宮益坂ビルディングの歴史
「宮益坂ビルディング」という建物を、ご存じでしょうか?
この建物は、渋谷駅から徒歩二分の立地に位置する日本初の分譲マンションです。
竣工は1953年で、その立地の良さから地下1階と地上1階は店舗、2~4階が事務所、5~11階が住居という複合用途型として誕生しました。
2020年7月末、竣工から67年という月日を経たこの宮益坂ビルディングの建て替え工事が終わるため、その歴史についてご紹介します。
天国の百万円アパート!?
宮益坂ビルディングが建設された当時の渋谷では、建物と言えば二階建てまでが中心で、唯一目立つ建物と言えば、1934年に竣工した東急百貨店程度。
その頃の渋谷で、11階建ての宮益坂ビルディングは一際目立つ存在でした。
しかも、まだ珍しかったエレベーター付き住宅で、さらに、エレベーターガールもいるこのマンションは、新聞で「天国の百万円アパート」として大きく取り上げられ企業の重役等からの申し込みが相次ぎました。
これには理由があります。
当時は住宅ローンがなかったため、支払の方法が3割・7割の2回払いだけだったのです。
販売価格は100万円前後でしたが、1955年の給与所得者の平均年収は20.8万円(国税庁の民間給与実態統計調査より)だったため、年収の4.8倍程の現金を持っている人しか購入することができず、買えるのは一部のお金持ちの人たちという状況が続いていたのです。
67年の時を経て……
1953年の竣工当時は「お金持ちアパート」としてもてはやされた宮益坂ビルディングも、だんだんと老朽化が著しくなり、築60年を超えたときには外壁に剥落防止用の金属ネットが設置されているような状況でした。
また、室内設備の劣化や耐震性、バリアフリー化の必要性等の問題も深刻化し、約30年前から建て替えを視野に入れた「宮益坂ビルを考える会」が活動していたのです。
その後、紆余曲折がありながらも宮益坂ビルディングは2016年2月に解体工事に着手し、2017年に1月に本体着工、この2020年7月末に完成予定なのです。
建て替え前と後で比較してみると、下のようになります。
【建て替え前】
延床面積:7,872.62㎡
階数:地上11階・地下1階
総戸数:住宅70戸・事務所37区画・店舗7区画
間取り:1DK・2DK
各戸専有面積:35.40㎡~46.77㎡
【建て替え後】
延床面積:14,553.41㎡
階数:地上15階・地下2階
総戸数:住宅152戸・事務所30区画・店舗7区画
間取り:1K・1LDK・2LDK・3LDK
各戸専有面積:30.00㎡~78.28㎡
(出典:旭化成ホームズ株式会社HP/画像は同HPのリリース情報よりDL)
建て替え後は、建物南側の東京メトロ銀座線上部に設置される歩行者用デッキに接続予定で、渋谷のど真ん中という好立地である上、さらに渋谷駅へのアプローチもスムーズになる計画です。
最後に
今回は、1953年に建設された日本初の分譲マンション「宮益坂ビルディング」の建て替えについてご紹介しました。
1953年といえば、国産で初めてテレビが発売された頃で、随分昔という印象ですが、その頃の建物が解体工事が始まる2016年まで存続していたというところから建築レベルの高さが伺えます。
現在はさらに建築レベル、耐震基準が引き上げられているので、所有する物件の経年劣化が気になるオーナー様にとっては、宮益坂ビルディングの歴史から伺える日本の建築物の耐久性は、安心材料の一つになるのではないでしょうか。