【世界の不動産投資 第5回】ドバイはなぜ世界の不動産投資家を集める?超高層都市と海外マネーの仕組み
世界一高い超高層ビルとして知られるブルジュ・ハリファ。
海上に造られた人工島パーム・ジュメイラ。
砂漠の中に次々と誕生する高級住宅街や巨大商業施設。
ドバイは、世界でも特に「不動産開発によって都市そのものを成長させてきた場所」といえるでしょう。
そして現在、その不動産市場には中東だけではなく、ヨーロッパ、アジアなど世界各国から投資資金が集まっています。
なぜドバイは、これほど海外の不動産投資家を引きつけるのでしょうか。
「世界の不動産投資」第5回は、外国人が買いやすい制度、急速な人口増加、オフプラン販売、賃貸市場などから、ドバイ独特の不動産市場を見ていきます。
ドバイは「外国人が不動産を所有できる都市」
ドバイ不動産を理解するうえで、まず重要なのが外国人所有です。
UAE政府によると、ドバイでは外国人やUAE国外に居住する人でも、指定されたフリーホールドエリアで不動産を所有できます。フリーホールドで所有できるほか、最長99年間の用益権やリースホールドなどを取得できる仕組みもあります。
つまり、
「ドバイに住んでいないと買えない」
「UAE国民でないと所有できない」
という市場ではありません。
外国人にも不動産市場を開放してきたことが、世界中から資金を呼び込む大きな要因の一つになっています。
外国人が買える「フリーホールドエリア」
ただし、ドバイのどこでも外国人が自由に所有できるわけではありません。
外国人がフリーホールドで不動産を所有できるのは、政府が指定するエリアです。
代表的な地域には、
ダウンタウン・ドバイ。
ドバイ・マリーナ。
パーム・ジュメイラ。
ビジネス・ベイ。
ジュメイラ・レイク・タワーズ。
ジュメイラ・ビーチ・レジデンス。
アラビアン・ランチズ。
などがあります。
つまり、海外投資家に人気の有名エリアの多くが、外国人所有を認めた地域になっています。
2025年にはシェイク・ザイード・ロード沿いとアル・ジャダフの一部でも、計457区画について全ての国籍向けにフリーホールドへ転換できる制度が発表されました。
ドバイは外国人投資家を受け入れるエリアを、都市政策として広げているのです。
不動産取引額は2026年も拡大
ドバイの不動産市場は現在も大きく動いています。
Dubai Land Departmentによると、2026年第1四半期の不動産取引総額は約2,520億ディルハムとなり、前年同期比31%増加しました。
取引件数も前年同期比6%増加しています。
もちろん、取引額が増えているからといって、すべての物件価格が上がるという意味ではありません。
ただし、
新しい住宅が次々に供給される。
外国人が購入する。
企業や働く人が移住する。
投資目的の売買も行われる。
という活発な市場が形成されていることは分かります。
ドバイの大きな特徴は「人口が増えていること」
不動産投資では、人口が重要です。
どれだけ住宅を造っても、住む人が増えなければ賃貸需要は生まれません。
ドバイ政府によると、2025年末の人口は約458万人となり、2024年から約33万2,000人、率にして7.5%増加しました。
1年間で30万人以上増えるというのは、非常に大きな人口変化です。
ドバイには、
金融。
IT。
観光。
物流。
建設。
専門職。
起業家。
など、さまざまな目的で世界各国から人が集まっています。
こうした人口流入が住宅需要の一つの支えになっています。
不動産投資では「人口増加=安心」とは限らない
ただし、人口が増えているから不動産投資が安全というわけではありません。
不動産市場では、
住宅需要がどれだけ増えるか。
それ以上に住宅供給が増えないか。
が重要だからです。
たとえば人口が5%増えても、住宅が10%増えれば、一部地域では供給が余る可能性があります。
ドバイは世界でも開発スピードが速い都市です。
高層マンション。
ヴィラ。
タウンハウス。
大型複合施設。
が次々と建設されています。
つまり、
人口増加だけでなく「新しく何戸供給されるのか」を確認することが重要
なのです。
ドバイで特徴的な「オフプラン物件」
ドバイ不動産でよく登場する言葉が、
「Off-plan property」
です。
これは、建物が完成する前の段階で販売される不動産です。
日本でいう新築マンションの青田売りに似ていますが、ドバイでは不動産投資市場の中で非常に存在感があります。
完成前に購入することで、
建設の進行に合わせて分割で支払う。
完成後に自分で住む。
賃貸に出す。
条件次第では完成前に権利を売却する。
といったさまざまな取引があります。
ドバイでは初めて住宅を購入する人向けの政府制度でも、参加デベロッパーによるオフプラン物件の優先販売や柔軟な支払いプランなどが案内されています。
完成前の物件だからこそ「エスクロー口座」が重要
完成していない建物へお金を払うとなると、
「本当に完成するのか」
「支払ったお金はどこに行くのか」
という不安があります。
そこでドバイでは、オフプラン物件の開発プロジェクトにエスクロー口座を使う制度があります。
