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【マンションは管理で選ぶ 第6回】老朽化マンションは最後どうなる?建て替え・敷地売却・再生の仕組み

2026/09/21
連載

築30年。

築40年。

築50年。

マンションは修繕を続けながら長く使うことができます。

しかし、さらに時間が経ったらどうなるのでしょうか。

築60年、70年になっても修繕し続けるのか。

それとも、いつか建て替えるのか。

土地ごと売却するのか。

マンションを購入するときにはあまり意識しないかもしれませんが、建物にもいつか、

「これからこのマンションをどうするのか」

を考える時期がやってきます。

しかも2026年4月にはマンション関係法が大きく改正され、建て替えだけでなく、建物の更新、売却、取壊しなど、再生の選択肢が広がりました。

「マンションは管理で選ぶ」第6回は、老朽化したマンションの最後と再生について見ていきます。

マンションは「古くなったら自動的に建て替え」ではない

まず知っておきたいのは、

マンションには「築○年になったら建て替える」という決まりはない

ということです。

築50年を超えても、修繕や設備更新を続けながら使われているマンションがあります。

反対に、建物の状態や経済性などを踏まえ、建て替えや再生が検討される場合もあります。

重要なのは築年数そのものではありません。

耐震性。

設備の老朽化。

修繕費。

住民構成。

土地の利用状況。

建て替え後の事業性。

などを総合的に考える必要があります。

つまりマンションの「最後」は、

年齢だけで決まるものではない

のです。

修繕すれば永遠に使えるわけでもない

これまでの連載では、大規模修繕の重要性を見てきました。

外壁を直す。

屋上防水を更新する。

配管を交換する。

エレベーターを更新する。

こうした工事を続けることで、マンションを長く使うことができます。

しかし築年数が進むほど、修繕しなければならない場所は増えていきます。

第1回の大規模修繕。

第2回。

第3回。

さらに設備更新。

となれば、修繕費も大きくなる可能性があります。

そこで管理組合は、いつか、

「これからも修繕を続けることが合理的なのか」

を考えることになります。

老朽化マンションには「建て替え」以外の選択肢もある

老朽化したマンションというと、

「建て替えるか、そのまま使うか」

という二択を想像しがちです。

しかし現在は、それだけではありません。

2026年4月1日に施行された改正マンション関係法では、マンション再生のための新しい仕組みが整備されました。

国土交通省は、建て替えに加えて、

建物更新。

建物・敷地の売却。

建物を取り壊したうえで敷地を売却。

取壊し。

などの再生手法を示しています。

つまり今後のマンション再生は、

「壊して同じ場所に新しいマンションを建てる」だけではない

のです。

最もイメージしやすいのが「建て替え」

マンション再生で最も分かりやすいのが建て替えです。

現在のマンションを解体し、同じ敷地に新しい建物を造ります。

元の区分所有者は、一定の手続きを経て新しいマンションの住戸を取得したり、金銭化して別の住宅へ移ったりします。

ただし建て替えは、大規模修繕とは比較にならないほど大きな事業です。

建物を解体する。

新しい設計をする。

建築確認を取る。

工事をする。

その間の仮住まいを確保する。

所有者ごとの権利を調整する。

など、多くの手続きがあります。

そして最大の問題の一つが、

区分所有者の合意形成

です。

建て替えには原則として高い賛成割合が必要

2026年4月施行の改正区分所有法でも、建て替え決議の基本となる多数決要件は原則4分の5です。

一方、耐震性不足など一定の客観的な事情がある場合には、決議要件が4分の5から4分の3へ緩和される仕組みが設けられました。

たとえば100戸のマンションなら、単純に考えて非常に多くの所有者の賛成が必要です。

しかも所有者にはそれぞれ事情があります。

建て替えたい人。

今のまま住みたい人。

高齢で引っ越したくない人。

追加負担が難しい人。

投資物件として所有している人。

遠方に住んでいる人。

考え方が違うのは当然です。

だからマンション建て替えは、

建物を造ること以上に、人の意見をまとめることが難しい

ともいえます。

