不動産会社のホームページやセミナー等で「不動産投資はレバレッジで収益を伸ばせる」という文言を目にしますが、レバレッジ効果とは一体何でしょうか?
不動産投資はレバレッジを活用することで大きなリターンが得られる投資です。一方で、リスクも存在します。
この記事では、レバレッジとは何なのか、そして活用することでどんなメリット・デメリットがあるのかご紹介します。ご自身の不動産投資の戦略立てにご活用ください。
不動産投資における「レバレッジ」とは
「レバレッジ(=Leverage)」とは「てこの原理」を意味し、投資の世界でよく使われる言葉です。
てこの原理のように、少ない資本(力)で大きなリターンを得られることを「レバレッジ効果がある」と言います。
不動産投資に置きかえると「ローンの活用などで少額の自己資金で大きな投資効果(収益)を得る」ことを指します。
レバレッジを活かす場合とそうでない場合との比較や効果については、以下の記事をご覧ください。
>『不動産投資の初心者に必要な5つのノウハウ│始め方は?いくら必要?成功のコツは?』
不動産投資はなぜレバレッジ効果が高いのか?そのメリットとは
レバレッジ効果のある投資は不動産投資以外もあります。
たとえば代表的な投資としてFXや株式の信用取引があり、これらは証拠金を預けることで数倍の収益を期待することもできます。
ただし、FXや信用取引はハイリスク・ハイリターンの投資であるため、失敗した際の損失がきわめて大きく、投資に慣れた上級者や余剰資金がある方向けの投資方法として推奨されています。
一方で、不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資であるといわれており、初心者でも着手しやすい安定した投資方法です。
不動産投資ローンなど借入を行うことで、自己資金の何倍もの投資を行うことができるため、不動産投資は特にレバレッジ効果が高いと言われているのです。
担保となる不動産が財産として形に残るため、金融機関から信頼を得てお金を借り入れやすいという特徴があり、これは不動産投資特有のメリットと言えます。
また不動産投資において、レバレッジを活用することのメリットがもうひとつあります。それは、融資を利用する際に「団体信用生命保険」に加入できることです。
団体信用生命保険は、略して「団信」といわれ、ローンを利用することで加入できる保険です。
加入すると、ローンの返済期間中に加入者が死亡したり高度の障害を負ってしまったりした場合、生命保険会社がローンの残債を加入者に代わって銀行などに支払い、返済を肩代わりしてくれる保険です。
加入者に万が一のことがあった際にも、残された家族が安心して生活することができるためのもので、住宅ローンでも加入できます。
このように、不動産投資はリスクが限定的でありながら、自己資金と借入金を合わせることで小さい自己資金で収益性をあげられるため、レバレッジ効果が高いといわれています。
不動産投資におけるレバレッジの具体例
レバレッジ効果についてここまで述べていきましたが、「イメージがしきれない」という方もいるかと思います。
ここでは具体的な計算をしながら、レバレッジの理解を深めていきます。同じ資金でありながら融資の有無によって収益が変わることを確認してみてください。
自己資金だけで不動産投資を行う場合の例
自己資金1000万円で物件購入を行い、年間80万円の家賃収益を得たとします。その場合の表面利回りは8%となります。
計算方法は以下のとおりです。
・年間収入80万円 ÷ 税込みの物件価格1000万円 × 100 = 8%
なお「利回り」について計算方法を含めてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>『不動産投資の理想の利回りが自分でわかる!初心者向け利回り完全ガイド』
レバレッジをかけて不動産投資を行う場合の例
次にレバレッジをかけた場合の計算をします。自己資金の頭金1000万円に加え、2000万円の借入を行い、3000万円で物件購入した場合で考えてみましょう。
計算を単純化するため、家賃収入も同じく3倍の240万円が得られたと仮定します。この場合の表面利回りは…
・年間収入240万円 ÷ 税込みの物件価格3000万円 × 100 = 8%
最初の例と同じ8%ですが、融資を受けているためここからローン返済分を引き、その差額が最終の収益になります。
仮に初年度の金利が3%だったとすると、年間の利息は約60万円です。
すると…
・240万円 ー 60万円 = 180万円
180万円が収益です。
同じ1000万円の元手であっても、不動産投資ローンを利用することで100万円もの年間収入増を実現することができました。
このように、融資を受けて自己資金以外の資本を活用し、大きな収益を得ることができる点が不動産投資においてレバレッジを活用するメリットです。
レバレッジにはリスクもある=「逆レバレッジ」とは?