不動産開発会社がプロジェクトを登録する際には、専用のエスクロー口座を開設する仕組みが設けられています。
購入者や融資者から集められた資金をプロジェクト用口座で管理し、建設資金として利用する仕組みです。
Dubai Land Departmentは、オフプラン購入者に対し、
プロジェクトがRERAに登録されているか。
エスクロー口座があるか。
工事進捗はどうなっているか。
デベロッパーが登録されているか。
土地や開発許可は確認できるか。
などを事前確認するよう案内しています。
つまり、
「有名な広告だから安心」ではなく、プロジェクト登録そのものを確認する
ことが重要なのです。
不動産売買には4%の登録費用がある
ドバイは「税金が安い」と紹介されることがあります。
しかし、不動産購入にコストがかからないわけではありません。
Dubai Land Departmentの規定では、不動産売買契約の登録費用は売買価格の4%です。
実務上の負担方法は契約によって異なりますが、物件価格以外にこうした取得費用を考える必要があります。
さらに、
仲介手数料。
住宅ローン関連費用。
建物のサービスチャージ。
管理費。
修繕関連費用。
なども発生します。
つまり、
「税負担が比較的軽い=維持費がほとんどかからない」
ということではありません。
タワーマンションではサービスチャージも重要
ドバイには豪華なタワーマンションが多数あります。
プール。
ジム。
コンシェルジュ。
警備。
共用ラウンジ。
庭園。
といった設備を備えた物件もあります。
しかし、それらを維持するには当然費用がかかります。
Dubai Land Departmentによると、共同所有型不動産では、オーナーが共用部分などの運営・管理・修繕のためのサービスチャージを負担します。
その対象には、
警備。
清掃。
設備メンテナンス。
水道・電気。
空調。
保険。
将来の大規模修繕に備える費用。
などが含まれます。
不動産投資では、
「年間家賃はいくらか」
だけを見るのではなく、
家賃から各種維持費を引いた後にいくら残るのか
を見る必要があります。
ドバイでは賃貸市場も非常に大きい
人口流入が続くドバイでは、賃貸住宅市場も活発です。
Dubai Land Departmentによると、2025年に登録された賃貸契約は約138万件で、前年から6%増加しました。
契約総額は約1,264億ディルハムで、前年より17%増加しています。
新規賃貸契約だけでも51万3,000件を超え、前年から10%増加しました。
さらに2026年第1四半期の賃貸契約総額は約322億ディルハムとなっています。
投資家にとって、これは重要な数字です。
不動産投資の根本は、
その都市に「借りたい人」がいるか
だからです。
「海外から人が来続ける都市」は不動産投資と相性がいい?
ドバイ不動産が注目される理由の一つは、人口増加の多くを海外からの流入が支えていることです。
新たにドバイへ移住した人は、最初から住宅を購入するとは限りません。
まず賃貸住宅を探す人も多くいます。
そのため、
企業進出。
雇用増加。
海外人材の流入。
人口増加。
賃貸住宅需要。
という流れが生まれます。
この構造は、不動産投資にとって魅力的に見えます。
しかし同時に、海外人材の流入が景気や政策の影響を受ければ、住宅需要も変化する可能性があります。
現在の成長だけでなく、
「なぜ人が増えているのか」
を見る必要があります。
ドバイ不動産では「出口」が特に重要
オフプラン物件が多いドバイでは、将来の売却まで考えることが重要です。
完成した頃には、
同じエリアに新築物件がさらに増えているかもしれません。
似た間取りのマンションが大量供給されているかもしれません。
より新しく、設備の豪華な物件が販売されている可能性もあります。
その場合、中古物件になった自分の不動産が、
「なぜ選ばれるのか」
が重要になります。
駅や交通アクセス。
海の眺望。
商業施設との近さ。
ブランド力。
管理状態。
建物品質。
エリアそのものの成熟度。
など、差別化できる要素が必要です。
これは東京のマンション投資にも共通します。
新築だから価値があるのではありません。
中古になった後でも欲しい人がいる物件か
を見ることが重要なのです。
急成長都市だからこそ「供給過剰」がリスクになる
ドバイの最大の魅力である「開発の速さ」は、同時にリスクにもなります。
新しい都市。
新しい住宅。
新しい商業施設。
新しい人工島。
が次々と計画されます。
住宅需要以上のペースで供給が増えれば、
家賃競争。
空室増加。
売却価格の調整。
につながる可能性があります。
つまり、
「建設が多い=都市が成長している」
という見方だけでは不十分です。
不動産投資ではむしろ、
自分が所有する物件の競合が何戸増えるのか
という視点が必要です。
シンガポールとは正反対に見える住宅政策
ここで第3回のシンガポールと比較すると非常に面白くなります。
シンガポールは、一般的な外国人が住宅を購入する場合、60%のABSDを課しています。
外国人による住宅需要を強く抑える政策です。
一方、ドバイは指定されたフリーホールドエリアで外国人の不動産所有を認めています。
つまり、
シンガポールは住宅市場への海外資金流入を抑える。
