マンションを購入するとき、
「このマンションはあと何年住めるのだろう?」
と考える人は多い。
築10年。
築20年。
なら、それほど気にならないかもしれない。
しかし、
築40年。
50年。
60年。
となると、
「最後は建替えになるの?」
「建替え費用は誰が払う?」
「土地はどうなる?」
「自分だけ建替えに反対したら?」
「建替えできないマンションはどうなる?」
といった疑問が出てくる。
前回まで見てきたように、
マンションは築年数だけで寿命が決まるわけではない。
適切に、
外壁。
防水。
配管。
エレベーター。
設備。
などを修繕・更新し続ければ、
長期間使用できる可能性がある。
一方、
建物や設備の老朽化が進み、
修繕を続けるより、
建替え。
全面改修。
売却。
などを選んだ方が合理的になることもある。
さらに2026年4月1日には、
マンションの再生を進めやすくするための改正マンション関係法が施行された。
従来より、
「マンションの最後」に選べる方法が増えている。
今回は、
築50年・60年になったマンションが、
最終的にどうなるのかを詳しく見ていこう。
マンションに「築○年で終了」という決まりはない
まず最も重要なことから確認したい。
マンションには、
築50年になったら取り壊さなければならない
という法律上の決まりはない。
築60年でも、
70年でも、
建物の安全性や設備を維持できれば、
使用を続けることは可能である。
逆に、
築40年程度でも、
耐震性。
設備。
構造。
維持管理。
などに大きな問題があれば、
再生や建替えを検討する必要が出ることもある。
つまり、
マンションの最後を決めるのは、
年齢ではなく状態
なのである。
築50年・60年になったマンションには大きく5つの選択肢がある
2026年現在、老朽化したマンションには、大きく考えると次のような方向がある。
修繕・改修しながら使い続ける
建物全体を大幅に更新する
建替える
建物と土地を売却する
建物を取り壊す
である。
2026年4月施行の改正によって、
建替えだけではなく、
建物全体を更新する仕組み。
建物と敷地の一括売却。
建物を取り壊したうえで土地を売却する方法。
建物だけを取り壊す方法。
などについても、多数決による手続きが整備された。
つまり、
「古くなったマンション=建替えしかない」
ではなくなっている。
選択肢1 修繕しながら使い続ける
最も一般的なのは、
建替えずに、
修繕・改修を続ける
方法である。
例えば、
外壁修繕。
屋上防水。
給排水設備更新。
エレベーター更新。
耐震改修。
バリアフリー改修。
省エネ改修。
などを行いながら、
建物を長く使う。
国土交通省も、
耐震。
バリアフリー。
省エネ。
通信設備。
宅配ロッカー。
EV充電設備。
などを含めた改修を、マンション再生の方法として示している。
建替えより修繕の方が合理的な場合もある
例えば、
建物の構造には大きな問題がない。
立地も良い。
必要な設備更新をすれば使える。
修繕積立金もある。
というマンションなら、
数百億円規模にもなり得る建替えをするより、
修繕・改修を続ける方が現実的な場合もある。
マンション再生では、
「古いから建替える」
ではなく、
修繕した場合。
改修した場合。
建替えた場合。
それぞれの費用と改善効果を比較して判断する。
国土交通省も、
「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」
を用意している。
選択肢2 一棟リノベーションという方法もできた
2026年の法改正で注目したいのが、
建物更新
という考え方である。
これは建物の主要な躯体などを活用しながら、
専有部分を含め、
建物全体を大幅に改修する、
いわば、
一棟リノベーション
である。
従来、このような大規模な更新は区分所有者全員の合意が必要になるケースがあり、実施が難しい面があった。
改正後は、
建替えと同様の多数決によって、
建物全体を更新する制度が創設された。
「壊して新築」と「躯体を残して更新」の中間ができた
これまでは、
修繕してそのまま使う。
または、
壊して建替える。
という二択になりやすかった。
しかし、
構造躯体はまだ使える。
一方、
断熱。
設備。
