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【世界の不動産投資 第2回】ロンドンの不動産はなぜ世界中から買われる?国際マネーが集まる住宅市場

2026/09/10
連載

ニューヨーク、東京、シンガポールなどと並び、世界を代表する国際都市として知られるロンドン。

ロンドンの住宅市場には、イギリス国内だけでなく、長年にわたり世界各国の投資家から資金が集まってきました。

しかし、ロンドンの不動産は決して「安く買って高い利回りを狙う市場」ではありません。むしろ住宅価格は高く、取得時の税負担も大きく、近年は賃貸住宅をめぐる制度も変化しています。

それでもなぜ、世界の投資家はロンドンを見るのでしょうか。

「世界の不動産投資」第2回は、ロンドンの住宅市場から、国際都市に不動産マネーが集まる理由と、その裏側にあるリスクを考えます。

ロンドンの住宅価格は日本円で考えてもかなり高い

まず現在の住宅価格を見てみましょう。

英国政府が公表するUK House Price Indexによると、2026年6月のロンドンの住宅平均価格は約55万4,000ポンドでした。前年同月比では2.5%下落しています。

物件タイプ別に見ると、戸建ては約116万2,000ポンド、テラスハウスは約64万1,000ポンド、フラット・メゾネットでも約43万1,000ポンドです。

つまりロンドンは、「海外だから安く買える市場」ではありません。

むしろ世界でも住宅取得コストが高い都市の一つとして考える必要があります。

ここで興味深いのは、2026年6月時点では平均価格が前年を下回っていることです。

不動産投資では「世界的な都市だから価格は常に上がる」と考えがちですが、ロンドンであっても市場には調整局面があります。

有名都市であることと、購入した物件の価格が必ず上昇することは別の話なのです。

それでもロンドンが世界の投資家から注目されてきた理由

ロンドン不動産の特徴を考えるうえで重要なのが、「住む人」だけではなく「世界から資金が入る都市」であることです。

ロンドンは金融、ビジネス、教育、観光など複数の機能を持つ国際都市です。

世界中から企業や人が集まり、住宅には実需だけでなく投資需要も生まれてきました。

さらにイギリスでは、外国人が住宅を所有すること自体を一律に禁止する制度はありません。英国議会下院図書館も、外国人による住宅所有そのものには一般的な禁止措置はなく、購入時や賃貸収入などに税制上のルールが存在すると整理しています。

つまりロンドンは、海外投資家が市場へ参加できる都市だったことも、国際マネーが集まってきた背景の一つです。

ただし現在は、外国人だから何の制約もなく同じ条件で買える、というわけではありません。

海外投資家には「2%上乗せ」の税負担がある

イングランドや北アイルランドで住宅を購入すると、Stamp Duty Land Tax、いわゆるSDLTと呼ばれる印紙土地税がかかります。

さらに一定の条件で非居住者に該当する購入者には、通常の税率に2%ポイントの上乗せがあります。

そして、すでに住宅を所有している人が追加で住宅を購入する場合には、原則として通常税率に5%ポイントの追加税率が適用されます。

つまり条件によっては、

「投資用の2軒目」

かつ

「英国非居住者」

ということで、複数の上乗せが重なる可能性があります。

2025年4月以降の税率では、追加住宅かつ一定の非居住者の場合、最初の12万5,000ポンド部分でも7%、25万ポンド超から92万5,000ポンドまでの部分では12%など、高い税率が設定されています。

これは日本の投資家がロンドンを見る際、かなり重要なポイントです。

物件価格だけを比較して、

「家賃はいくら取れるか」

「表面利回りは何%か」

と考えるだけでは不十分です。

購入時にいくら税金がかかるかまで含めて投資額を考える必要があります。

ロンドンは家賃も高い

住宅価格だけではありません。

ロンドンは賃料も非常に高い都市です。

英国国家統計局(ONS)によると、2026年6月のロンドンの民間賃貸住宅の平均月額家賃は2,302ポンドでした。イングランドの地域別では最も高い水準です。

さらにロンドンのケンジントン・アンド・チェルシーでは、平均家賃が月3,596ポンドに達しています。

ここだけを見ると、

「家賃がこれほど高いなら、投資として魅力的なのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、住宅価格も高額です。

