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不動産投資の出口戦略を極めるために必要な3つの知識

2021/09/02
2023/03/14
不動産投資コラム

不動産投資は長期的な運用が前提になりますが、いつかは必ず終わりが来ます。

運用期間中からこの終わりまでを含めたトータルの収支がプラスになることで、初めて不動産投資は成功したといえるようになるのです。

不動産投資における終わり方を「出口戦略」といい、基本的には物件を売却することを指します。

この記事では、出口戦略に成功してトータルの収支をプラスにするために必要な知識を3つのポイントにまとめました。

不動産投資の出口戦略=売却すること

不動産投資によって得られる収益には以下の2種類があります。
・インカムゲイン
・キャピタルゲイン

「インカムゲイン」とは不動産の運用によって得られる利益のことで、たとえば家賃収入などがこれに当たります。
そして、「キャピタルゲイン」とは不動産を売却したときに得られる利益のことです。

運用の収支がプラスでインカムゲインにおける利回りが順調であっても、売却で損をしてしまうことで不動産投資の全体の収支がマイナスになってしまうこともあります。

そのため、不動産投資を検討するときには、購入前の時点から、キャピタルゲインまでしっかり見据えた計画が必要になるのです。

不動産投資の「終わり」の迎え方を出口戦略といい、基本的には物件を売却することを指します。
つまり、
不動産投資全体の収支結果がプラスになるようにいかに上手に不動産を売却するか、を考えることが優れた出口戦略を設計することであるといえます。

出口戦略を成功させるために必要な3つの知識

出口戦略を成功させるために必要な知識を以下の3つのポイントに分けて解説します。

・出口戦略の知識1:物件の価格を決める2つの要素
・出口戦略の知識2:売却の3つのパターン
・出口戦略の知識3:物件を売却すべき3つのタイミング

インカムゲインだけでは不動産投資の成否は測れない

(インカムゲインだけでは不動産投資の成否は測れない)

出口戦略の知識1:物件の価格を決める2つの要素

まずは、投資用の不動産物件の価格を決める2大要素を知りましょう。
「収益性」と「資産価値」です。

それぞれを計算していずれか高いほうが物件の価格になります。

収益性

収益物件として得られる収益から計算して物件の価格を決めるパターンです。

実際の年間の家賃収入を、期待利回りで割ることで物件価格を算出します。

・物件価格 = 年間家賃収入 ÷ 期待利回り

例えば、年間家賃収入が1,200万円で期待利回りが5%の物件の場合は以下のようになります。

・(年間家賃収入)1,200万円 ÷ (期待利回り)5% = (物件価格)2億4,000万円

なお、期待利回りはあくまでも複数の要素から推測される見込みの値であり、売り手の希望です。入居率・築年数・立地などによって変わります。

各種のポータルサイトなどをチェックすることで、自身のものと近しい物件における期待利回りの相場が分かりますので参考にしてみてください。

資産価値

土地の面積に対して建物が小さかったり、物件の入居率が著しく低かったりする場合、収益性が実際の物件の価値を下回る場合があります。
このような場合は収益性ではなく、資産価値によって物件の価格を決定します。

例えば、上述した物件と同じ収益性のケースで考えてみましょう。

もしこの物件が建っている土地が坪単価200万円で、しかも敷地面積が200坪あったらどうでしょうか?

・(坪単価)200万円 × (敷地面積)200坪 = (物件価格)4億円

土地の価格は4億円ということになります。
土地だけで4億円の価値があるのに、アパートが建っていると物件価格が2億4,000万円に下がってしまうというのはおかしな話です。

この場合、資産価値の4億円が物件の価格になります。

ただし、このケースのように収益性が著しく低い建物が建っている場合には、これを解体して更地にしてから売却することになるため、その費用も勘定に入れる必要がある点に注意してください。

