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【連載コラム:働き方から考える不動産投資 第3回】高収入なら安心とは限らない?融資と家計から考える不動産投資

2026/07/31
連載

共働き世帯や医師、士業、大手企業の会社員など、比較的収入が高く安定している人は、不動産投資の融資を受けやすいといわれることがあります。

確かに、安定した給与や高い年収は、金融機関が返済能力を判断する際の重要な材料です。しかし、多く借りられることと、無理なく返済を続けられることは同じではありません。

現在の年収が高くても、育児休業、転職、独立、病気、介護などによって収入が変化する可能性があります。共働き世帯であれば、二人分の収入を前提に住宅ローンや投資用ローンを組んだ後、どちらかが働き方を変えることも考えられます。

今回は、高収入層や共働き世帯が不動産投資を検討する際に、融資可能額だけでなく、家計全体から借入額を考える必要性を解説します。

「高収入」と「返済余力」は同じではありません

年収が高ければ、毎月自由に使えるお金も多いとは限りません。

収入が増えると、住居費、教育費、保険料、自動車関連費、交際費など、生活水準に応じて支出も増える傾向があります。自宅の住宅ローンを返済しながら、子どもの教育費や老後資金を準備している世帯もあるでしょう。

不動産投資の返済能力を考える際に重要なのは、年収の額そのものではなく、収入から生活費や既存の返済を差し引いた後に、どれだけ余力が残るかという点です。

例えば、年収が高くても、住宅ローンや自動車ローン、教育費などの負担が大きければ、空室や修繕が発生した際に家計から補う余裕は小さくなります。

反対に、収入が突出して高くなくても、固定費を抑え、十分な預貯金を確保している世帯は、想定外の支出に対応しやすい場合があります。

投資判断では、勤務先や職業だけでなく、家計の収支と保有資産を確認する必要があります。

金融機関が貸せる金額を予算にしない

不動産投資の相談では、金融機関から提示された融資可能額を、そのまま物件購入の予算と考えてしまうことがあります。

しかし、融資可能額は、金融機関が審査基準に基づいて算出した金額です。借りる人の将来の生活設計まで、すべて反映しているとは限りません。

自宅の購入予定、子どもの進学、転職や独立、親の介護などは、世帯ごとに時期や必要額が異なります。

金融機関から多額の融資を受けられるとしても、将来予定している支出まで考えたときに、同じ金額を返済できるとは限りません。

借入可能額ではなく、「家賃が入らない期間があっても返済を続けられる金額」を基準にすることが重要です。

共働き世帯では二人分の収入を前提にしすぎない

共働き世帯は、二人分の給与があることで家計に余裕を持ちやすく、不動産投資の自己資金も準備しやすい場合があります。

一方で、現在の世帯収入が将来も続くとは限りません。

出産や育児、家族の介護、転勤、体調の変化などによって、どちらかが一時的に休職したり、勤務時間を短くしたりする可能性があります。転職によって給与が下がることも考えられます。

そのため、二人分の収入をすべて返済能力として扱うのではなく、一方の収入が減少した場合の家計も確認しておく必要があります。

例えば、片方の収入が一定期間なくなった場合でも、生活費、自宅の住宅ローン、投資用ローンを支払えるかを試算します。

家賃収入があるとしても、空室や滞納、修繕によって手元に残る金額が減る場合があります。満室時の家賃だけを前提にしないことが大切です。

医師や士業にも収入変動の可能性があります

医師、弁護士、税理士などは、一般的に高収入の職業として捉えられています。

しかし、同じ職業でも勤務形態や収入構造はさまざまです。

勤務医と開業医では収入の安定性や事業上の負担が異なります。士業も、勤務先から給与を受け取る人と、自ら事務所を経営する人では、収入の変動幅が違います。

独立や開業を予定している場合には、設備費、事務所の賃料、人件費、運転資金などが必要になることがあります。不動産投資で多額の借入をしていると、事業資金の調達や家計の柔軟性に影響する可能性もあります。

職業名だけで安定性を判断せず、給与所得なのか事業所得なのか、今後の働き方をどう考えているのかまで含めて借入計画を立てる必要があります。

自宅の住宅ローンとの合計額を確認します

投資用不動産のローンだけを見て返済計画を立てるのは十分ではありません。

すでに自宅の住宅ローンがある場合は、その返済額と投資用ローンを合わせて考える必要があります。今は賃貸住宅に住んでいても、将来自宅を購入する予定があるなら、そのための資金も残しておかなければなりません。

投資用ローンの借入残高が大きいと、将来、自宅の住宅ローン審査へ影響することも考えられます。金融機関は一般に、年収だけでなく、既存の借入や年間返済額なども確認して審査します。

不動産投資を先に始めたことで、希望する時期に自宅を購入できなくなる可能性がないか、事前に考えることが大切です。

自宅と投資物件のどちらを先に購入すべきかは、年齢、家族構成、資金計画によって異なります。単純に投資物件を先に買う方が有利とは限りません。

金利上昇を含めた返済計画が必要です

ローンを利用する不動産投資では、金利が収支へ大きな影響を与えます。

変動金利で借り入れる場合、市場環境や金融機関の判断によって適用金利が上昇し、利息負担が増える可能性があります。

日本銀行は、年収に対する年間返済額の割合が高い家計ほど、金利上昇への耐性が低くなりやすいと指摘しています。また、所得低下と不動産価格の下落が同時に起きる可能性にも注意が必要だとしています。