ドバイは海外資金を都市成長に取り込む。
という、かなり違う方向性です。
どちらが正しいということではありません。
国土。
人口。
住宅政策。
経済戦略。
によって不動産制度は大きく変わるということです。
東京とも大きく違う「都市を造り続ける市場」
東京も世界有数の巨大都市ですが、ドバイとの大きな違いがあります。
東京はすでに広大な市街地や鉄道網が存在し、その中で再開発が進んでいます。
一方、ドバイでは新しい土地やエリアそのものを開発し、
道路。
住宅。
ホテル。
商業施設。
観光施設。
を一体的に造る大規模開発が目立ちます。
つまり不動産投資というより、
「新しい街そのものに投資する」
という性格が強い物件もあります。
そのため、完成した建物だけでなく、
周辺インフラが本当に完成するのか。
予定されている商業施設ができるのか。
交通アクセスは改善するのか。
街として人が定着するのか。
まで見ることが重要になります。
ドバイだから儲かる、という考え方は危険
ドバイ不動産は非常に華やかです。
高級マンション。
人工島。
豪華なホテル。
超高層ビル。
そして世界中の投資家。
広告を見ると、
「世界中の富裕層が買っているなら安心」
と感じるかもしれません。
しかし不動産投資では、都市のイメージと投資収益は別です。
購入価格。
家賃。
サービスチャージ。
供給戸数。
エリア。
デベロッパー。
建物品質。
為替。
売却時の需要。
を一つずつ確認する必要があります。
「ドバイに買う」のではなく、「ドバイのどの物件を、なぜ買うのか」
まで考える必要があります。
まとめ
「世界の不動産投資」第5回はドバイを取り上げました。
ドバイでは、指定されたフリーホールドエリアなら外国人でも不動産を所有できます。
さらに2025年末の人口は約458万人となり、1年間で約33万2,000人増加しました。
2026年第1四半期の不動産取引総額も約2,520億ディルハムと、活発な市場が続いています。
こうした、
外国人が参加しやすい制度。
人口増加。
企業や人材の流入。
巨大都市開発。
オフプラン市場。
が、世界中の投資家を引きつけています。
しかし、成長市場だからこそのリスクもあります。
大量の住宅供給。
オフプラン物件の建設リスク。
サービスチャージ。
エリアごとの需要差。
為替。
そして将来の売却競争です。
ドバイの不動産市場から学べるのは、
成長する都市では「人口」だけではなく、「住宅供給の速度」まで見る必要がある
ということです。
人口が増えている。
観光客が増えている。
超高層ビルが建っている。
それだけで不動産の価値が決まるわけではありません。
重要なのは、
完成した後も、その物件を借りたい人、住みたい人、買いたい人がいるか。
これは世界中の不動産投資に共通する基本です。
次回、第6回はオーストラリアです。
シドニーやメルボルンでは住宅価格の高さが長年問題となる一方、人口増加や移民による住宅需要も続いています。
しかも外国人による住宅購入には、日本とは異なる規制があります。
第6回は、
「オーストラリアの住宅価格はなぜ高い?人口増加と移民で変わる不動産投資」
をテーマに、人口が増える先進国の住宅市場を見ていきます。
そしてその次、第7回はいよいよ日本です。
アメリカ、ロンドン、シンガポール、香港、ドバイ、オーストラリアと比較してきたうえで、
「東京の不動産投資は世界から見るとどうなのか」
を考えていきます。
引用元・参考元
- UAE Government「Expatriates buying a property in the UAE」
- Dubai Land Department「Frequently Asked Questions」
- Dubai Land Department「Know Your Rights – For Real Estate Investors in Dubai」
- Dubai Land Department「Dubai’s real estate transactions surge 31% to reach AED 252 billion in Q1 2026」
- Government of Dubai Media Office「Dubai Population Now」関連発表
- Dubai Land Department「Dubai’s rental sector records strong growth in 2025」
- Dubai Land Department「Dubai’s rental market charts stable trajectory」
- Dubai Land Department「Register Project」
- Dubai Land Department「Real Estate Development Escrow Account」関連資料
- Dubai Land Department「Fees for Registration of Real Property」
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