「東京23区なら、どこに住んでも駅まで歩いて行ける」
そんなイメージを持っている人もいるかもしれません。
しかし、東京23区にも鉄道駅から距離があり、バス・自転車・車を使うことが日常生活の前提になりやすい地域があります。
今回から始まる【連載コラム:東京「陸の孤島」の住みやすさ】では、そんな「駅から遠い街」にあえて注目します。
第1回は練馬区の大泉学園町です。
大泉学園町は閑静な住宅街が広がる一方、町内に鉄道駅がなく、場所によっては大泉学園駅までかなり距離があります。
では、本当に「車がないと住めない街」なのでしょうか。
バス、自転車、買い物、家賃、駐車場、将来の大江戸線延伸計画まで含めて、大泉学園町の住みやすさを検証します。
「大泉学園駅」と「大泉学園町」は同じではない
まず最初に知っておきたいのが、大泉学園駅と大泉学園町は少し離れているということです。
西武池袋線の大泉学園駅がある住所は「練馬区東大泉」です。
一方、大泉学園町は駅の北側に広がる住宅地で、1丁目から9丁目まであります。
つまり「大泉学園町」という住所を見て、
「大泉学園駅の近くだろう」
と思って物件を探すと、想像以上に駅から離れているケースがあります。
大泉学園駅周辺そのものは、駅前に商業施設があり、西武池袋線で池袋方面へアクセスできます。LIFULL HOME’Sの2026年6月時点の調査でも、大泉学園駅周辺は「ファミリーが多い」「閑静な住宅街がある」「自転車を利用しやすい」といった特徴が挙げられています。 (LIFULL HOME’S)
しかし、大泉学園町の奥へ行けば話は変わります。
駅徒歩を重視する人にとっては、まさに東京23区内の「陸の孤島」と感じられる場所もあるのです。
なぜ大泉学園町には駅がないのか
東京の住宅地では、駅を中心として商業施設や住宅が発達してきた場所が多くあります。
ところが大泉学園町は、広い住宅地でありながら鉄道駅がありません。
実はこの「鉄道空白地域」の解消は、練馬区にとっても長年の課題です。
現在、都営大江戸線を光が丘駅から大泉町・大泉学園町方面へ延伸する計画があり、練馬区内には(仮称)土支田駅、(仮称)大泉町駅、(仮称)大泉学園町駅の3駅を整備する予定とされています。 (練馬区公式サイト)
つまり大泉学園町は、行政側から見ても鉄道アクセスの改善が課題となっている地域なのです。
現在の主役は「バス」
では、鉄道駅がない大泉学園町の住民はどう移動しているのでしょうか。
重要になるのが路線バスです。
大泉学園通りなどを中心にバス路線があり、大泉学園駅方面だけでなく、成増駅方面などへ向かう路線もあります。西武バスでは大泉学園駅~成増駅方面の路線も設定されています。 (西武バス)
そのため、
「駅まで歩いて電車に乗る」
のではなく、
「自宅→バス→駅→電車」
という移動が現実的になります。
駅徒歩生活に慣れている人には不便に感じるでしょう。
一方、最初からバス利用を前提として物件を選ぶのであれば、印象はかなり変わります。
ただし「バスがあるから大丈夫」とも言い切れない
ここは大泉学園町を検討するうえで重要なポイントです。
バス路線は永久に同じとは限りません。
実際、西武バスは2025年3月31日をもって、大泉学園町の狭い道路を走っていた「泉38」大泉学園駅北口~大泉桜高校~長久保線などを廃止しました。
西武バスは理由として、使用車両の経年化や乗務員不足、いわゆる「2024年問題」などを挙げています。 (西武バス)
これは「駅遠物件」を選ぶうえで非常に重要なポイントです。
物件情報に、
「バス停徒歩2分」
と書いてあったとしても、それだけでは十分ではありません。
どの駅へ行くのか。
朝は何本あるのか。
最終バスは何時なのか。
休日の本数はどうか。
道路渋滞の影響を受けるか。
こうしたところまで確認する必要があります。
駅から遠い住宅地では、バス停までの距離より「バスの使いやすさ」そのものが重要なのです。
自転車を使える人なら行動範囲は大きく変わる
大泉学園町で生活するなら、自転車も有力な移動手段になります。
「徒歩では遠い」と感じる距離でも、自転車なら現実的になることがあります。
大泉学園駅周辺についても、LIFULL HOME’Sの居住者アンケートでは「自転車を利用しやすい」が街の特徴の上位に入っています。 (LIFULL HOME’S)