そのため「家賃が高い=高利回り」とは限りません。

これは世界の不動産投資を見るうえで重要な視点です。

不動産投資では、家賃の絶対額よりも、

購入価格に対して、どれだけの賃料収入が得られるか

を見る必要があります。

東京でも、家賃20万円の物件だから必ず投資効率が良いとは限らないのと同じです。

「値上がり益」を期待する投資家もいる

ロンドンのような国際都市では、賃料収入だけでなく、将来の価格上昇を期待して不動産を保有する考え方もあります。

一般に不動産投資の収益には、

家賃から得るインカムゲイン。

売却時の値上がりから得るキャピタルゲイン。

という二つの考え方があります。

ただしロンドンの2026年6月の住宅平均価格は前年比2.5%下落しており、フラット・メゾネットでは同4.7%下落しています。

世界的な都市であっても、毎年価格が上昇するわけではありません。

金利。

景気。

住宅供給。

税制。

金融政策。

海外資金の動き。

によって市場環境は変化します。

ロンドンだから値下がりしない、という考え方は危険です。

「世界から買える市場」が透明化を求められる時代へ

海外資金が不動産へ流入することについては、メリットだけでなくさまざまな議論があります。

外国資本によって住宅開発が進むという見方がある一方、住宅需要が強い地域では価格を押し上げる可能性や、投資目的で購入された住宅が十分に利用されない「Buy to Leave」と呼ばれる問題も議論されてきました。

こうした背景もあり、英国では不動産所有の透明性を高める制度が整備されています。

2022年には「Register of Overseas Entities」が始まり、英国の土地・不動産を取得・所有する一定の海外法人などには、Companies Houseへの登録や実質的支配者などの情報開示が求められています。

つまり現在の英国不動産市場は、

「世界中から自由に資金が入ってくる市場」

というだけではなく、

誰が不動産を所有しているのかを透明化しようとする市場

へ変化しています。

大家と借主のルールも変わっている

不動産投資で忘れてはいけないのが、賃貸制度です。

イングランドでは2025年10月にRenters’ Rights Act 2025が成立しました。

この法律では、従来のSection 21、いわゆる理由を示さない退去通知の仕組みを廃止するなど、民間賃貸住宅の借主保護を強化する大きな改革が進められています。

政府によると、対象となるイングランドの民間賃貸住宅では約1,100万人の借主と約230万人の大家が関係する大規模な制度改革です。

ここから分かるのは、不動産投資は建物を買った瞬間に終わるものではないということです。

家主には、

物件の管理。

修繕。

入居者対応。

賃貸契約。

法令への対応。

といった責任があります。

海外不動産の場合、日本とは違う法律を理解する必要があるため、さらに難易度は上がります。

ロンドンの「フリーホールド」と「リースホールド」

イギリスの不動産を考える際、日本人にとって分かりにくいのが所有権の仕組みです。

代表的なのが、

Freehold(フリーホールド)

Leasehold(リースホールド)

