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【連載コラム:地震から住まいと暮らしを守る 第7回】地震に強い物件・エリアはどう選ぶ?地盤・ハザードマップ・建物の確認方法

2026/08/28
連載

地震に備えた物件選びというと、「新耐震のマンションを選べばよい」「タワーマンションより低層住宅の方が安全」「湾岸エリアは避けた方がよい」といった単純な情報を目にすることがあります。

しかし実際には、地震リスクは一つではありません。

建物倒壊、液状化、地震火災、津波、斜面崩壊、停電、断水、道路閉塞など、場所や建物によって想定される被害は異なります。

そのため重要なのは、「地震に強い街」を一つのランキングで探すことではなく、自分が検討している物件にはどんなリスクがあり、それに対してどんな備えがあるのかを確認することです。

連載最終回では、物件を借りる人・購入する人の両方に向けて、地盤、ハザードマップ、耐震性、周辺環境など、地震リスクを考えた住まい選びのポイントを整理します。

「地震に強いエリア」は一つの条件では決められない

インターネットで「東京 地震に強い街」と検索すると、さまざまなランキングが見つかります。

しかし、こうしたランキングを見るときには、何を基準に「強い」としているのかを確認する必要があります。

例えば、

建物が倒壊しにくい。

火災が広がりにくい。

液状化しにくい。

津波の心配が少ない。

避難しやすい。

道路が広い。

それぞれ意味が違います。

東京都は「地震に関する地域危険度測定調査」で、都内の市街化区域5,192町丁目について、建物倒壊危険度、火災危険度、総合危険度などを町丁目単位で相対的に評価しています。(東京メトロファンエンカ)

つまり同じ区内でも、町丁目によってリスクは異なります。

「○○区だから安全」という大きなくくりだけで物件を判断するのは避けたいところです。

まず確認したいのは「どのくらい揺れやすい場所なのか」

地震対策では、まずその場所でどの程度の揺れが想定されるのかを確認する方法があります。

防災科学技術研究所が運営する「J-SHIS 地震ハザードステーション」では、全国地震動予測地図などを確認できます。各地点について、一定期間内に特定の強さ以上の揺れに見舞われる確率などを見ることができます。(J-SHIS)

ただし、確率の数字だけを見て、

「30%だから危険」

「10%だから安全」

と判断するものではありません。

J-SHISでも、地震そのものの発生確率と、ある地点で一定以上の強い揺れが起こる確率は異なる概念として説明されています。(J-SHIS)

重要なのは、「地震が起きるか起きないか」を当てることではなく、

その地域では強い揺れが起きる可能性をどの程度想定しておくべきか

を知るための資料として活用することです。

地震リスクでは「地盤」を見る

建物の耐震性能が高くても、その土地の地盤によって揺れ方は変わります。

一般的に、軟弱な地盤では地震の揺れが増幅されることがあります。

また、埋立地や低地などでは液状化の可能性が問題になる地域もあります。

そこで確認したいのが土地の成り立ちです。

昔から陸地だったのか。

川や沼だった場所なのか。

埋め立てられた土地なのか。

盛土されているのか。

こうした情報は、地震時のリスクを考える材料になります。

ただし、

「埋立地だから危険」「台地だから絶対安全」

と単純に決めることはできません。

現在の地盤改良や建物基礎なども関係するためです。

物件選びでは、土地の性質と建物側の対策をセットで見ることが重要です。

液状化はどこで確認できる?

液状化が気になる場合には、国土交通省や自治体が公開している液状化関連情報を確認できます。

国土交通省は、地形区分から液状化の発生傾向を相対的に示す図を公開しています。これは特定の地震による被害を予測するものではなく、土地の成り立ちなどから液状化しやすさの傾向を確認するための資料です。(国土交通省)

東京都でも「東京の液状化予測図」を公開しており、防災ガイドブックでは2023年度改訂版が案内されています。ここでも、特定の地震による被害想定ではなく、液状化発生可能性の目安として利用するものとされています。(防災東京)

つまり地図に色が付いていれば「住めない」という意味ではありません。

液状化の可能性があるなら、建物がどのような基礎・地盤対策をしているかを確認する

という次の行動につなげることが重要です。

ハザードマップは複数重ねて見る

物件選びでは、ハザードマップを一つだけ見るのではなく、複数の災害を確認することをおすすめします。

例えば、

洪水。

高潮。

津波。

土砂災害。

液状化。

地震火災。

などです。

国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」では、さまざまな災害リスクを地図上で確認できます。また、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、取引価格や都市計画情報に加えて防災情報なども確認できます。(国土交通省レインフォースライブラリ)

このように、

物件価格を見る地図と、防災リスクを見る地図を別々にしない

ことが、これからの不動産選びでは重要になっています。

水害ハザードマップは重要事項説明の対象にもなっている

不動産取引でも、災害リスクへの意識は高まっています。

国土交通省は2020年、不動産取引時の重要事項説明について、水防法に基づく水害ハザードマップに対象物件の所在地を示して説明することを義務化しました。(国土交通省)