専有部分。
共用部分。
などは大幅に刷新したい。
というマンションもある。
そのようなマンションでは、
既存建物を活用した大規模更新
という第三の選択肢が考えやすくなったのである。
選択肢3 マンションを建替える
次が、
建替え
である。
既存のマンションを取り壊し、
同じ土地などに新しいマンションを建設する。
例えば、
築60年。
耐震性に問題。
配管も老朽化。
設備更新費も高額。
間取りも現在のニーズに合わない。
という場合には、
大規模な修繕を繰り返すより、
建替えを検討する可能性がある。
建替えは「全員賛成」でなくてもできる
マンション建替えについて、
「100戸なら100戸全員が賛成しないと建替えられない」
と思っている人もいるかもしれない。
現在の区分所有法では、
原則として、
区分所有者と議決権のそれぞれ5分の4以上
によって建替え決議を成立させることができる。
100人すべてが同じ議決権を持つ単純なケースなら、
概念上は80人以上というイメージである。
ただし実際には、
区分所有者数だけでなく、
議決権についても要件を満たす必要がある。
2026年から一定の場合は4分の3まで緩和
2026年4月の改正では、
一定の客観的な問題があるマンションについて、
建替え等の決議要件を、
5分の4以上
から、
4分の3以上
へ引き下げる仕組みが導入された。
対象となる客観的事由は、
耐震性の不足
火災に対する安全性の不足
外壁などの剥落により周辺へ危害が生じるおそれ
給排水管などの腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
バリアフリー基準への不適合
の5つである。
築60年なら4分の3で建替えできるわけではない
ここは誤解しないようにしたい。
築年数が古いだけでは4分の3にならない。
例えば、
築60年。
という理由だけで、
決議要件が自動的に緩和されるわけではない。
法律が定める客観的事由に該当する必要がある。
したがって、
「築50年以上なら75%の賛成で建替え」
という理解は誤りである。
原則はあくまで、
5分の4以上。
一定の客観的事由がある場合に、
4分の3以上
となる。
所有者が分からない場合にも制度が変わった
高経年マンションでは、
所有者が亡くなった。
相続登記されていない。
連絡が取れない。
海外にいる。
などによって、
所有者の所在が分からない
問題も起こる。
従来は、こうした所有者が決議の母数に含まれることで、
必要な多数を集めにくくなる問題があった。
2026年施行の改正では、
一定の手続きを経た所在等不明区分所有者を、
決議の母数から除外できる仕組みも設けられている。
これは高経年マンションの合意形成を進めやすくする大きな変更の一つである。
建替えは誰が行う?
法律に基づく建替えでは、
建替えに参加する区分所有者が、
マンション建替組合
を設立し、
その組合が事業主体となって進める方法がある。
計画。
資金調達。
権利調整。
解体。
新マンション建設。
などを行う。
実際には、
デベロッパー。
設計会社。
コンサルタント。
建設会社。
金融機関。
など、多くの専門家が関わる大規模事業になる。
「自分の部屋を壊して新しい部屋をもらう」だけではない
建替えでは、
現在所有しているマンションの価値。
土地の持分。
新しく建てるマンションの価値。
などを整理する必要がある。
法律に基づく事業では、
権利変換
という仕組みを使い、
従前の区分所有権などを、
新しいマンションの権利へ移行させる方法がある。
つまり、
301号室を所有していたから、
新しい建物でも自動的に301号室が無料でもらえる、
という単純なものではない。
建替え費用は誰が払う?
ここが最も気になるところだろう。
原則的な考え方としては、
建替え事業に必要なお金は、建替え事業全体で用意する。
国土交通省は、
マンション建替えについて、
区分所有者が、
自分たちで資金を出し、
計画を作り、
解体・建設することが基本だと説明している。
一方、
建替え後のマンションに新たな住戸を増やし、
その住戸をデベロッパーなどへ売却できれば、
その売却収入を事業費へ充てることができる。
土地に余裕があるマンションは建替えやすい?
