マンションを選ぶとき、「地震に強いのは何階なのか」と気になる人は多いでしょう。
1階なら揺れが小さそうに感じる一方で、高層階は眺望や日当たりに魅力があります。逆に、タワーマンションの高層階では「大地震のときに大きく揺れるのでは」と不安に感じる人もいます。
結論からいえば、「○階なら地震に強い」と単純に決めることはできません。
建物が倒壊するかどうかは、階数だけでなく、耐震基準、構造、設計、地盤、免震・制震設備など多くの条件に左右されます。
その一方で、地震が発生したときの「揺れ方」や「被災後の暮らしやすさ」は、住んでいる階によって大きく変わる可能性があります。
今回は、マンションの低層階・中層階・高層階で地震時に何が違うのか、長周期地震動、家具転倒、エレベーター停止、断水なども含めて詳しく解説します。
「低い階ほど地震に強い」は本当?
地震について考えると、
「高い場所ほど揺れそうだから、1階や2階の方が安全なのでは?」
と思うかもしれません。
確かに、高層建物では上層階ほど揺れが大きくなるケースがあります。
特に長周期地震動では、気象庁も高層階の方が低層階より大きく揺れる傾向があると説明しています。 (気象庁)
しかし、これは「低層階の方が建物として必ず地震に強い」という意味ではありません。
マンション全体の耐震性は、建物全体の構造設計によって決まります。
同じ建物の中で、
「1階は安全だけれど20階は構造的に危険」
という単純な考え方ではありません。
重要なのは、
建物そのものの耐震性能と、各階での揺れ方や生活リスクを分けて考えること
です。
高層階で注意したい「長周期地震動」
高層マンションで特に知っておきたいのが、長周期地震動です。
長周期地震動とは、大きな地震で発生する、ゆっくりとした周期の長い揺れのことです。
気象庁によると、長周期地震動は遠くまで伝わりやすく、高層ビルでは大きく長時間揺れ続けることがあります。 (気象庁データ)
高い建物には、それぞれ「揺れやすい周期」があります。
建物の高さが高くなるほど、一般的に揺れの周期も長くなります。
地面の揺れの周期と建物が揺れやすい周期が近づくと、建物の揺れが大きくなる場合があります。 (気象庁)
つまり震源から離れた場所でも、高層マンションではゆっくりとした大きな揺れを感じることがあります。
高層階では「家具が倒れる」だけではない
長周期地震動による高層階の揺れで注意したいのは、家具の転倒です。
気象庁は、高層ビルで大きな長周期地震動が発生すると、家具類が倒れたり落下したりするだけでなく、大きく移動する危険もあるとしています。 (気象庁データ)
例えば、
冷蔵庫。
本棚。
テレビ。
食器棚。
キャスター付き家具。
などです。
通常の地震対策では「倒れないよう固定する」ことが中心になりますが、高層階では家具そのものが床の上を移動することも想定する必要があります。
そのため家具固定だけでなく、
キャスターをロックする
家具を壁際に配置する
寝室に大型家具を置かない
避難経路に家具を置かない
といった対策も重要です。
高層階は揺れが「長く感じる」こともある
高層マンションの地震では、「大きい揺れ」だけでなく「長い揺れ」も問題になります。
東京都は、概ね10階以上の高層階では、大きな地震の際に揺れが数分続くことがあると案内しています。 (防災東京)
ゆっくりとした揺れが長く続くと、体調を崩したり、不安を感じたりする人もいます。
特に地震直後は余震が続く場合もあります。
高層階を選ぶなら、
「地震でどれくらい揺れるか」だけでなく「長く揺れ続ける環境を受け入れられるか」
という視点も必要です。
では低層階なら安心なのか
低層階は高層階より揺れが小さく感じられるケースがあります。
またエレベーターが停止しても、階段で移動しやすいというメリットがあります。
しかし、低層階にも別の注意点があります。
例えば地震によって周辺で火災が発生した場合、道路や近隣建物の状況の影響を受けやすいことがあります。
また地域によっては、
洪水。
津波。
高潮。
内水氾濫。
など、地震とは別の災害リスクも考える必要があります。
つまり、
「地震だけを考えると低層階」「水害まで考えると高層階」
というように、災害の種類によって評価が変わる場合があります。
マンション選びでは地震だけでなく、ハザードマップも合わせて見ることが重要です。
中層階なら一番安全?
