住宅を購入するとき、住宅ローンの金利と同じくらい確認しておきたいのが「住宅ローン控除」である。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して一定の住宅を購入した場合などに、年末の住宅ローン残高を基に所得税などの負担を軽減できる制度である。
2026年度の税制改正では、この住宅ローン減税の適用期限が2030年12月31日入居分まで5年間延長された。
さらに今回の改正では、中古住宅、正確には「既存住宅」に対する支援が大きく拡充された。
特に省エネ性能の高い既存住宅について、
借入限度額の引き上げ
控除期間を13年間へ延長
子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せ
床面積40㎡以上への要件緩和
が行われている。
今回は2026年の住宅ローン控除について、新築住宅と中古住宅の違い、省エネ性能による控除額の違い、利用するための条件まで分かりやすく解説する。
そもそも住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」である。
住宅ローンなどを利用してマイホームを新築・購入・増改築し、一定の条件を満たした場合に利用できる。
2026年に入居する住宅の場合、基本的な控除率は、
年末の住宅ローン残高等 × 0.7%
である。
例えば控除対象となる住宅ローン残高が3,000万円なら、
3,000万円 × 0.7%
= 21万円
が、その年の控除額を計算する際の基本となる。
ただし、実際に必ず21万円戻ってくるという意味ではない。
住宅の種類ごとに「借入限度額」が決められており、本人が支払っている所得税額などによっても実際に控除できる金額は変わる。
2026年の大きな変更は「2030年まで延長」
まず大きな改正が制度そのものの延長である。
これまでの住宅ローン減税を5年間延長し、
2026年1月1日から2030年12月31日までに入居
した場合について、新しい制度が適用されることになった。
令和8年度税制改正に関する法律は2026年3月31日に成立している。
つまり2026年だけの一時的な制度ではなく、現時点では2030年入居分まで住宅ローン控除が継続する。
2026年は「住宅の省エネ性能」がかなり重要
現在の住宅ローン控除では、住宅の性能によって借入限度額が異なる。
住宅は大きく、
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
その他の住宅
に分けられる。
基本的には、省エネ性能などが高い住宅ほど大きな借入限度額が設定されている。
住宅ローンを5,000万円借りたからといって、必ず5,000万円すべてが控除計算の対象になるわけではない。
この「借入限度額」が非常に重要である。
2026年の新築住宅はどうなる?
まず新築住宅を見てみよう。
2026年入居の場合、主な借入限度額は次のとおりである。
| 新築住宅の性能 | 借入限度額 | 控除期間 |
|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円 | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 13年 |
| その他の新築住宅 | 原則対象外 | ― |
控除率はいずれも基本的に**0.7%**である。
つまり2026年以降、新築住宅では「住宅ローンを利用していれば何でも住宅ローン控除を受けられる」という制度ではなくなっている。
特に省エネ基準を満たさない「その他の新築住宅」は、原則として住宅ローン控除の対象外である。
長期優良住宅なら最大4,500万円まで対象
例えば認定長期優良住宅を購入し、年末の住宅ローン残高が5,000万円だったとする。
一般世帯の場合、借入限度額は4,500万円なので、
4,500万円 × 0.7%
= 31万5,000円
が1年間の控除限度額の目安になる。
これが最大13年間続く仕組みである。
単純に31万5,000円 × 13年とすると約409万円だが、実際には住宅ローン残高が毎年減っていくため、13年間ずっと上限額を控除できるとは限らない。
さらに所得税額などによっても実際の控除額は変わる。
子育て世帯・若者夫婦世帯は借入限度額が上乗せ
2026年制度では一定の「子育て世帯等」について、借入限度額を上乗せする措置もある。
対象となるのは、入居した年の12月31日時点で、
19歳未満の扶養親族がいる世帯
または、
夫婦のいずれかが40歳未満の世帯
である。
例えば新築の長期優良住宅・低炭素住宅なら、
通常 4,500万円
に対して、
子育て世帯等 5,000万円
まで借入限度額が上がる。
ZEH水準省エネ住宅では、
通常 3,500万円
子育て世帯等 4,500万円
となる。
5,000万円の住宅ローンならどのくらい違う?