例えば古いマンションが、
5階建て100戸。
しかし現在の都市計画上、
10階建て150戸まで建てられる。
とする。
建替え後、
既存所有者が100戸を取得。
余った50戸を販売。
その売却収入を、
解体費。
建設費。
設計費。
などへ充てる。
という方法が考えられる。
こうした、
余剰床を販売できるマンション
では、区分所有者の負担を軽減できる可能性がある。
しかし現在は建替え費用を販売だけで賄えないケースもある
すべてのマンションで住戸を増やせるわけではない。
すでに容積率をほぼ使い切っている。
高さ制限。
日影規制。
敷地条件。
現在の建築規制。
などによって、
建替え後も戸数を大きく増やせない場合がある。
さらに建築費が上昇すれば、
新しく販売する住戸の収入だけでは、
建替え費を賄えない可能性もある。
その場合、
区分所有者の追加負担
が必要になる。
自分の部屋の価値と新しい部屋の価値との差を払う
国土交通省の建替え実務マニュアルでは、
建替え参加者の負担について、
再建建物の価額から、
現在所有している区分所有権・敷地利用権の評価額を差し引いた金額を、
負担金とする考え方が示されている。
例えば非常に単純化して、
現在の権利評価額、
3,000万円。
新マンションで取得する住戸の価額、
4,500万円。
なら、
差額、
1,500万円
を負担するというイメージである。
実際の権利変換や負担額は事業計画によって異なる。
仮住まい費用も忘れてはいけない
建替え期間中は、
現在のマンションには住めない。
既存建物を解体し、
新しい建物を建設するからである。
そのため、
引越し。
仮住まい。
再入居時の引越し。
などが必要になる。
国土交通省の建替え実務マニュアルの記載例では、
区分所有者の、
引越し費用や仮住居費用などを各区分所有者が負担する
ケースが示されている。
建替えでは、
新しい住宅の取得負担だけでなく、
建替え期間中の生活費
も考える必要がある。
高齢所有者ほど建替えへの賛成が難しくなることもある
例えば、
築60年。
所有者75歳。
住宅ローンは完済。
現在の管理費・修繕積立金だけなら生活できる。
しかし建替えになり、
追加負担1,500万円。
さらに数年間の仮住まい。
となったらどうだろうか。
新たな住宅ローンを組むのが難しい場合もある。
そのためマンション建替えでは、
建物の問題だけではなく、所有者の資金問題
も大きな課題になる。
高経年マンションで言われる、
「建物と居住者の2つの老い」
が建替えを難しくする理由の一つである。
建替えに反対したらどうなる?
原則として、
法律上の要件を満たした建替え決議が成立すれば、
反対した所有者がいるからといって、
そのまま永遠に建替えを止められるわけではない。
法定手続きでは、
建替えに参加しない区分所有者の権利について、
時価による売渡し請求
などを通じて整理する仕組みがある。
つまり、
多数決で決まったから所有権を無償で失う
というものではない。
権利の評価・金銭処理を行いながら事業を進める。
賃貸に出している部屋はどうなる?
投資用マンションなどでは、
所有者本人ではなく、
賃借人が住んでいる場合もある。
従来、建替え決議が成立しても、
賃借人との契約関係が建替えの妨げになるケースがあった。
2026年の改正では、
建替え決議が成立した場合、
一定の請求と金銭補償を前提として、
賃貸借を終了させる制度
も創設された。
終了請求後、原則として6カ月経過で賃貸借を終了させる仕組みである。
投資用区分マンションを保有する場合、
将来の建替えは、
所有者だけでなく入居者との関係にも影響する。
建替え以外に「マンションと土地を全部売る」方法もある
建替えが難しい場合、
建物と敷地を一括して売却する
方法がある。
例えば、
マンションと土地をデベロッパーへ売る。
区分所有者は、
その売却代金から、
それぞれの権利に応じた分配金を受け取る。
その後、
別の住宅を購入する。
賃貸住宅へ移る。
再開発後の住宅へ戻る。
などを選ぶ。
建替えのように、
全員が新しいマンションに戻ることを前提としない方法である。
2026年から売却という出口も使いやすくなった
改正前は、