では、高層でも低層でもない中層階なら安全なのでしょうか。
これも単純には言えません。
中層階には、
高層階ほどエレベーター停止時の階段移動が大変ではない。
低層階より浸水被害を受けにくい可能性がある。
といったメリットが考えられます。
しかし、建物や地域によって条件は異なります。
「10階ならちょうどいい」
「5階なら安全」
という絶対的な基準はありません。
重要なのは、
どの災害リスクを重視するか
です。
地震後に最も困るのは「エレベーター停止」かもしれない
高層マンションで地震が起きたとき、建物そのものが大きく損傷しなくても生活が難しくなる原因の一つが、エレベーター停止です。
大きな地震では、安全装置が作動してエレベーターが停止することがあります。
さらに点検が必要になれば、復旧まで時間がかかる場合があります。
内閣府の首都直下地震に関する資料でも、超高層マンションでは停電・断水とエレベーター停止が重なることで、いわゆる「高層難民」が多数発生する可能性が指摘されています。 (防災情報ポータル)
30階に住んでいる場合、エレベーターが止まれば階段で移動する必要があります。
外へ出るだけでも大変ですが、さらに問題になるのが、
水や食料を上階まで運ぶこと
です。
停電すると「断水」も起こる可能性がある
マンションの水道は、蛇口まで自然に水が届いているとは限りません。
高層マンションでは、給水ポンプなどを使って上層階へ水を送っているケースがあります。
内閣府の2025年の首都直下地震被害想定でも、高層マンションでは停電によって高層階への給水に必要なポンプが停止し、断水する可能性が指摘されています。 (防災情報ポータル)
つまり、
停電
↓
エレベーター停止
↓
給水ポンプ停止
↓
断水
というように、複数の問題が連鎖する可能性があります。
建物が倒壊していなくても、生活そのものが難しくなるのです。
マンションでは地震直後にトイレを流さない方がよい場合も
断水すると、まず困るのがトイレです。
しかし水が出るからといって、地震直後にすぐトイレを流してよいとは限りません。
東京都はマンション防災について、地震によって排水管が損傷していることに気づかずトイレを使用すると、下の階で汚水があふれるおそれがあるとして、排水設備の安全が確認されるまでは携帯トイレを使うことを案内しています。 (防災東京)
これは非常に重要です。
地震対策というと、
水。
食料。
懐中電灯。
モバイルバッテリー。
ばかりに目が向きます。
しかしマンションでは、
「トイレをどうするか」
も非常に重要な問題です。
この点は第5回の防災グッズ編で詳しく取り上げます。
低層階は階段移動がしやすい
低層階の大きなメリットの一つが、エレベーター停止時の移動です。
2階や3階なら、健康な人であれば階段移動は比較的現実的でしょう。
高層階と比べると、
買い物。
給水。
外出。
避難。
などの負担を抑えやすくなります。
東京都の防災資料でも、地震後に停電してエレベーターが停止すると、居住階までの上り下りが困難になり、在宅避難が難しくなる場合があるとされています。 (防災東京)
そのため高齢者、小さな子どもがいる家庭、足腰に不安がある人などは、物件選びで階数を考える意味があります。
高層階なら備蓄量を多めに考える
高層階に住む場合、災害時の備蓄は特に重要です。
エレベーターが停止すると、水や食料を簡単に買いに行けない可能性があります。
そのため、
飲料水。
非常食。
携帯トイレ。
モバイルバッテリー。
ライト。
カセットコンロ。
衛生用品。
常備薬。
などを自宅に備えておく必要があります。
特に水は重いものです。
2リットルのペットボトル6本なら、それだけで約12kgあります。
これを20階、30階まで階段で運ぶことを考えると、
「地震が起きてから買う」のではなく、平時から備える
意味が分かります。
高層階ではモバイルバッテリーの重要度も高い
地震直後は、スマートフォンが重要な情報源になります。
家族との連絡。
災害情報。
交通情報。
避難場所。
地図。
自治体からの情報。
など、多くをスマートフォンに頼っています。
しかし停電が長引けば充電できません。
高層マンションではエレベーター停止によって外出自体が大変になる可能性があるため、
モバイルバッテリーやポータブル電源
など、電源を確保する備えも重要になります。
これも第5回で詳しく紹介します。
「免震タワマンなら高層階でも大丈夫」?