です。

フリーホールドは土地と建物を継続的に所有する権利に近い一方、リースホールドでは一定期間、土地や建物を利用する権利を取得します。

ロンドンのフラットでは、リースホールドの物件も珍しくありません。

その場合、

残存期間は何年か。

サービスチャージはいくらか。

建物の管理状態はどうか。

大規模修繕の費用負担はどうなるか。

といった点を見る必要があります。

これは、日本のマンションで管理費や修繕積立金を確認するのと似ていますが、制度そのものは同じではありません。

海外不動産では、価格や立地だけでなく、**「何の権利を買っているのか」**を理解することが非常に重要です。

日本人がロンドン不動産へ投資するなら「為替」も無視できない

日本から海外不動産へ投資するとき、日本国内の不動産にはない大きな要素があります。

それが為替です。

ロンドンの物件はポンドで取引されます。

たとえば物件価格が変わらなかったとしても、

購入時より円安になった場合。

購入時より円高になった場合。

では、日本円に換算した資産価値が変わります。

家賃についても同じです。

ポンドで家賃を受け取り、日本円に換える場合、為替の影響を受けます。

つまり海外不動産投資では、

不動産価格。

家賃。

金利。

税金。

に加えて、

為替変動というもう一つのリスク

を考える必要があります。

東京とロンドンは似ているようで違う

東京とロンドンには共通点があります。

どちらも世界有数の大都市です。

企業が集まる。

鉄道網が発達している。

人口が集中している。

海外から人が訪れる。

住宅需要が高いエリアがある。

という点は似ています。

しかし、不動産市場の仕組みを見ると違いもあります。

外国人購入者への税制。

土地・建物の権利関係。

賃貸住宅制度。

住宅ローン。

建物の築年数に対する考え方。

海外資本の存在感。

これらは日本と同じではありません。

だからこそ世界の不動産市場を見ることには意味があります。

東京の住宅価格が高いのか安いのか。

日本の賃貸制度は特殊なのか。

外国人が日本の不動産を買いやすいという話は本当なのか。

こうしたことは、日本だけを見ているとなかなか分かりません。

「世界都市だから安心」ではなく需要の中身を見る

ロンドンの不動産投資で最も重要なのは、

「ロンドンだから価値がある」だけで判断しないこと

でしょう。

同じロンドンでも、

金融街に通勤する人が住むエリア。

学生需要が強いエリア。

富裕層が選ぶエリア。

郊外のファミリー向け住宅地。

再開発が進んでいる地区。

では需要が違います。

海外投資では都市名のブランドが先行しがちですが、本当に重要なのは、

「誰がこの物件を借りるのか」

「誰が将来この物件を買うのか」

という具体的な需要です。

これは第1回のアメリカでも見た考え方と同じです。

国より都市。

都市よりエリア。

そしてエリアより物件。

不動産市場を細かく見ていく必要があります。

まとめ

世界の不動産投資第2回は、ロンドンを取り上げました。

2026年6月のロンドンの住宅平均価格は約55万4,000ポンド。一方、民間賃貸住宅の平均家賃は同月に2,302ポンドとなっており、住宅価格も家賃も高い都市です。

世界中の投資家がロンドンを見る背景には、国際都市としての存在感や海外投資家が市場へ参加できる制度があります。

しかし現在は、外国人投資家に対する取得時の税負担や、不動産所有者の透明性を高める制度、賃貸住宅に関する規制なども強化されています。

つまり、

「世界中の富裕層が買っているから安心」

という市場ではありません。

不動産価格。

家賃。

税金。

所有権。

為替。

管理費。

賃貸ルール。

そして将来の売却相手。

これらを総合的に考える必要があります。

世界的な都市であっても、不動産投資の基本は変わりません。

その物件を「使いたい人」「借りたい人」「将来買いたい人」がいるか。

ロンドンを見ると、不動産の価値は単に建物そのものだけでなく、都市が持つ経済力や国際性、制度まで含めて形成されていることが分かります。

次回、第3回はシンガポールです。

ロンドンが海外投資家にも比較的開かれた不動産市場であるのに対し、シンガポールでは住宅価格の過熱を抑えるため、外国人による住宅購入に非常に大きな税負担を課しています。

第3回は、

「シンガポールはなぜ不動産投資に厳しい?外国人購入と高額な税金の理由」

をテーマに、政府が住宅市場へ積極的に介入する国の不動産投資事情を見ていきます。

引用元・参考元

  • UK Government「UK House Price Index for June 2026」
  • Office for National Statistics「Private rent and house prices, UK: July 2026」
  • HM Revenue & Customs「Rates of Stamp Duty Land Tax for non-UK residents」
  • GOV.UK「Stamp Duty Land Tax: Residential property rates」
  • UK Government「Budget 2025: rates and allowances」
  • Companies House「Register an overseas entity and its beneficial owners」
  • UK Parliament House of Commons Library「Foreign Investment in UK Residential Property」
  • Ministry of Housing, Communities and Local Government「Guide to the Renters’ Rights Act」

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