「建て替えれば新築になって得をする」とは限らない

昔のマンションでは、

「建て替えれば住戸数を増やし、増えた住戸を販売して事業費を賄える」

というケースがありました。

敷地に余裕があり、現在より大きな建物を建てられる場合です。

しかし、すべてのマンションでそれができるわけではありません。

すでに容積率を十分使っている。

建築規制が変わっている。

建築費が高い。

販売できる追加住戸が少ない。

といった場合、建て替え事業の採算が合わない可能性があります。

その場合、元の所有者にも相応の負担が必要になることがあります。

つまり、

「古くなったら無料で新築に建て替わる」わけではありません。

建て替えでは「土地の余力」が重要になる

マンションの建て替えを考えるときに重要なのが、

敷地にどれだけ余力があるか

です。

たとえば現在100戸のマンションを、建て替え後に150戸にできるとします。

追加された50戸を販売できれば、その収入を建て替え費用の一部に充てられる可能性があります。

一方、建て替えても100戸程度しか造れなければ、外部へ販売する住戸がほとんどありません。

その場合は、元の所有者が負担する費用が増える可能性があります。

立地が良いから建て替えやすい。

土地が広いから必ず建て替えられる。

というわけでもありません。

容積率や高さ制限などを含めて、実際にどんな建物が造れるかを見る必要があります。

新しく登場した「建物更新」という選択肢

2026年の制度改正で注目したいのが、

建物更新

という考え方です。

建物更新は、マンションを完全に取り壊すのではなく、建物の躯体などを生かしながら大規模に改修する再生方法です。

国土交通省の資料では、新しいマンション再生手法として「更新」が位置付けられ、躯体の補強や専有部分を含む大規模な改良を行う仕組みが設けられています。

イメージとしては、

一棟まるごとの大規模リノベーション

に近いものです。

建物を壊して新築するだけでなく、

「今ある構造を使いながら、建物全体を大きく更新する」

という選択肢が制度上も明確になったのです。

なぜ「建物更新」が必要なのか

建て替えには大きな費用がかかります。

一方、通常の大規模修繕だけでは、

間取り。

断熱性能。

設備。

バリアフリー。

耐震性。

など、建物全体の性能を大きく変えることは難しい場合があります。

そこで、

「普通の修繕では足りない」

しかし、

「全部壊して建て替えるほどではない」

というマンションにとって、更新という考え方が選択肢になり得ます。

今後、高経年マンションが増えていくなかでは、

修繕と建て替えの中間にある再生方法

が重要になる可能性があります。

「マンションと土地をまとめて売る」という方法もある

もう一つの選択肢が、

マンションと敷地の売却

です。

これはマンションと土地を一括して、デベロッパーなどの買受人へ売却する方法です。

建て替えの場合、元の所有者は新しいマンションの中でどの住戸を取得するかなど、複雑な権利調整が必要になります。

一方、売却の場合は、所有していたマンションの権利を金銭化し、分配金を受け取って別の住まいへ移るという考え方になります。

国土交通省も、マンションと敷地を一括して売却する再生方法を案内しています。

つまり、

「同じ場所に住み続けること」にこだわらず、資産を金銭化して再スタートする

という選択肢です。

2026年改正で「売却」という選択肢も広がった

従来も、一定の要件を満たすマンションには敷地売却制度がありました。

しかし2026年4月からの改正では、

建物敷地売却。

建物を取り壊してから敷地を売却。

敷地のみの売却。

といった再生手法に対応する制度が整備されています。

これは重要な変化です。

老朽化したマンションにとって、

「絶対に同じ場所で建て替えなければならない」

わけではなくなっているからです。

建て替えより売却のほうが合理的なケースも考えられます。

「取り壊すだけ」という選択肢も制度化された

マンションを取り壊した後、必ずしもすぐ新しいマンションを建てるとは限りません。

2026年の改正では、

取壊し決議

という仕組みも設けられました。

つまり老朽化した建物を除却し、その後の土地利用について改めて考える方法です。

これは、

建物の安全性。

土地利用。

所有者の事情。

市場性。

などに応じて再生方法を選びやすくするための仕組みといえます。