これは水害に関する制度ですが、

災害リスクが住宅購入の重要な判断材料になっている

ことを示しています。

ただし、重要事項説明を受ければすべての災害リスクが自動的に分かるわけではありません。

地震、液状化、火災などについては、自分でも自治体や国の防災情報を確認する意識が大切です。

東京では「火災リスク」も忘れない

東京で地震を考えるとき、建物倒壊と同じくらい重要なのが火災です。

特に木造住宅が密集している地域では、一つの建物から出た火災が周囲へ広がる可能性があります。

東京都の地域危険度測定調査では、火災危険度も町丁目単位で公表されています。さらに道路状況などを反映した「災害時活動困難係数」を用いて総合危険度を算出しています。(東京メトロファンエンカ)

つまり、

「自分の家が耐震性の高いマンションだから大丈夫」

とは限りません。

周囲で大規模火災が発生した場合、避難や消防活動に影響する可能性があります。

物件周辺を歩く際には、

道路幅。

木造住宅の密集度。

広い公園や避難場所。

などを見ることも、防災という意味では重要です。

「細い道しかない住宅街」も確認したい

普段は静かで魅力的に見える細い路地も、大規模災害時には別の意味を持つことがあります。

建物が倒壊して道路をふさぐ。

電柱が倒れる。

火災で通れなくなる。

救急車や消防車が入りにくい。

といった問題です。

東京都が総合危険度の評価に「災害時活動困難係数」を加えているのも、災害時に道路などを使って活動しやすいかどうかが重要だからです。(東京メトロファンエンカ)

物件の内見では、駅から物件までの最短ルートだけでなく、

「この道路が使えなくなったら別の道から避難できるか」

という視点も持っておくとよいでしょう。

避難所までの距離も確認しておく

住宅を決める前に、指定避難所や避難場所の位置も確認しておきましょう。

ただし、

「避難所が近ければ安全」

というだけではありません。

地震が発生しても、自宅が安全なら在宅避難が可能なケースがあります。

一方、

火災。

津波。

土砂災害。

建物損傷。

などによって自宅にとどまれない場合には、避難が必要です。

そのため、

避難場所はどこか。

どの道で行けるか。

夜間でも歩けるか。

橋や狭い道を通らなければならないか。

まで確認しておくと、より実用的です。

建物側では「新耐震」だけで終わらない

ここまで地域の話をしてきましたが、もちろん建物そのものも重要です。

前回までの連載で紹介したように、まず確認したいのは耐震基準です。

1981年6月1日以降の新耐震基準か。

旧耐震なら耐震診断をしているか。

耐震改修をしているか。

木造住宅なら2000年前後の基準も確認する。

さらに、

耐震。

制震。

免震。

といった構造上の地震対策も見ます。

大切なのは、

「地盤が良ければ建物は何でもいい」でも、「免震マンションなら場所はどこでもいい」でもない

ということです。

エリアと建物の両方を確認します。

マンションなら「被災後の生活」まで確認する

マンション選びでは、建物が倒壊しないことだけを考えるのでは不十分です。

前回までの記事で紹介したように、

エレベーター停止。

断水。

停電。

排水管の損傷。

などによって、建物は無事でも暮らしにくくなる場合があります。

特に高層マンションを検討するなら、

非常用発電設備。

給水設備。

防災備蓄。

非常階段。

エレベーターの地震対策。

管理組合の防災計画。

なども確認しましょう。

「地震に強いマンション」とは、単に構造が丈夫なマンションではなく、

地震後も住民が生活を継続しやすいマンション

と考えることもできます。

中古マンションなら修繕積立金も見る

地震後に建物が損傷した場合、修繕には費用がかかります。

マンションなら共用部分の修理費用は管理組合が中心となって対応します。

そのため、

修繕積立金が十分か。

長期修繕計画があるか。

これまで大規模修繕を適切に行っているか。

なども重要です。

新耐震・免震という言葉だけを確認しても、管理が不十分なら長期的な安心にはつながりません。

物件購入では、

耐震性能+管理状態+資金面

まで見ることが重要です。

戸建てなら「家だけでなく擁壁」も見る

戸建て住宅では、建物以外にも確認したいものがあります。

例えば擁壁です。

高低差のある住宅地では、土地を支えるために擁壁が使われている場合があります。

古い擁壁に大きなひび割れや膨らみがある場合、地震時の安全性について専門家の確認が必要になることがあります。

また盛土や斜面に近い土地では、地震だけでなく大雨による土砂災害なども合わせて考える必要があります。

戸建ての場合、

建物+土地+擁壁+周囲の地形

までが一つの不動産だと考えた方がよいでしょう。

「地震に強い街ランキング」をどう使う?