例えば長期優良住宅を購入し、年末時点の住宅ローン残高が5,000万円だったとする。
一般世帯
借入限度額4,500万円なので、
4,500万円 × 0.7%
= 31万5,000円
子育て世帯等
借入限度額5,000万円なので、
5,000万円 × 0.7%
= 35万円
となる。
差は年間最大3万5,000円である。
ただし実際の控除額は所得税額や住宅ローン残高などによって異なる。
2026年の大きなポイントは「中古住宅」
今回の制度改正で特に注目したいのが既存住宅、一般にいう中古住宅である。
国土交通省も2026年度改正について、
「省エネ性能の高い既存住宅への支援を拡充」
したことを大きな改正点として挙げている。
これまで新築住宅に比べて控除条件が弱かった中古住宅について、2026年から条件が大きく改善された。
中古住宅も最大13年間控除へ
2026年入居の既存住宅では次のようになる。
| 既存住宅の性能 | 借入限度額 | 控除期間 |
|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 3,500万円 | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 13年 |
| その他の住宅 | 2,000万円 | 10年 |
控除率は基本的に0.7%である。
特に重要なのは、省エネ性能の高い既存住宅について控除期間が10年から13年へ延長されたことである。
中古住宅を選ぶ場合でも、その住宅がどの省エネ性能区分に該当するのかによって住宅ローン控除が変わることになる。
中古の長期優良住宅なら3,500万円まで対象
例えば既存の認定長期優良住宅を購入し、年末ローン残高が4,000万円だったとする。
通常の借入限度額は3,500万円なので、
3,500万円 × 0.7%
= 24万5,000円
が年間控除限度額の目安になる。
さらに2026年以降は控除期間が13年間となる。
単純計算なら、
24万5,000円 × 13年
= 318万5,000円
となるが、実際にはローン残高の減少や所得税額などによって控除額は変わる。
子育て世帯なら中古住宅でも上乗せ
2026年改正では、子育て世帯等への借入限度額上乗せが、省エネ性能の高い既存住宅にも導入されている。
例えば長期優良住宅・低炭素住宅の既存住宅なら、
通常 3,500万円
子育て世帯等 4,500万円
となる。
ZEH水準省エネ住宅でも同様に、
通常 3,500万円
子育て世帯等 4,500万円
である。
省エネ基準適合住宅では、
通常 2,000万円
子育て世帯等 3,000万円
となる。
これは2026年度改正の大きな特徴である。
「中古だから住宅ローン控除が少ない」とは限らなくなった
これまで住宅購入では、
「住宅ローン控除を考えるなら新築の方が有利」
という印象を持つ人もいたかもしれない。
しかし2026年以降は、省エネ性能の高い中古住宅への支援が強化されている。
特に、
長期優良住宅
ZEH水準省エネ住宅
などについては、中古でも13年間の控除が利用できる。
住宅価格そのものが新築より低ければ、
住宅価格を抑えながら住宅ローン減税も活用する
という選択肢も考えやすくなった。
「その他の中古住宅」も対象
省エネ性能が高くない中古住宅がすべて対象外になるわけではない。
2026年から2030年に入居する既存住宅については、「その他の住宅」でも、
借入限度額2,000万円
控除期間10年間
控除率0.7%
という住宅ローン控除が設定されている。
借入限度額2,000万円なら、
2,000万円 × 0.7%
= 年間最大14万円
が一つの目安となる。
新築と中古でかなり制度が違う
ここは重要なポイントである。
2026年では、省エネ性能を満たさない「その他の住宅」について、
新築住宅 → 原則対象外
中古住宅 → 借入限度額2,000万円・10年間
となっている。
つまり住宅ローン控除の条件は、
「新築か中古か」
だけでなく、
住宅の省エネ性能との組み合わせ
で確認する必要がある。
床面積40㎡以上へ対象が拡大
2026年度改正のもう一つの重要ポイントが、床面積要件である。
原則として、
登記簿上の床面積40㎡以上
まで対象が拡大された。
そして今回の改正では、この40㎡以上への緩和措置が既存住宅にも適用された。
以前は中古住宅で50㎡未満だと住宅ローン控除を利用しにくいケースがあったが、2026年以降はコンパクトな住宅も対象になりやすくなった。
単身者や夫婦2人世帯にとっても重要な変更である。
ただし40㎡以上なら誰でも対象ではない
40㎡以上50㎡未満の住宅では、所得条件などに注意が必要である。