駅まで自転車で行く。
近所のスーパーまで自転車で行く。
子どもの送り迎えに使う。
こうした生活ができる人なら、「陸の孤島」という印象はかなり弱くなるでしょう。
ただし駅前の駐輪場の確保、雨の日の移動、子どもを乗せる場合の安全性などは確認しておきたいところです。
毎日電車通勤をする人なら、
晴れの日は自転車、雨の日はバス
というように複数の交通手段を持っておく方が現実的でしょう。
「車がないと住めない」は少し言い過ぎ
では、大泉学園町は車必須なのでしょうか。
結論としては、
車がなければ生活できない地域とまでは言いにくいものの、車があることで便利さが大きく変わる地域
と考えるのが適切でしょう。
バスと自転車を使えば、車を持たずに生活することも可能です。
一方で、
週末にまとめ買いをする。
小さな子どもがいる。
高齢の家族がいる。
郊外型店舗を利用する。
雨の日にも頻繁に外出する。
といった家庭では車のメリットが大きくなります。
これは山手線沿線などの駅近住宅とはかなり異なる生活スタイルです。
駐車場代は都心部より現実的
東京で車を所有するとき、大きな問題になるのが駐車場代です。
都心では月極駐車場だけで毎月数万円かかる場所も珍しくありません。
大泉学園町では比較的抑えられています。
月極駐車場検索サイト「月極駐車場どっとこむ」の2026年8月時点の掲載データでは、大泉学園町の掲載14件の平均賃料は月額12,877円となっています。別の検索サイトでも平面駐車場の平均は1万2,400円程度とされており、おおむね1万円台前半を中心とした掲載が確認できます。 (月極駐車場)
もちろん場所や設備によって価格は異なります。
それでも、
「駅から遠い代わりに車を持ちやすい」
というのは、大泉学園町の特徴の一つでしょう。
物件によっては敷地内駐車場付きの戸建てなども選択肢になります。
駅から遠くても買い物できる?
「駅から遠い=スーパーもない」と思うかもしれません。
しかし、大泉学園町の場合は必ずしもそうではありません。
例えば大泉学園町5丁目にはマルエツ 大泉学園店、6丁目にはサミットストア 大泉学園店などがあります。
つまり、日常の買い物をすべて大泉学園駅前まで行って済ませなければならないわけではありません。
これは駅遠住宅地を見るときに重要なポイントです。
駅へのアクセスが悪いことと、日常生活が不便であることは必ずしも同じではありません。
スーパー、ドラッグストア、コンビニ、病院、学校などが自宅周辺に揃っていれば、平日は地域内で生活が完結するケースもあります。
だからこそ大泉学園町では、「駅徒歩○分」だけでは住みやすさを測りにくいのです。
家賃には「駅から遠い」という条件が反映される
駅から遠い最大のメリットは、やはり住居費です。
CHINTAIが2026年7月31日時点の掲載物件をもとに算出した大泉学園町の家賃相場では、築20年以内という条件で、
1Rが6.8万円、1LDKが10.4万円、2LDKが13.2万円、3LDKが15.6万円となっています。 (賃貸.net)
ただし、これはあくまで掲載物件から算出された相場であり、築年数や面積、物件数によって数字は変動します。
ここで注目したいのは、単に「安いか高いか」ではありません。
駅近物件と同じ予算を使えば、
より広い部屋を選べる可能性がある
という点です。
駅徒歩5分の1LDKを選ぶのか。
駅から離れた2LDKを選ぶのか。
単身者なら前者が便利かもしれません。
一方、在宅勤務が多い人や子育て世帯なら、駅距離より広さを優先する選択もあります。
「駅徒歩20分超」は本当にデメリットなのか
東京の賃貸物件探しでは、
「駅徒歩10分以内」
を検索条件に設定する人が多いでしょう。
しかし、この条件を設定した瞬間、大泉学園町の多くの物件は候補から外れてしまいます。
そこで一度考えたいのが、
自分は本当に毎日駅を使うのか
ということです。
週5日出社するなら、駅距離はかなり重要です。
しかし、
週2~3日在宅勤務。
車通勤。
自転車通勤。
近所で働いている。
という人なら、駅徒歩を最優先する必要性は下がります。
駅徒歩10分に毎月数万円多く払うより、駅から離れて広い部屋を借りる。
こうした選択肢が合う人もいます。
「駅遠=悪い物件」ではなく、自分の働き方との相性で考えるべきでしょう。
子育て世帯とは相性が良い?