建物と土地を一括売却するには、
原則として区分所有者全員の同意が必要となるケースがあり、
非常にハードルが高かった。
2026年の改正では、
建替えと同等の多数決によって、
建物・敷地の一括売却
を行う制度が整備された。
さらに、
建物を先に取り壊してから敷地を売却する方法や、
建物だけを取り壊す方法も、
多数決によって決められる制度が設けられた。
売却なら新マンションを買う必要はない
建替えの場合、
新マンションへ戻るためには、
追加負担が発生することがある。
一方、
敷地売却なら、
区分所有者は原則として、
分配金を受け取る
形になる。
そのお金で、
より小さな住宅へ住み替える。
高齢者住宅へ移る。
別の地域へ移住する。
賃貸住宅へ移る。
という選択もできる。
国土交通省も、敷地売却では、
各区分所有者が分配金を受け取り、
再入居や他の住宅への住み替えなどを選べることを特徴としている。
建物を壊して「土地だけ売る」方法もある
立地によっては、
古い建物付きで売るより、
建物を解体して、
更地として土地を売る
方が価値を出しやすい場合もある。
2026年の改正では、
建物取壊し敷地売却決議
という仕組みも整備された。
つまり、
マンションを新しいマンションへ建替えなくても、
建物を取り壊し、
土地を売却して、
区分所有関係を解消する出口も考えられる。
「取り壊して終わり」という選択肢も制度化
さらに、
建物そのものを取り壊す決議
についても制度が整備された。
例えば、
建物を撤去する必要がある。
しかし直ちに土地を売却するわけではない。
というケースもあり得る。
2026年の改正は、
老朽マンションの再生について、
建替えだけではなく、
売却。
取壊し。
更新。
まで含めた選択肢を増やした点が大きい。
「マンションの最後=建替え」ではなくなった
整理すると、
築50年・60年を迎えたマンションには、
次のような出口がある。
| 方法 | 建物 | 土地 | 所有者の基本的な方向 |
|---|---|---|---|
| 修繕・改修 | 残す | 維持 | 住み続ける |
| 建物更新 | 躯体等を活用 | 維持 | 大幅改修後に利用 |
| 建替え | 解体して新築 | 維持 | 新マンション取得等 |
| 建物・敷地売却 | 売却 | 売却 | 分配金を受け取る |
| 取壊し後敷地売却 | 解体 | 売却 | 分配金等で住み替え |
| 取壊し | 解体 | 維持等 | 土地の次の利用を検討 |
つまり、
マンションの最後には複数の道がある。
それでも建替えは簡単ではない
法律が変わったからといって、
建替えが簡単になったわけではない。
例えば100戸のマンションなら、
100人それぞれに、
年齢。
収入。
家族構成。
住宅ローン。
資産。
考え方。
がある。
建替えたい人。
修繕して住み続けたい人。
売りたい人。
追加負担できない人。
相続しただけで住んでいない人。
投資目的の人。
が混在する。
そこから、
新しいマンションの設計。
費用。
住戸。
負担額。
権利。
仮住まい。
を決めていく。
建物を建てるより、所有者の合意をつくる方が難しい
場合もあるのである。
実際、建替え件数はそれほど多くない
国土交通省によると、
マンション建替えの実績は、
2025年3月31日時点で累計、
323件。
約、
2万6,000戸
である。
また、当時の制度によるマンション敷地売却等の実績は、
累計、
17件、約1,300戸
だった。
築40年以上のマンションが100万戸を大きく超えていることを考えれば、
建替えはまだ限定的
である。
多くのマンションでは、
修繕・改修を続けながら使用しているのが現実である。
容積率に余裕があるマンションは有利な場合がある
建替え事業の採算性で重要になるのが、
土地の価値と容積率
である。
例えば、
駅前。
広い土地。
現在5階建て。
しかし都市計画上もっと大きな建物を建てられる。
なら、
建替え後の余剰住戸を販売し、
事業費へ回せる可能性がある。
反対に、
すでに敷地いっぱいに建っている。
高さ制限がある。
現在と同程度の床面積しか作れない。
なら、
販売できる余剰床が少ない。
その分、