2026年以降の制度では、
原則として合計所得金額が2,000万円以下
であることが条件となる。
ただし床面積40㎡以上50㎡未満の住宅を利用する場合には、合計所得金額1,000万円以下などの条件がある。
また、子育て世帯等への借入限度額上乗せ措置を利用する場合は、床面積50㎡以上が必要となる。
したがって、
「2026年から40㎡あれば全員住宅ローン控除を受けられる」
という意味ではない。
住宅ローンは10年以上の返済期間が必要
住宅ローン控除を利用するには、ローンそのものにも条件がある。
代表的な条件の一つが、
返済期間10年以上
である。
住宅取得のための住宅ローンなどについて、10年以上にわたって分割返済する借入れである必要がある。
例えば住宅ローンを10年未満で組んだ場合には、原則として住宅ローン控除の対象にならない。
繰り上げ返済で「残り10年未満」になる場合も注意
第8回のテーマにもつながる重要なポイントである。
当初は15年ローンなどで住宅ローン控除の条件を満たしていても、途中で大きな繰り上げ返済を行った結果、返済期間が10年未満となる場合がある。
国税庁は、臨時弁済によって償還期間が10年未満となった場合には、その年以後、住宅ローン控除の対象となる借入金に該当しなくなるとしている。
「住宅ローン控除を受けている間に繰り上げ返済した方が得か」は、単に利息だけでは判断できないのである。
購入後6か月以内に住むことも条件
住宅ローン控除は投資用住宅を購入するための制度ではない。
基本的には、自分自身が住む住宅が対象である。
主な条件として、
住宅の引き渡しまたは工事完了から6か月以内に居住する
ことなどが求められる。
さらに適用を受ける年の12月31日まで、原則としてその住宅に引き続き居住している必要がある。
控除率0.7%でも「必ず0.7%戻る」とは限らない
例えば年末の住宅ローン残高が3,000万円あり、
3,000万円 × 0.7%
=21万円
となったとする。
だからといって必ず21万円全額が現金で戻るわけではない。
住宅ローン控除は基本的に所得税から差し引く税額控除である。
所得税から控除しきれない場合には、一定の範囲で翌年度の住民税から控除される仕組みもある。
そのため、
借入限度額が大きければ大きいほど必ず得になる
とは限らない。
本人が実際に負担している税額も関係する。
住宅ローン残高が減れば控除額も減る
例えば借入限度額が4,500万円でも、年末時点の住宅ローン残高が3,000万円しかなければ、基本的には3,000万円を基準に控除額を計算する。
つまり、
借入限度額4,500万円 × 0.7%
ではなく、
実際の対象年末残高3,000万円 × 0.7%
という考え方になる。
住宅ローンは毎年返済して残高が減るため、通常は控除額も徐々に小さくなっていく。
2026年の制度を一覧で比較
2026年入居について、主要な区分を整理すると次のようになる。
| 住宅 | 性能 | 通常の借入限度額 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 新築 | 長期優良・低炭素 | 4,500万円 | 13年 |
| 新築 | ZEH水準 | 3,500万円 | 13年 |
| 新築 | 省エネ基準適合 | 2,000万円 | 13年 |
| 新築 | その他 | 原則対象外 | ― |
| 中古 | 長期優良・低炭素 | 3,500万円 | 13年 |
| 中古 | ZEH水準 | 3,500万円 | 13年 |
| 中古 | 省エネ基準適合 | 2,000万円 | 13年 |
| 中古 | その他 | 2,000万円 | 10年 |
いずれも控除率は基本的に0.7%である。
こうして比較すると、2026年の制度では住宅の省エネ性能が住宅ローン控除へ直接影響していることが分かる。
住宅を選ぶときは「価格+住宅ローン控除」で考える
例えば、
A住宅 4,500万円
B住宅 4,600万円
だった場合、
「Aの方が100万円安い」
だけで判断するのではなく、
住宅の性能区分
住宅ローン控除
住宅ローン金利
光熱費
将来の資産価値
などを含めて比較した方がよい。
特に省エネ性能の違いによって借入限度額や控除期間が変わるため、購入前に住宅会社や不動産会社へ、
「この住宅は住宅ローン控除上、どの区分になりますか?」
と確認することが重要である。
中古住宅では省エネ性能の証明も確認する
中古住宅を購入する場合には、
「築浅だからZEH水準だろう」
「断熱性が高そうだから省エネ住宅だろう」
と見た目だけで判断できるものではない。