ここまで不動産投資にレバレッジをかけることで高いリターンを望めることをご紹介してきました。しかし、裏を返せば失敗したときのリスクが大きくなる、ということも知っておく必要があります。
本来の利益を高める効果が逆に働き、損失を出してしまう状態を「逆レバレッジ」といいます。「逆レバレッジ」が生じる要因は下記の2点です。
1.ローンの金利が利回りを上回る(金利上昇リスク)
2.利回りが出ない(借入リスク)
ひとつずつ説明します。
1.ローンの金利が利回りを上回る(金利上昇リスク)
不動産投資ローンを活用してレバレッジをかけようとする上では、ローンの「金利」が大切な要素となってきます。
たとえば、借入額2000万円を、返済期間30年、低金利の1.5%で借りることができたとしましょう。この場合、毎月の返済額は約6.9万円です。
ところが、この金利がわずか1ポイント上昇して2.5%まで上がったとしましょう。すると毎月の返済額は一気に1万円も増額し、約7.9万円になってしまいます。
このように、金利がわずかに変わるだけで毎月の返済額は大きく上昇します。レバレッジを活用する際には金利上昇リスクをしっかりと認識した上で、金利上昇が生じたとしても余裕を持って返済できるよう、事業計画を立てることが必要不可欠です。
なお、金利について詳しくまとめた別の記事があります。よろしければ併せてご覧ください。
>『不動産投資ローンを知る!金利比較・相場ランキング・チェックすべきポイントまとめ』
2.利回りが出ない(借入リスク)
災害や空室率の増加により、家賃収入の減少や収入が望めない場合もリスクとして想定しておく必要があります。
もしも不動産投資用の物件を現金購入した場合であれば、多少の空室が生じてもローン返済の必要はないため、収支への影響は限定的です。
一方で、不動産投資ローンを使って物件を購入している場合は、空室により家賃収入がゼロになってしまう状況であってもローンの返済をしなければなりません。自己資金の持ち出しが必要になり、毎月の返済が自身の実生活に影響を及ぼすおそれがあります。
レバレッジを効かせれば効かせるほど毎月の返済額は大きくなります。マイナスの方向に行く可能性もあることを踏まえた上で、検討する必要があることを覚えておきましょう。
レバレッジをかける際の注意点4つ
レバレッジ効果を活かして不動産投資を行うためには、不動産投資ローンの融資条件や物件の収益性だけでなく、将来的な金利動向や借入金額にも注意する必要があります。
ここでは4点の代表的な注意点をご紹介します。
1.レバレッジをかけるための融資がおりるか確認する
2.レバレッジ効果の高さだけで物件を選ばない
3.現実的な利回りを想定する
4.キャッシュ(現金)の残高を把握する
ひとつずつ説明します。
注意点1.レバレッジをかけるための融資がおりるか確認する
「自己資金が少なくても不動産投資できる方法があるんだ!」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
そのとおりではありますが、しかし不動産投資ローンは、「誰でも」「いくらでも」借りられるというものではありません。
不動産投資ローンは以下のような内容を基に個人の信用情報を分析して、融資の可否や限度額が決定されます。
・年収
・勤務先の勤続年数
・勤務先の規模(従業員数・小さい会社の場合は資本金など)
・他のローンの借入れ状況
大手企業に勤務して年収も高く、他に自動車ローンなども組んでいない方であっても、過去にクレジットカードの滞納などがあれば審査に通らないこともあります。そのため、日頃から注意が必要です。
注意点2.レバレッジ効果の高さだけで物件を選ばない
レバレッジ効果の高さだけを考慮して、金額の高い物件を選ぶのは控えましょう。
不動産投資の特徴は、長期運用により安定的な収益を得られることです。物件を選ぶ際はレバレッジよりも、長期的に利益が出るかどうかに注目して物件を選ぶことが大切です。
利回りが高く設定されていて、融資を受けることで黒字のまま運営できそうな物件でも、詳細を確認してみると設定されている利回りが長続きしない場合もあります。
そうすると、空室が続いたり家賃を下げる必要が出たりするなど、結果的には想定していた収益を得られないことがあります。長期的に安定した収益を上げられる物件を探すようにしましょう。
なお物件の選び方については以下の記事に詳しくまとめていますので併せてご覧いただくと参考になります。
>『不動産投資用の物件の選び方│種類と目的別の選び方まとめ』
注意点3.現実的な利回りを想定する
不動産投資にかかる費用は不動産物件の購入金額やローンの返済金額だけではありません。
固都税(固定資産税と都市計画税)などの税金や管理費、各種の保険料、修繕積立金など、諸費用を考慮する必要があります。
物件の購入価格だけで計算する利回りを「表面利回り」というのに対し、これらの諸費用を差し引いて最終的に手元に残る金額で計算したい利回りを「実質利回り」といいます。
実質利回り(%)の計算方法は以下のとおりです。
・(年間家賃収入-年間コスト)÷(税込み物件価格+購入時コスト)×100
諸費用を含めて計算することで、より正確なレバレッジ効果を想定することができます。
注意点4.キャッシュの残高を把握する
不動産投資において不測の事態に備えて現金を手元に残しておくことは鉄則であり、レバレッジを活用する上でもキャッシュ残高は要チェックポイントとなります。
逆レバレッジの説明で示したように、万が一うまくいかなくなった場合、自己資金から損失を穴埋めしなければならないリスクを考慮する必要があり、その事態に備えてキャッシュにゆとりを持っておかなければならないためです。
レバレッジを多くかけているほど、損失額は多額になるリスクがあります。一定額のキャッシュを常に保有しておくことが重要です。
まとめ:不動産投資で上手にレバレッジを活用しよう
不動産投資においてレバレッジは大きな収益を上げるために欠かせない要素です。上手くレバレッジをかけることができれば、自己資金を大きく超えた物件に投資をすることができ、大きなリターンを得ることができるでしょう。
一方で、使い方によっては金利上昇リスク・借入リスクが要因で逆レバレッジを起こし、大きな損失を出してしまうおそれもあります。
適正なレバレッジを活用した不動産投資を行うにあたり、当サイトの情報が参考になれば幸いです。