マンション再生は、

「建て替えだけを目指す制度」

から、

「そのマンションに合った終わり方や再生方法を選ぶ制度」

へ変わりつつあります。

老朽化マンションには「建物と住民の2つの老い」がある

マンション問題でよく使われる言葉に、

「2つの老い」

があります。

一つは建物の老朽化。

もう一つは区分所有者や居住者の高齢化です。

国土交通省も、マンションをめぐる課題として、建物と区分所有者の「2つの老い」が進み、外壁剥落の危険や集会での意思決定が難しくなる問題を指摘しています。

築50年のマンションなら、新築時に40歳だった所有者は90歳になっています。

相続が発生する。

所有者が遠方に住む。

連絡先が分からない。

総会へ参加できない。

というケースも増える可能性があります。

つまり老朽化マンションの難しさは、

建物だけを直せば解決する問題ではない

のです。

管理が悪いと「再生の話し合い」すら難しくなる

ここまでの連載で、管理組合の重要性を何度も取り上げてきました。

その理由が、老朽化したときにはっきりします。

総会が開けない。

所有者の連絡先が分からない。

管理規約が古い。

修繕計画がない。

財務状況が整理されていない。

こうしたマンションでは、

「建て替えを検討しましょう」

と言っても、話し合いを始めること自体が難しくなります。

反対に、

所有者名簿を管理している。

総会を定期的に開催している。

修繕履歴が残っている。

長期的な方針を話し合っている。

というマンションなら、再生について検討しやすくなります。

つまり、

建て替えの準備は、築50年になってから始めるものではありません。

日々の管理そのものが、将来の再生につながっています。

「建て替えの話があるマンション」は買わないほうがいい?

中古マンションを探していると、

「将来の建て替えを検討中」

という物件に出会うこともあります。

これを、

「新築に生まれ変わるからお得」

と考えるのは危険です。

建て替えには、

決議。

事業計画。

デベロッパー選定。

権利調整。

費用負担。

仮住まい。

工事。

など多くの段階があります。

検討を始めてから実際に完成するまで長期間かかる可能性もあります。

また、途中で計画が進まなくなる場合もあります。

建て替え検討中という情報だけで購入判断をするのではなく、

現在どの段階まで進んでいるのか

を確認する必要があります。

建て替え決議と「建て替えの検討」はまったく違う

ここも重要です。

総会議事録に、

「建て替えについて検討する」

と書かれていることと、

正式に建て替え決議が成立していることはまったく違います。

検討段階では、

住民アンケート。

建物調査。

事業性調査。

デベロッパーとの相談。

などを行っているだけの場合があります。

そこから実際の決議へ進まないマンションもあります。

中古マンション購入時に「建て替え」という言葉が出てきたら、

検討なのか、具体的な計画なのか、決議済みなのか

を確認する必要があります。

建て替えが難しいマンションは価値がない?

これも単純には言えません。

建て替えが難しくても、

大規模修繕。

耐震改修。

設備更新。

建物更新。

などによって、長期間利用できる可能性があります。

むしろ、

「建て替えられるか」

だけでなく、

「今ある建物をどこまで維持・改善できるか」

を見ることが重要です。

これから高経年マンションが増える日本では、すべてを建て替えることは現実的ではありません。

今あるマンションを適切に管理し、必要に応じて再生しながら使い続ける考え方がますます重要になります。

将来のマンション再生では「お金」も大きな問題

当然ですが、再生にはお金が必要です。

通常の大規模修繕とは違い、

解体。

設計。

新築工事。

仮住まい。

引っ越し。

各種手続き。

などが発生する可能性があります。

2026年の制度改正では、住宅金融支援機構がマンションの更新などに必要な資金を貸し付けるための制度も整備されました。

しかし融資制度があるからといって、費用問題がなくなるわけではありません。

所有者ごとの資産状況や年齢、住宅ローン残高なども異なります。

マンション再生は、

建物の問題であると同時に、住民一人ひとりの生活設計の問題

でもあります。

中古マンション購入時に「最後」まで考える必要はある?