住宅ローン控除で省エネ住宅として扱うためには、必要な性能を満たしていることを証明する書類などが必要になる場合がある。
購入を決める前に、
住宅ローン控除の対象になるか
どの性能区分に該当するか
必要な証明書を取得できるか
まで確認しておく方がよい。
初年度は確定申告が必要
住宅ローン控除は、住宅を買えば自動的に適用される制度ではない。
初めて住宅ローン控除を受ける年は、給与所得者であっても原則として確定申告が必要である。
国税庁によると、給与所得者は初年度に確定申告を行い、2年目以降は一定の手続きにより年末調整で住宅ローン控除を受けることができる。
近年は金融機関から国税当局へ年末残高情報を提供する「調書方式」も導入されており、対応金融機関ではマイナポータル連携を利用できる場合もある。
2028年以降にはさらに注意点もある
今回の制度は2030年まで続くが、途中で条件が変わる部分もある。
国土交通省によると、2028年以降に建築確認を受ける新築の省エネ基準適合住宅は原則として住宅ローン減税の対象外となる。
また、2028年以降に入居する場合、一定の「災害レッドゾーン」に新築する住宅についても対象外となる仕組みが導入される。
つまり、
2030年まで制度が延長された=2030年まで条件が全部同じ
ではない。
住宅購入時には、その年の制度を確認する必要がある。
住宅ローン控除のためだけに住宅を選ばない
住宅ローン控除は大きな税制優遇である。
しかし、
「控除額が大きいから5,000万円借りる」
「減税があるから高い住宅を買う」
という考え方には注意したい。
例えば借入額を1,000万円増やせば、住宅ローン控除が増える可能性はある。
しかし同時に、
住宅ローン元金が1,000万円増え、
さらにその1,000万円に対する利息も支払うことになる。
住宅ローン控除はあくまで住宅取得の負担を軽減する制度であり、
借金そのものを減らしてくれる制度ではない。
金利上昇時代は「控除額」より総支払額を見る
例えば住宅ローン金利が2%で、控除率が0.7%だったとする。
単純に考えても、
「2%支払って0.7%控除されるから得」
という話ではない。
住宅ローン控除には借入限度額があり、所得税額などによって満額控除できない場合もある。
さらに住宅ローン金利は借入残高全体に対して発生する。
そのため、
住宅ローン金利
総返済額
住宅ローン控除
住宅価格
をまとめて比較する必要がある。
まとめ
2026年度税制改正によって、住宅ローン減税は2030年12月31日入居分まで5年間延長された。
控除率は基本的に、
年末住宅ローン残高等の0.7%
である。
そして2026年以降の大きな特徴が、
住宅の省エネ性能によって借入限度額が変わる
ことである。
新築住宅の場合、2026年入居なら、
長期優良住宅・低炭素住宅 4,500万円
ZEH水準省エネ住宅 3,500万円
省エネ基準適合住宅 2,000万円
が通常の借入限度額となる。
一方、省エネ基準を満たさないその他の新築住宅は原則として対象外である。
また2026年度改正では、中古住宅への支援が大きく拡充された。
省エネ性能の高い既存住宅では借入限度額が引き上げられ、控除期間も13年間へ拡大された。
さらに床面積要件についても一定の条件のもと40㎡以上まで緩和され、コンパクトな中古マンションなども制度を利用しやすくなっている。
住宅を購入するときには、
住宅価格はいくらか
住宅ローン金利はいくらか
どの省エネ区分なのか
住宅ローン控除はいくら使えるのか
をセットで確認したい。
特に2026年以降は、
「住宅ローン控除が使えるか」だけではなく、「どの区分で使えるのか」
が非常に重要になっている。
次回はいよいよこのシリーズ最終回。
「住宅ローンは繰り上げ返済した方がいい?期間短縮型・返済額軽減型の違い」
をテーマに、100万円を繰り上げ返済すると利息はいくら減るのか、住宅ローン控除期間中でも返済した方がよいのかを具体的に比較する。
引用元・参考元
- 国土交通省「住宅ローン減税」
- 国土交通省「令和8~12年の住宅ローン減税の概要」
- 国土交通省「令和8年度税制改正・住宅税制」
- 国税庁「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合」
- 国税庁「中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」
- 国税庁「住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」
- 国税庁「調書方式による住宅借入金等特別控除」
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