民間調査会社の東京商工リサーチが公表した調査結果によると、2026年10月の「人手不足」に関連する企業の倒産件数が、10月単月としては過去最多となる50件に達したことが分かりました。
今回の調査対象は負債額が1,000万円以上の倒産事例です。集計によると、2026年1月から10月までの累計件数は418件に上り、年間を通じて過去最多であった前年の398件をこの時点で上回るペースとなっています。
深刻化する人員不足に加え、給与水準の引き上げや待遇改善に伴う負担増が企業の経営を圧迫しており、とりわけ建設業をはじめとした現場作業を伴う業種において倒産件数の増加が目立っています。
この記事のポイント
- 2026年10月の人手不足倒産は50件となり、前年同月比35.1%増で10月として過去最多を記録しました。
- 1〜10月の累計は418件に達し、前年の年間最多記録であった398件を早くも更新しています。
- 倒産要因の64.0%を人件費高騰が占めており、物価高や最低賃金引き上げが中小企業の収益を圧迫しています。
- 建設業の倒産は前年比100%増の8件となり、施工費の上昇や工期遅延リスクへの注視が必要です。
ニュースの概要と背景
公表されたデータによると、10月に発生した人手不足関連の倒産件数は前年同月と比べて35.1%の大幅な増加となりました。月次ベースで50件という規模に達したのは、10月の集計として過去最多の記録となります。年間累計でも10月時点で前年の水準を突破しており、企業経営を取り巻く労働環境の厳しさが浮き彫りとなっています。
倒産に至った具体的な要因を分析すると、従業員の確保や定着を図るための賃金引き上げ、各種待遇の改善に起因する「人件費高騰」が32件を占めました。これは前年同月比で45.4%の増加となっており、全体の64.0%という極めて高い割合を占めています。確保が困難なだけでなく、維持するための人件費の上昇が直接的な引き金となっている状況です。
背景には、社会全体で進む物価の上昇傾向に加え、法的に定められた最低賃金の引き上げなどが重なっている点があります。体力的な余裕に乏しい中小企業や零細企業では、こうした固定費の増加分を十分に吸収しきれず、結果として資金繰りが限界に達してしまう事例が多発しているとみられます。
業種別の動向に着目すると、特に人を直接稼働させる必要性が高い労働集約型の産業で悪影響が顕著です。その代表例である建設業においては、10月の倒産が8件発生し、前年同月と比べて100%増、すなわち2倍の規模に急増しました。サービス業などを含め、人の手に頼らざるを得ない現場ほど負担が集中しています。
不動産市場・投資家への影響
建設業における人手不足倒産の急増は、不動産市場や開発プロジェクト全体にも間接的な影響を及ぼす可能性があります。建設現場では職人や現場管理者の確保が不可欠ですが、施工を担う企業が経営破綻したり人件費の負担に耐えかねたりすることで、工事の進行に支障が出るケースが懸念されます。
不動産の開発や住宅の建築現場においては、人件費の上昇が工事費用そのものの押し上げにつながる側面があります。施工費用が高騰すれば、最終的な物件の分譲価格や賃料設定にも波及する可能性があるため、市場の価格動向を把握する上でも今回の調査指標は重要な意味を持っています。
また、施工を請け負う企業の経営体力が奪われることで、予定されていた工期が遅延するリスクも考慮しておく必要があります。新規の建物の完成がずれ込むと、事業計画や資金計画の見直しを迫られる場面も想定されるため、関係する事業者の健全性には注意を払うことが求められます。
不動産の実務に携わる立場や資産形成に取り組む投資家にとっては、単に用地や市場の需要を見るだけでなく、サプライチェーンを支える建設業の動向を注視することが大切です。人件費の高騰や人員不足が現場の資金繰りにどのように作用しているのか、今後の推移を引き続き慎重に見極める必要があります。





