注目の民法改正
2020年4月1日より施行される民法改正。
不動産業界にも大きく関わる本件について分かりやすく解説します。
不動産業界への影響
連日、ニュースで聞かない日はない「コロナウィルス」。
皆様日々の体調管理や予防はされていますでしょうか?
全国各地で感染者が広がり、収束には11月までかかるのではないかと言われている状況ではありますが、そんな中、不動産業界では2020年4月に民法の改正が行われます。
そこで今回は、この改正によって不動産市況がどのような影響を受け、今後どう変わっていくのか をお話していきたいと思います。
敷金とそれにまつわる現在のトラブル
敷金とは、部屋を借りる人が持ち主に預けておく預り金のことを言い、その費用は家賃の約1ヶ月分相当額程度がかかると言われています。
基本的に家賃の滞納リスクや、人に部屋を貸すことによって壊れたり汚れたりするリスクに備えて事前に預けるお金ですが、退去時の費用をお預かりしている敷金から相殺し、返金してもらえる場合もあります。
ただ、原状回復費用として返金されない事も多く、退去時に返金を巡り賃貸人と賃借人の間でトラブルが起きることもあります。
原状回復費用とは、退去時に一定の範囲で部屋を元の状態に戻すために支払う費用とされており、現在の規定は曖昧なものです。
この規定に関するトラブルは年々減少してきてはいますが、左のグラフを見ると、2019年でも約8,000件の相談が寄せられていることが分かります。
相談件数は2019年12月31日現在(消費生活センター等からの経由相談は含まれていません)
最近のトラブル例を挙げると、
・賃貸マンションを解約したら、ペット特約を根拠に原状回復費用を過剰に請求された。納得できない。
・5年間居住した賃貸アパートを退去したら、管理会社からクリーニング代や修繕費を請求された。額で納得できない。
・賃貸アパートの退去時に敷金を半額返金すると聞いていたが、清掃費が追加されて返金されないという通知書が届いた。敷金を返金してほしい。
などがあります。(独立行政法人 国民生活センターより)
もともと聞いていた話と違う、請求される金額があまりにも高額だ、という賃借人の意見が多いようです。
こうしたトラブルを踏まえて、2020年4月から民法が改正されるのです。
民法の改正点
では具体的に、どのように改正が行われるのでしょうか?
特に今回の改正では原状回復に関するルールが明文化されるようになりました。
『改正民法621条』(賃借人の原状回復義務)
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年の変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を現状に服する義務を負う。
ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない。
つまり、「賃料の滞納や、別途ガイドラインで定めるもの以外、原則敷金は返してもらえる」という内容を改めて定めたものになっています。
敷金が返ってくるのは賃借人にとっては嬉しいことになりますが、一方で貸す側、不動産管理会社の中には、敷金・礼金を収入基盤としている会社もあるため、そういった会社は今回の改正により打撃を受けることになります。
改正前は曖昧な基準で賃借人に請求することができたものができなくなってしまうので、今後存続危機にさらされていくことになるのです。
それでは逆にどんな会社が残るのかというと、管理戸数を多く持ち、そこから得られる管理手数料で収益基盤を整えている、ある程度の規模・資金力のある会社ということなので、そういった会社が数多く残れば管理を任せる側としても安心です。
不動産業界といえば、ここ1、2年でレオパレス問題、大東建託の問題などが起こり、不動産投資に取り組もうとされている方を不安にさせるような事件もありました。
しかしながら、今回の民法改正という形で、今後安心して不動産投資を始められる環境に変わろうとしています。
それが今の不動産業界であり、これからの不動産業界の在り方を大きく変化させるきっかけとなるに違いないでしょう。