出口戦略の知識2:売却の3つのパターン

投資用の不動産物件の売却を考えるとき、その方法は以下の3つに分けられます。

方法1.収益物件として
方法2.
居住用物件として
方法3.
更地にして

どのようなケースにおいてどの売却パターンが最も適しているのかを説明します。

方法1.収益物件として

ひとつめのパターンは、不動産を収益物件として別の投資家に売却する方法です。もっとも一般的なケースであり、ほとんどの場合はこの方法で売却します。

上述の計算において、収益性のほうが資産価値よりも高くなるケースにおいてはこの方法での売却が最も高く売れるということになります。

方法2.居住用物件として

投資用物件ではなく、買い手が自分で住む居住用物件として売却する方法もあります。

特に戸建て物件などにおいて想定されるケースです。ただし入居者が退去したタイミングでしか売れないため、稀だと考えておきましょう。

家探しのポータルサイトなどで物件価格の相場をチェックし、居住用として売ったほうが高値が付きそうな場合に検討できます。

方法3.更地にして

資産価値のほうが収益性を上回るケースでは、建物を解体して更地にしてから売却することがあります。

戸建て物件ならさほど苦労はありませんが、アパートなどで複数の入居者がある場合においては退去の交渉などの手間がかかるため、資産価値のほうがよほど高値が付くようなケースなどを除いては検討されることは稀です。

出口戦略の知識3:物件を売却すべき3つのタイミング

キャピタルゲインを最大化するためには、以下の3つのタイミングを意識して売却を計画することをおすすめします。

・取得から5年以上経った後
・減価償却の期間が終わる前
・「デッドクロス」によってキャッシュフローがマイナス化する前

取得から5年以上経った後

不動産を売却したときに得られる「譲渡所得」には所得税と住民税が課せられます。

個人で保有する物件の税率は、保有していた期間によって変わります。

不動産を売却した年の1月1日時点で保有期間が5年を超えているときに税率が大幅に下がるため、よほどの事情がない限りは5年以上保有してから売却しましょう。

所有期間ごとの所得税率と住民税率

※2021年8月時点

減価償却の期間が終わる前

不動産は会計上、「減価償却」という考え方で経費が計算されます。

物件の構造ごとに定められた減価償却期間中は「減価償却費」を経費として計上することができ、これによって会計上の利益金額が少なく計算されるため、結論としてはかかる税金が安くなります。

しかし、定められた減価償却期間が過ぎると「減価償却費」を経費として計上できなくなり、会計上の利益金額が高く計算されてしまうため、同じ収入でもかかる税金が高くなって、手元に残る金額が少なくなってしまいます。

例えば、木造住宅の減価償却期間は新築から22年、鉄筋コンクリート造の場合は47年と定められています。この期間が終了する前に物件を売却できればベターです。

「デットクロス」によってキャッシュフローがマイナス化する前

不動産投資の世界では「デットクロス(Debt Cross)」という言葉がたびたび登場します。

色々な言葉で定義されますが、要約すると「所得税が増えることでキャッシュフローがマイナスになる」という状態を指します。

上述した減価償却期間が切れるときや、あるいはローンの返済額における元金の金額が減価償却費を上回るタイミングで「元本返済>減価償却費」という状態になったときに起こりがちです。

自身の物件がデットクロスを迎えそうだ、と分かったらその前に手放してしまうほうが良いでしょう。

しかし、一般的には減価償却費が計上できなくなったり所得税が上がったりした程度でキャッシュフローがマイナス化することは稀であり、そのような状態になるのであれば「買い方」に問題があると考える必要があります。

まとめ

不動産投資は家賃収入などのインカムゲインだけで考えることはできず、必ず終わり方である「出口戦略」まで含めて考える必要があることがわかりました。

出口戦略とはすなわち不動産物件を売却することであるといえ、より高く売ることで売却益であるキャピタルゲインを最大化することが重要であると説明しました。

出口戦略を考えるには、物件価格を決める要素、売却のパターン、売却のタイミングをしっかりと理解する必要があります。

この記事がご参考になれば幸いです。

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