20代や30代で中古マンションを買う人にとって、

「50年後の建て替え」

まで考えるのは現実味がないかもしれません。

しかし少なくとも、

現在築何年なのか。

あと20年所有したら築何年になるのか。

修繕計画はどこまであるのか。

再生について議論されたことがあるのか。

土地にはどの程度の余力があるのか。

という視点は持っておいてもよいでしょう。

特に投資用マンションなら、

自分が売却するときに建物が何年築になっているか

は重要です。

築40年で購入して10年後に売れば築50年です。

そのとき次の買い手が何を気にするのか。

そこまで想像して物件を見ることが大切です。

「出口戦略」は部屋だけでなく建物全体を見る

不動産投資では、

「出口戦略」

という言葉がよく使われます。

いつ売るか。

いくらで売るか。

誰に売るか。

という考え方です。

しかしマンションでは、自分の部屋だけを考えていても十分ではありません。

建物全体が、

修繕できる状態なのか。

資金があるのか。

管理組合が機能しているのか。

再生を話し合えるのか。

によって、将来の売りやすさも変わる可能性があります。

つまり中古マンション投資の出口戦略は、

「自分の部屋をどう売るか」だけでなく、「建物全体がどう年を重ねるか」を見ること

でもあります。

マンションの「最後」は購入した瞬間から始まっている

マンションを買ったとき、

建て替えのことまで考える人は多くありません。

しかし、

毎月の修繕積立金。

長期修繕計画。

管理組合。

大規模修繕。

設備更新。

こうした日々の管理の積み重ねが、30年後、40年後の選択肢につながります。

きちんと管理していれば、

修繕して使い続ける。

大規模に更新する。

建て替える。

売却する。

といった複数の選択肢を検討しやすくなります。

一方、長年問題を放置してしまえば、選択肢が狭まる可能性があります。

だから、

マンションの「最後」を考えることは、現在の管理を考えることでもある

のです。

まとめ

「マンションは管理で選ぶ」第6回は、老朽化したマンションの建て替えと再生について見てきました。

マンションは、

「築50年になったら自動的に建て替える」

というものではありません。

修繕を続ける。

大規模に更新する。

建て替える。

建物と敷地を売却する。

取り壊して土地を売却する。

建物だけを取り壊す。

など、状況に応じてさまざまな選択肢があります。

特に2026年4月に施行された改正マンション関係法では、建物更新や売却、取壊しなど、マンション再生の選択肢が拡充されました。

今後、築40年、50年を超えるマンションが増えていけば、

「古いマンションをどう終わらせるか」ではなく、「どう再生するか」

という視点がますます重要になるでしょう。

そして覚えておきたいのは、

建て替えは建物だけの問題ではないということです。

所有者の合意。

費用。

仮住まい。

土地の条件。

事業性。

高齢化。

相続。

さまざまな要素が絡みます。

だからこそ、将来の再生を可能にする土台となるのが、

日頃のマンション管理

です。

修繕積立金を確保する。

長期修繕計画を更新する。

総会を開く。

所有者情報を管理する。

必要な修繕を行う。

こうした一見地味な作業が、数十年後に大きな意味を持ちます。

中古マンションを選ぶときも、

「今きれいだから」

だけではなく、

「このマンションは20年後、30年後にも将来について話し合える状態だろうか」

という視点を持つことが大切です。

次回はいよいよ最終回です。

第7回は、

「資産価値が落ちにくいマンションはどこを見る?中古購入前の管理チェック10項目」

をテーマにします。

これまで取り上げた、

管理組合。

修繕積立金。

長期修繕計画。

大規模修繕。

築年数。

耐震性。

設備更新。

総会議事録。

そして将来の再生。

これらをすべてまとめて、

中古マンションを内見・購入するときに何を確認すればよいのか

を実践的なチェックリストにして整理します。

引用元・参考元

  • 国土交通省「マンションの再生等について」
  • 国土交通省「マンションの再生等の更なる円滑化に取り組みます!」
  • 国土交通省「改正マンション関係法の施行に伴う関係政令」
  • 国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト」
  • 国土交通省「令和7年 マンション標準管理規約の見直し」
  • 法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」

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