タワーマンションを探していると、
「免震構造だから安心」
という説明を見ることがあります。
免震構造は、建物と地盤の間などに免震装置を設け、地震の揺れを建物へ伝わりにくくする仕組みです。
大きなメリットがありますが、
免震だから何階でも揺れない
という意味ではありません。
地震の種類や建物によって揺れ方は異なります。
また、マンション生活では、
エレベーター。
水道。
電気。
通信。
など建物構造以外の問題もあります。
物件選びでは「免震」という言葉だけでなく、
免震+非常用電源+給水+防災備蓄+エレベーター対策
まで見ることが重要です。
内見時に「階数以外」で確認したいこと
マンションを借りたり購入したりするときは、階数だけを比較するのではなく、次のようなポイントも確認したいところです。
まず、
非常階段の位置
です。
普段エレベーターしか使わないと、非常階段がどこにあるか知らないことがあります。
次に、
非常用電源
です。
非常用発電機がある場合でも、すべての設備へ電力が供給されるとは限りません。
どの設備に使用されるのかを確認できるとよいでしょう。
さらに、
防災備蓄倉庫
の有無も確認します。
高層マンションでは、各家庭の備蓄だけでなく、管理組合がどの程度防災用品を準備しているかも重要です。
エレベーターは何台あるかも見ておく
高層マンションではエレベーターの台数も生活利便性に関係します。
通常時は、
「朝混雑するか」
という問題ですが、災害時には復旧のしやすさや使用制限にも関係することがあります。
もちろん台数が多ければ地震後すぐ使えるという意味ではありません。
しかし、
何台あるのか。
非常用エレベーターはあるか。
地震時管制運転装置などの対策があるか。
管理会社は災害時にどのような対応をするのか。
といったことを確認する価値はあります。
高層階でも「在宅避難」が基本になる場合がある
地震が起きたら、高層マンションからすぐ避難した方がよいと思う人もいるかもしれません。
しかし建物が安全で、火災などの危険がない場合には、自宅で生活を続ける「在宅避難」が選択肢になります。
むしろ高層階から避難所まで毎日移動するのは大きな負担です。
だからこそ、
自宅で数日間生活できる備え
が重要になります。
東京都もマンション防災について、日頃の備蓄や在宅避難への備えを呼びかけています。 (防災東京)
低層階・中層階・高層階をどう比較する?
ここまでを整理すると、それぞれの階には特徴があります。
低層階は、高層階と比較すると揺れが小さく感じられる場合があり、エレベーター停止時にも階段移動が比較的しやすいというメリットがあります。
一方で、地域によっては浸水や津波など別の災害リスクを確認する必要があります。
中層階は、階段移動と水害リスクのバランスを取りやすいケースがありますが、「中層なら安全」という基準があるわけではありません。
高層階は、眺望や日当たりなどの魅力がある一方、長周期地震動による大きな揺れ、エレベーター停止、断水など、被災後の生活負担を考える必要があります。
つまり、
どの階にもメリットと注意点があります。
「何階が一番安全?」より「地震後に暮らせるか」
マンションの階数選びで重要なのは、
「地震が起きたときに一番揺れない階を探す」ことだけではありません。
高齢者がいる。
乳幼児がいる。
車いすを使う家族がいる。
毎日薬が必要。
ペットがいる。
こうした家庭では、エレベーター停止の影響が特に大きくなります。
反対に、水害リスクが高い地域では、低層階より上層階を選ぶメリットがある場合もあります。
自分や家族の生活状況を踏まえて、
「災害後にどの階なら生活を続けやすいか」
まで考えることが重要です。
まとめ
マンションで地震に強いのは何階なのか。
この疑問に、
「○階が一番安全です」
という単純な答えはありません。
建物全体の耐震性は、耐震基準、構造、設計、地盤、免震・制震設備などによって決まります。
その一方で、住んでいる階によって地震時の揺れ方や被災後の生活は変わります。
気象庁によると、長周期地震動では高層ビルの高層階ほど大きく揺れる傾向があります。 (気象庁)
さらに高層マンションでは、停電によるエレベーター停止や給水ポンプ停止による断水が重なる可能性があります。内閣府も、こうした状況による高層階居住者の生活困難を首都直下地震の課題として挙げています。 (防災情報ポータル)
低層階には階段移動のしやすさがあります。
高層階には眺望や日当たりなど別の魅力があります。
中層階にも一定のバランスがあります。
重要なのは、
階数だけで安全性を判断しないことです。
建物の耐震性。
地盤。
ハザードマップ。
免震・制震設備。
非常用電源。
エレベーター。
給水。
防災備蓄。
そして家族構成。
こうした条件を総合的に見て、自分が災害後も暮らしを続けやすい住戸を選ぶことが大切でしょう。
そして、マンションで地震が起きたときに困るのは揺れだけではありません。
停電したらスマートフォンはどう充電するのか。
断水したらトイレはどうするのか。
エレベーターが停止したら水や食料をどう確保するのか。
次回、第5回では、**「地震の防災グッズは何が必要?」**をテーマに、水・非常食・携帯トイレ・モバイルバッテリー・ポータブル電源など、停電・断水・在宅避難に備えて本当に用意しておきたいものを詳しく紹介します。
.png)
-e1686731399507.png)