現在の金利で収支が成り立っていても、金利が上がった場合に同じ状態を維持できるとは限りません。

借入前には、金利が一定幅上昇した場合の返済額を試算し、家賃収入から管理費、修繕積立金、税金、空室損失などを差し引いても資金が残るかを確認する必要があります。

教育費や育児休業は投資より先に考えます

共働き世帯にとって、教育費や育児に伴う収入の変化は、長期的な家計を考える上で重要です。

子どもの進学先や人数によって必要額は異なりますが、教育費の支出時期と、物件の大規模修繕や設備交換の時期が重なる可能性があります。

育児休業や短時間勤務を利用すれば、一時的に世帯収入が減ることもあります。

現在の家計に余裕があるからといって、その余裕をすべて頭金や繰り上げ返済へ回すと、生活上の変化に対応できなくなる場合があります。

投資用の資金と生活防衛資金、教育資金を分け、すぐに使える預貯金を一定額残しておくことが重要です。

家賃収入を額面のまま収入と考えない

不動産広告では、年間家賃収入や表面利回りが大きく表示されることがあります。

しかし、入居者から支払われる家賃が、そのまま所有者の利益になるわけではありません。

管理委託費、管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料、原状回復費、設備交換費などがかかります。空室期間には家賃収入がなくなっても、ローン返済や管理費などの支払いは続きます。

そのため、満室時の家賃収入だけで返済計画を立てず、実際に手元へ残る金額を確認する必要があります。

特に高収入の人は、赤字が出ても給与から補えるため、収支の悪化に気付きにくいことがあります。

毎月数万円の持ち出しを給与で補えていても、それが長期間続けば、資産形成ではなく家計の負担になっている可能性があります。

手元資金を減らしすぎないことが重要です

頭金を多く入れれば借入額を抑えられ、毎月の返済負担を軽くできる場合があります。

一方で、頭金や購入諸費用に預貯金の大半を使ってしまうと、購入後の修繕や空室へ対応できなくなります。

不動産は、購入した時点で支出が終わる資産ではありません。

給湯器、エアコン、水回りなどの設備は突然故障することがあります。区分マンションでは、管理組合の方針によって修繕積立金が増額される可能性もあります。

手元資金は、利回りを生まないお金に見えるかもしれません。しかし、想定外の出費が発生したときに物件を慌てて売却せず、保有を続けるための重要な備えです。

不動産だけに資産を集中させない

不動産投資を始めると、頭金や諸費用に加え、ローン返済や修繕費へ資金を使うことになります。

その結果、家計の資産が自宅と投資物件に偏り、すぐに使える預貯金や金融資産が少なくなることがあります。

不動産は現金化に時間がかかる資産です。急にまとまった資金が必要になっても、株式や投資信託のように短期間で一部だけを売ることは難しい場合があります。

金融庁は資産形成において、家計管理とライフプランニングに加え、長期・積立・分散という考え方を示しています。

不動産投資を行う場合も、不動産だけでなく、預貯金や投資信託などを含め、家計全体で資産のバランスを考える必要があります。

購入前に三つの家計を試算します

高収入層や共働き世帯が不動産投資を検討する際は、現在の家計だけでなく、複数の状況を想定することが大切です。

一つ目は、現在の収入と満室の家賃が続く場合です。これは最も順調なケースです。

二つ目は、どちらかの給与が減り、物件にも一定期間の空室が発生する場合です。

三つ目は、収入減少、金利上昇、設備故障などが重なる場合です。

三つ目の状況でも、生活費を削りすぎず返済を続けられるかを確認します。

不動産投資では、最も良い条件で得られる利益よりも、条件が悪化したときにどこまで耐えられるかが重要です。

まとめ

共働き世帯や医師、士業、大手企業勤務など、収入が高く安定している人は、融資審査で評価される場合があります。

しかし、融資を受けやすいことと、不動産投資のリスクが小さいことは同じではありません。

高収入でも、住宅ローン、教育費、生活費などの支出が大きければ、家計の余力は限られます。また、育児休業、転職、独立、病気などによって、将来の収入が変わる可能性もあります。

不動産投資を検討するときは、金融機関が貸してくれる金額ではなく、家賃収入が減少しても無理なく返済できる金額を基準にすることが大切です。

金利上昇や空室、修繕を想定し、生活防衛資金を残した上で、住宅ローンや教育費を含む家計全体から判断する必要があります。

職業や年収は、不動産投資の適性を判断する一つの材料に過ぎません。

大切なのは、収入が高い今だけを見るのではなく、働き方や家族の変化があっても保有を続けられる計画になっているかを確認することです。

次回は連載のまとめとして、「不動産投資が向いている人・向いていない人」を取り上げます。職業や年収ではなく、資金管理、投資期間、物件選びへの姿勢から、不動産投資との相性を考えます。

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