ここ数年、将来の年金対策や資産運用のために「不動産投資」に取り組む方が増えてきました。
公務員の方の中にも、副収入を得るために不動産投資を検討している方も多いかもしれませんが、公務員には一般のサラリーマンとは違う特徴があります。
その特徴を理解しておかないと、失敗したり規則違反になってしまうため注意が必要です。
この記事では、公務員が不動産投資を行なう際の規則、副業が禁止の理由、メリット、失敗例を解説していきますので、不動産投資を検討している公務員の方はぜひご覧ください。
公務員が不動産投資を行なう場合は規則に注意
公務員は、人事院規則や国家公務員法・地方公務員法によって副業が禁止されています。
そのため、基本的には不動産投資も禁止…
しかし、以下の規則内であれば“例外”として不動産投資を行なえることをご存知でしょうか?
・5棟10室未満の規模である
・年間の家賃収入が500万円未満である
・入居者募集や賃料募集などは管理会社に委託すること
この3つの範囲内であれば、公務員でも不動産投資に取り組めます。
※参考:人事院「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」
【注意!】副業に“該当してしまう”ケース
公務員による不動産投資は、規則で定められている範囲内であれば副業扱いになりません。
しかし、一定規模以上の場合は副業に該当してしまいます。
【副業に該当するケース】
・5棟10室以上など
・年間の家賃収入が500万円以上
■5棟10室以上など
規模 | |
独立している家屋 | 5棟以上 |
一棟マンション・アパート | 10室以上 |
駐車台数 | 10台以上 |
土地 | 10件以上 |
不動産投資とは言っても、マンション・アパートに限らず、駐車場経営や土地活用などもありますので、取り組む前に確認しておきましょう。
■年間の家賃収入が500万円以上
家賃収入500万円は経費を含めない金額を指すため、「利益」ということになります。
副業に該当するか否かは、申請時における先1年間の見込み収入によって判断されるため、経費は含めずに計算するようにしましょう。
また、相続や贈与によって不動産を取得する場合、親族と共同名義で所有することも十分にあり得ます(例:兄弟と2分の1ずつ)。
こういうケースでは、自分の所有分だけでなく不動産全体の家賃収入で判断するためくれぐれもご注意ください。
なお、もし仮に副業に該当してしまっても、所属長などの承認が得られれば可能な場合もありますので相談すると良いでしょう。
公務員が不動産投資などの副業が禁止なのは何故?
そもそも、一般サラリーマンとは違い公務員が副業禁止なのは何故なのでしょう?
それは、日本国憲法によって以下のように定められているからです。
すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
引用元:「日本国憲法」第十五条
公務員は営利目的である民間企業の会社員とは異なり「公共の利益のために全力で職務に遂行する」という義務が課せられています。
それにより、副業を行うことで職務が疎かになってしまう恐れがあることから副業禁止になっていると考えられます。
【国家公務員が副業をする場合】
国家公務員の方が副業を行う場合、まずは人事院が公表している「義務違反防止ハンドブック」で決まり事を確認するようにしましょう。
不動産投資を行なう場合、一定規模以下であれば副業には該当しないですし、所属長などの承認を得られれば一定規模以上でも取り組むことも可能です。
【地方公務員が副業をする場合】
地方公務員の副業に対する考え方は国家公務員と同じです。
ただ、自治体によってガイドラインが公表されていたり・されていなかったり、副業を行う承認を得る方法については自治体によって異なります。
地方公務員法や各自治体によってある程度の基準は示されていますが、具体的な基準がなかったり、副業可否の判断基準が乏しいため、個人で判断するのは厳しいのが正直なところです。
規則に違反した場合の罰則
公務員規則に定められている規則以上に副業を行った場合、以下の罰則が科せられる可能性があります。
・免職:職を失わせる処分
・降任:職務の等級・階級を1または2落とす処分
・停職:一定期間、職務に従事させない処分
・減給:一定期間、給与の一定割合を減額する処分
・戒告:非違行為の責任を確認して将来を戒める処分
地方公務員の停職期間や減給額については、法律で決められていなければそれぞれの自治体の条例で決定されますが、大抵は国家公務員の規則に準ずるケースが多いようです。
なお、許可を得ずに副業を行っていた公務員が実際に受けた罰則の例は以下の通りです。
・民泊営業を行っていた市バスの運転手 ⇒ 減給10分の1
・宅配業務を行っていた消防士 ⇒ 停職3ヶ月
・賃貸マンションの経営を18年間続けていた県の職員 ⇒ 戒告処分
・水田で農業を営んでいた市の職員 ⇒ 停職6ヶ月
前述した5種類の処分は何れも「懲戒処分」ですが、実例を見る限りでは停職または減給が一般的のようです。
ただ、この懲戒処分は公務員を辞めて転職する場合などに履歴書の賞罰欄に記載しなければなりませんので、それだけ厳しい処分であるということを頭に入れておきましょう。
公務員が不動産投資を行なう際のメリット2つ
お伝えしているように、公務員でも規則内では副業として不動産投資に取り組むことができますが、公務員が不動産投資を行なう上でのメリットはどんな点があるのでしょうか?
