年同期の48件に次ぐ規模であり、実に18年ぶりとなる深刻な倒産ペースとなっています。
今回の倒産急増の背景には、戸建て住宅市場における新築着工件数の低迷があります。住宅供給を担ってきたハウスメーカーの倒産が急増した影響を強く受け、これまで新築住宅の防水施工を手がけてきた事業者の工事受注が大幅に減少していることが大きな要因として挙げられます。
これに加え、建設業界に根強く残る重層的な下請け構造も、経営体力の乏しい事業者を直撃しています。元請けから一次、二次と多段階に工事が発注される過程において、ピラミッドの末端に位置する小規模・零細な防水工事業者は、資材や労務などのコスト上昇を請負価格へ適切に転嫁することが極めて難しい状況に置かれています。
その結果、受注単価の低下や採算の悪化が常態化し、工事を行っても十分な利益を残せない構造的な問題が生じています。本来であれば近年の気象激甚化に伴い重要性が高まるべき専門工事業種でありながら、新築需要の減少と下請け採算の悪化という二重苦により、現場を支えてきた施工業者の体力が限界に達している様子が浮き彫りとなっています。
不動産市場・投資家への影響
防水工事業者の淘汰が進む動きは、住宅や収益物件を保有・運用する不動産オーナーや投資家、管理会社にとっても看過できない重要な市況動向です。防水機能の劣化は雨漏りや躯体内部の腐食を招き、建物の資産価値や寿命を大きく損なう直結のリスクとなるため、専門業者の減少は建物維持管理の基盤を揺るがしかねません。
特に実務面で懸念されるのが、台風や線状降水帯などの集中豪雨によって外壁や屋上などに雨漏りや破損が発生した際の、緊急修繕や復旧工事への影響です。地域に密着して迅速に対応してきた施工業者が不足すれば、被災から復旧着工までの待機期間が長期化し、漏水による室内被害や建物劣化が拡大する恐れがあります。
さらに中長期的な維持管理の観点でも、マンションや商業ビル、オフィスビルの大規模修繕工事において大きな影響が想定されます。専門技術を持つ防水施工業者の選択肢が狭まることで、工事の発注先確保が困難になり、修繕スケジュールの遅延や、競争原理が働かないことによる修繕コストの適正化が阻害されるリスクが高まります。
不動産関係者は、自社が保有・管理する物件の長期修繕計画に無理や遅延が生じないか改めて点検するとともに、委託先である施工会社や協力会社の経営状況や施工能力に目を配る必要があります。施工網の健全性を注視し、防災と適切な修繕体制を維持するための管理体制を整えることが強く求められます。