区分所有者の追加負担が大きくなる可能性がある。
昔は建替えやすくても今は同じ建物が建たない場合がある
築50年のマンションが建設された当時と、
現在では、
建築基準。
容積率。
高さ制限。
日影規制。
などが異なる場合がある。
現在の規制では、
同じ大きさのマンションを建てられない
ケースもある。
その場合、
建替え後の住戸数や床面積が減る可能性がある。
中古マンション購入時に、
「将来建替えれば新築になる」
と単純に考えるのは危険なのである。
一定のマンションには容積率緩和制度もある
一方、
一定の要件を満たすマンションについては、
特定行政庁の許可によって、
建替え時の容積率制限を緩和できる制度もある。
国土交通省によると、
耐震性不足。
火災安全性不足。
外壁等剥落危険性。
配管設備腐食。
バリアフリー不適合。
などの一定のマンションが対象になり得る。
ただし、
対象になれば必ず容積率が増える
という制度ではない。
周辺市街地の環境改善に資することなどについて、
特定行政庁の許可が必要になる。
土地の価値が高いマンションほど出口を作りやすい可能性
ここまでを見ると、
マンションの最後に非常に重要なのが、
土地
であることが分かる。
建物は古くなる。
しかし土地は残る。
例えば、
都心。
駅前。
人気住宅地。
広い敷地。
なら、
古いマンションでも、
土地そのものに高い価値がある可能性がある。
その場合、
建替え。
敷地売却。
再開発。
などの出口を検討しやすい場合がある。
逆に、
建物だけでなく土地需要も弱い場所では、
再生事業の採算性を確保することが難しくなる可能性がある。
「マンション価格のうち土地をどれだけ持っているか」も重要
マンションを購入すると、
専有部分だけではなく、
敷地についても、
敷地利用権・土地持分
を持つ。
そのため建物が古くなっても、
土地の権利までゼロになるわけではない。
例えば、
都心の好立地マンション。
土地持分も大きい。
なら、
建物が高経年化しても土地価値が一定の下支えとなる可能性がある。
中古マンションを長期保有するなら、
建物だけでなく土地の価値を見る
ことも重要になる。
「建物が古い=価値ゼロ」ではない理由
築60年になり、
建物としての評価が低くなったとしても、
土地の価値。
立地。
再開発可能性。
管理状態。
などがある。
だから、
マンションの価格は、
単純に、
築47年。
築50年。
築60年。
でゼロになるわけではない。
一方、
土地の需要が弱い。
管理不全。
修繕積立金不足。
建替え合意困難。
となれば、
売却しにくくなる可能性もある。
中古購入者は「自分が住む間」だけ考えない
例えば45歳で、
築40年マンションを購入。
35年間住めば、
自分が80歳になるころ、
マンションは、
築75年
になる。
購入するときには、
現在の状態だけではなく、
自分が、
10年後。
20年後。
30年後。
どうするのかを考える必要がある。
住み続けるのか。
売却するのか。
子どもへ相続するのか。
建替えになったら資金を出せるのか。
という視点である。
「建替えになればラッキー」は危険
築古マンション投資などで、
「そのうち建替えになれば新築マンションがもらえる」
という期待だけで購入するのは避けたい。
建替えには、
多数の合意。
事業採算。
建築費。
容積率。
土地価値。
追加負担。
仮住まい。
など、多くの条件がある。
国土交通省の実績でも、
2025年3月末までの建替えは累計323件にとどまる。
建替えは自動的に起こるイベントではない。
投資用マンションなら建替え・売却リスクも収支に含める
例えば築45年の投資用区分マンションを購入。
15年間保有する。
売却時は築60年。
となる。
その間に、
修繕積立金値上げ。
大規模修繕。
建替え検討。
敷地売却。
などの議論が始まる可能性がある。
建替えになれば、
賃貸収入が一時的に止まることも考えられる。
追加負担。
権利処理。
賃借人への対応。
なども発生する可能性がある。
だから築古物件投資では、
現在の利回りだけでなく、「マンションの終わり方」まで見る
必要がある。
建替えの話が出ているマンションは買ってはいけない?