それはこちらの2つです。
1.不動産投資ローンの審査が通りやすい
2.本業に支障をきたさない
メリット1.不動産投資ローンの審査が通りやすい
不動産投資に取り組む際は不動産投資ローンを組むのが一般的ですが、公務員の方は一般的なサラリーマンよりもローンの審査が通りやすいというメリットがあります。
ローン審査で見られる項目は、勤務先の情報や勤続年数、年収の金額や属性、対象物件の不動産価値です。
それもあり、公務員は一般企業に勤める方よりも金融機関に属性が高く評価される傾向があります。よって、審査に通過しやすいだけでなく、受けられる融資の額も大きくなる可能性が高いのです。
メリット2.本業に支障をきたさない
不動産投資は、入居者の募集、物件管理、クレーム対応など、様々な業務を行う必要があります。
それを考えると「不動産投資は面倒…」という思いを抱かれる方も少なくないでしょう。
しかし、それらの業務は管理会社に委託することが可能で、委託することで時間や手間を大幅に削減できます。
そのため、本業に支障をきたさず不動産投資に取り組むことが可能なのです。
しかも、規則にも「入居者募集や賃料募集などは管理会社に委託すること」とあったように、かえって“管理業務に携われない”という好都合でもあります。
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公務員がやりがちな不動産投資の失敗例3つ
公務員が不動産投資を行なうメリットについては前述した通りですが、失敗例も把握しておきましょう。
1.規則の範囲を超えてしまった
2.管理会社に頼りっぱなしだった
3.物件の立地選びを誤った
失敗例1.規則の範囲を超えてしまった
公務員が不動産投資を行なう中で一番多い失敗例と言われているのが、規則の範囲を超えて不動産投資を行なってしまったというケースです。
規則のところでもお伝えしましたが、公務員が不動産投資を行なう場合は人事院規則で定められている範囲内で取り組む必要があります。
・5棟10室未満の規模である
・年間の家賃収入が500万円未満である
・入居者募集や賃料募集などは管理会社に委託すること
しかし、規則を把握していないがために範囲を大きくしてしまい、「バレて懲戒処分を受けてしまった…」といった事例も少なくありません。
ただ、相続などでやむを得ないケースも考えられます。
場合によっては、規則の範囲を超えていても承認されれば不動産投資が可能なケースもありますので、勤務先に事前確認をするようにしましょう。
失敗例2.管理会社に頼りっぱなしだった
公務員の方は本業も忙しいでしょうし、規則にもあるように管理に関する業務は管理会社に委託しないといけません。
だからと言って、何も把握せず管理会社に丸投げしてしまうのは危険です。
もちろん、信頼できる管理会社であればほぼ丸投げでも良いかもしれませんが、すべての管理会社が“優良”というわけではありません。
そのため、「掃除はきちんと行われているか?」「入居者への対応が雑になっていないか?」など、監視しておくと良いでしょう。
失敗例3.物件の立地選びを誤った
公務員に限ったことではありませんが、物件の立地選びを誤るのは致命傷です。
不動産投資において立地は最重要とも言われていて、立地選びを誤ると空室が発生してしまいます。
空室が発生すると、安定して家賃収入を得ることができず、最悪の場合はローン返済ができずに物件を手放すことにもなりかねません。
そのような事態を防ぐためにも、物件の立地選びは慎重に行ったり専門家に相談すると良いでしょう。
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まとめ
今回は、公務員が不動産投資を行なう上で、規則、副業禁止の理由、メリット、失敗例を解説してきました。
公務員による副業は規則で禁止されていますが、範囲内であれば不動産投資に取り組むことは可能です。
しかも、公務員には一般企業に勤務されている方よりもローンの審査が通りやすいという特徴もあります。
ただし、規則で定められた範囲を超えて取り組んでしまうと罰則を受けてしまう可能性もあるため、取る組む際には事前確認をきちんと行うようにしてくださいね。
この記事が公務員で不動産投資を検討している方の参考になったら嬉しいです。
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