ランキングそのものが悪いわけではありません。

物件探しの入口として、

「この地域は火災リスクが低そう」

「このエリアは地盤が良いと言われている」

と知るきっかけにはなります。

しかし、それだけで物件を決めないことが重要です。

東京都の地域危険度測定調査は、町丁目ごとの相対評価です。特定の首都直下地震が起きた場合の被害予測とは別のものです。(防災東京)

また東京都は、首都直下地震などを想定した震度分布や液状化危険度などを確認できる「東京被害想定デジタルマップ」も公開しています。(防災東京)

つまり一つのランキングだけではなく、

複数の公的データを重ねて見る

ことが大切です。

物件探しで使える「地震対策チェックリスト」

地震リスクを意識して物件を探すなら、少なくとも次のような項目を確認してみましょう。

  • 建築年月と適用された耐震基準
  • 耐震診断・耐震改修の有無
  • 耐震・制震・免震の方式
  • 地盤や土地の成り立ち
  • 液状化リスク
  • 建物倒壊・火災の地域危険度
  • 洪水・津波・土砂災害など他のハザード
  • 避難所・避難場所までの経路
  • 周辺道路の幅や代替ルート
  • マンションなら非常用電源・給水・防災備蓄
  • 長期修繕計画と修繕積立金
  • 戸建てなら基礎・擁壁・地形

すべてが理想的な物件を探すのは難しいでしょう。

しかし、自分が何を許容でき、何を重視するのかを整理する材料になります。

「ハザードマップで色が付いている=買ってはいけない」ではない

このシリーズで何度も触れてきましたが、ここは特に重要です。

ハザードマップは、

「安全な場所」と「危険な場所」を二色に分ける地図ではありません。

ある災害について、どの程度のリスクが想定されているかを知るための資料です。

例えば液状化リスクがある場所でも、建物が適切な基礎対策を取っている場合があります。

洪水リスクのある地域でも、高層階を選び、マンション側が防災対策を行っているケースがあります。

反対に、ハザードマップで大きな色が付いていない地域でも、地震時の火災や道路閉塞など別のリスクが存在する可能性があります。

重要なのは、

色が付いているかではなく、そのリスクにどう備えているか

を見ることです。

地震に強い物件でも「絶対安全」はない

どれだけ新しいマンションでも、地震被害を完全にゼロにすることはできません。

自然災害には想定を超えるケースがあります。

だからこそ、物件選びでは、

「ここなら絶対安全」

という物件を探すより、

何が起こり得るかを知り、被害を小さくする方法を考える

方が現実的です。

これは投資用不動産でも同じです。

物件価格や利回りだけでなく、

地震保険。

修繕資金。

地域リスク。

建物管理。

などを確認することで、災害が起きた場合の影響を考えることができます。

まとめ

地震リスクを考えた物件選びでは、

「地震に強い街はどこ?」

という問いだけでは十分ではありません。

必要なのは、

エリア+土地+建物+管理+備え

をまとめて見ることです。

東京都では町丁目単位で、建物倒壊危険度、火災危険度、総合危険度を確認できます。(東京メトロファンエンカ)

全国の地震動については、防災科学技術研究所のJ-SHISで将来の揺れに関する予測情報を確認できます。(J-SHIS)

液状化については国土交通省や自治体の液状化関連マップ、洪水・津波・土砂災害などはハザードマップポータルサイトなどを活用できます。(国土交通省)

そして建物については、

新耐震・旧耐震。

耐震診断。

耐震改修。

耐震・制震・免震。

マンション管理。

非常用電源。

防災備蓄。

などを確認します。

地震が起きない場所を探すことはできません。

だからこそ、

「どんな地震リスクがあるのか」
「その物件はどんな対策をしているのか」
「被災後も生活を続けられるのか」

を一つずつ確認することが重要です。

今回で【連載コラム:地震から住まいと暮らしを守る】全7回は終了です。

第1回では「地震が起きた直後の行動」。

第2回では「地震に強いマンション・住宅の見分け方」。

第3回では「旧耐震・新耐震・耐震等級」。

第4回では「マンションの階数と地震」。

第5回では「水・携帯トイレ・バッテリーなどの防災グッズ」。

第6回では「地震後に家へ住み続けてよいか」。

そして今回、第7回では「地震リスクを考えた物件選び」を見てきました。

地震対策というと、非常食や防災バッグだけを想像しがちです。

しかし本当の意味で住まいを守るためには、

地震が起きる前の物件選びから、発生直後の行動、被災後の生活再建までを一つにつなげて考えること

が大切です。

住まいは毎日の生活を支える場所です。

だからこそ家賃や価格、間取り、駅距離だけでなく、**「災害が起きたとき、この家でどう暮らすのか」**という視点も、これからの住まい選びに加えておきたいところです。

引用元・参考元

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