これも一律には言えない。
例えば、
建替え検討開始。
デベロッパー参加。
事業採算性良好。
土地価値が高い。
というマンションなら、
再生が進む可能性もある。
一方、
10年以上建替えを検討。
しかし毎回合意できない。
追加負担が高額。
修繕も進まない。
というマンションなら、
状況は違う。
重要なのは、
「建替え検討中」という言葉だけではなく、どこまで進んでいるか
である。
総会議事録で再生議論を確認する
中古マンションを購入するときには、
総会議事録。
理事会議事録。
などで、
建替え。
再生。
敷地売却。
耐震改修。
再開発。
などが議論されていないか確認したい。
もし建替え検討委員会などが設置されているなら、
その状況も確認する。
例えば、
初期検討。
建替え推進決議。
事業協力者選定。
建替え計画作成。
など、
段階によって意味がまったく違う。
「建替えできるか」は購入前に完全には分からない
将来、
建築費はいくらになるか。
法律はどう変わるか。
容積率はどうなるか。
土地価格はどうなるか。
所有者はどう変わるか。
これらを30年前から正確に予測することはできない。
したがって中古マンション購入で、
「30年後に必ず建替えできますか?」
という問いに、
確実な答えを出すことは難しい。
見るべきなのは、
建替えなくても維持できるマンションか
である。
建替えを期待するより「維持できること」の方が重要
例えば、
建替えできなくても、
修繕積立金が十分。
長期修繕計画がある。
配管更新計画あり。
管理組合が機能。
耐震性も確認。
というマンションなら、
長期間使い続ける選択肢がある。
一方、
「将来建替えるから今は修繕しない」
という状態で、
建替えも進まなければ、
マンションの状態だけが悪化していく。
だから購入者にとっては、
建替え可能性より、建替えなくても維持できる管理状態
の方がまず重要なのである。
まとめ
マンションは、
築50年。
60年。
になったからといって、
自動的に建替えられるわけではない。
そして、
築60年になったから、
自動的に取り壊されるわけでもない。
マンションの将来には、
修繕・改修を続ける。
建物全体を更新する。
建替える。
建物と敷地を売却する。
建物を取り壊して敷地を売却する。
建物を取り壊す。
という複数の選択肢がある。
2026年4月1日に施行された改正マンション関係法では、
建替えだけでなく、
建物更新
建物・敷地売却
建物取壊し後の敷地売却
建物取壊し
といった再生・区分所有関係解消の仕組みも整備された。
建替え決議については、
原則、
区分所有者と議決権の各5分の4以上
が必要である。
ただし、
耐震性不足。
火災安全性不足。
外壁等剥落のおそれ。
配管設備の著しい劣化。
バリアフリー基準不適合。
という一定の客観的事由に該当する場合には、
各4分の3以上
へ緩和できる仕組みが導入されている。
重要なのは、
築年数だけでは決まらない
ということである。
築60年でも、
適切に修繕され、
安全性が確保され、
設備更新が進み、
管理組合の財務も健全なら、
改修しながら使い続ける選択肢がある。
一方で、
老朽化が深刻。
修繕費も高額。
建物性能も不足。
となれば、
建替えや売却などを検討する可能性がある。
しかし建替えには、
費用。
所有者の合意。
仮住まい。
権利調整。
事業採算。
という大きな壁がある。
国土交通省によれば、
2025年3月31日時点のマンション建替え実績は、
累計、
323件、約2万6,000戸。
「古くなれば普通に建替わる」
というほど簡単なものではない。
建替え費用についても、
区分所有者が負担しなくてよいとは限らない。
新たに増やした住戸を販売して事業費へ充当できる場合もある一方、
それだけでは不足すれば、
区分所有者に追加負担が発生する可能性がある。
さらに、
引越し。
仮住居。
などの負担も考える必要がある。
だからマンション購入時には、
「築何年まで住めるか」だけを考えるのでは不十分
である。
見るべきなのは、
現在の建物状態。
修繕履歴。
長期修繕計画。
修繕積立金。
土地価値。
容積率。
管理組合の合意形成能力。
そして、
自分が20年後、30年後にどうしたいのか。
である。
マンションには、
建物の寿命だけではなく、
管理の寿命
財務の寿命
所有者間の合意形成能力
がある。
これらが機能していれば、
修繕。
改修。
建替え。
売却。
という選択肢を持てる。
逆に、
管理もお金も合意形成も機能しなくなれば、
建物だけが残ってしまう可能性がある。
マンションの本当の資産価値とは、
現在いくらで売れるかだけではない。
古くなったときにも次の選択肢を持てるマンションかどうか。
そこまで考えて選ぶことが、
これからの高経年マンション時代には重要なのである。
次回はいよいよシリーズ最終回。
資産価値が落ちにくいマンションとは?価格だけでは分からない「管理」の重要性【マンションは買った後いくらかかる? 第8回】
をテーマに、
立地。
築年数。
修繕積立金。
管理組合。
大規模修繕。
土地。
再生可能性。
を総合しながら、
「30年後にも選ばれるマンション」とは何か
をシリーズ全体のまとめとして解説する。
引用元・参考元
- 国土交通省「マンションの再生等について」
- 国土交通省「マンション再生実務マニュアル(令和8年3月改訂)」
- 国土交通省「改正マンション関係法の施行に伴う関係政令」
- 国土交通省「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」
- 国土交通省「マンション建替え等の実施状況」
- 国土交通省「マンション建替え実務マニュアル」
- 国土交通省「マンション建替えの仕組み」
- 国土交通省「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」
- 国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」