大泉学園周辺は、ファミリー層が多い住宅地として知られています。LIFULL HOME’Sの調査でも、大泉学園駅周辺の特徴として「ファミリーが多い」「閑静な住宅街がある」が上位に挙げられています。 (LIFULL HOME’S)
子育て世帯の場合、
駅徒歩。
部屋の広さ。
公園。
学校。
スーパー。
車の持ちやすさ。
といった条件を総合的に見る必要があります。
特にテレワークが普及した現在では、毎日の通勤時間より「家の広さ」を優先する家庭もあるでしょう。
駅近の狭い2LDKと、駅遠の広い3LDK。
どちらが暮らしやすいかは、家族によって答えが違います。
大泉学園町は、まさにこの選択が分かれやすい地域です。
災害リスクも住所単位で確認する
駅から遠い住宅地を選ぶときも、防災面は忘れてはいけません。
練馬区では水害ハザードマップを公開しており、大泉学園町についても浸水想定を確認できます。 (練馬区公式サイト)
重要なのは、
「大泉学園町は安全」「大泉学園町は危険」
と地域全体を一括りにしないことです。
同じ町内でも場所によって条件は異なります。
賃貸でも購入でも、検討している物件の住所を実際にハザードマップへ入力して確認することが大切です。
また駅遠地域の場合、災害によってバスが止まったときの移動手段も考えておく必要があります。
そして最大の注目点が「大江戸線延伸」
大泉学園町を語るうえで外せないのが、都営大江戸線の延伸計画です。
現在、大江戸線は光が丘駅が終点ですが、大泉町・大泉学園町方面へ延伸する計画があります。
練馬区内では、
(仮称)土支田駅。
(仮称)大泉町駅。
(仮称)大泉学園町駅。
の3駅を整備する予定です。 (練馬区公式サイト)
2026年度も計画は動いており、練馬区は新駅予定地周辺のまちづくりを進めています。2026年8月にも沿線の将来像や新駅予定地周辺のゾーニングについてオープンハウスが開催されました。 (練馬区公式サイト)
もし実現すれば、大泉学園町の交通事情は大きく変わる可能性があります。
ただし「新駅ができる前提」で物件を選ばない
ここは非常に重要です。
大江戸線延伸について、練馬区の2026年度資料では、東京都が進める事業計画案の作成や国との協議、鉄道事業許可取得など、開業までに複数の段階が残っていることが示されています。 (練馬区公式サイト)
つまり、
「もうすぐ駅ができる」
と考える段階ではありません。
特に不動産購入では、
「新駅ができれば値上がりする」
といった期待だけで判断するのは慎重にしたいところです。
延伸が実現した場合には利便性向上が期待できますが、時期や具体的な事業内容については今後の正式発表を確認する必要があります。
現在の交通条件でも自分が暮らせるか。
まずそこを基準に物件を判断するべきでしょう。
大泉学園町が向いているのはこんな人
大泉学園町は、誰にでもおすすめできる街ではありません。
例えば、
「駅徒歩5分以内が絶対条件」
「毎日深夜まで都心で働く」
「バス移動が嫌い」
という人には、かなり不便に感じる可能性があります。
一方で、
部屋の広さを重視する人
在宅勤務が多い人
子育て世帯
車を所有している人
自転車移動が苦にならない人
静かな住宅地を好む人
にとっては、検討する余地があります。
東京の住まい探しでは、「駅徒歩」という数字が非常に重視されます。
しかし駅から離れることで得られるものもあります。
広さ。
静かな住環境。
駐車場。
家賃とのバランス。
大泉学園町は、それを分かりやすく体現している地域といえるでしょう。
まとめ
大泉学園町は、東京23区内でありながら町内に鉄道駅がなく、場所によっては大泉学園駅までかなり距離があります。
その意味では、今回の連載テーマである**「東京の陸の孤島」**を象徴する地域の一つです。
しかし、
駅が遠い=生活できない
というわけではありません。
バスがあります。
自転車も使えます。
町内にはスーパーなどの日常生活を支える店舗があります。
車を所有する場合も、都心部と比較すると駐車場代を抑えられる可能性があります。
そして何より、駅から離れることで、同じ予算でも広い住宅を選べる可能性があります。
一方、注意したいのは交通手段です。
実際に2025年には大泉学園町を走っていた一部バス路線が廃止されています。 (西武バス)
そのため物件を探すなら、
駅徒歩だけを見るのではなく、バスの本数、最終バス、自転車で駅まで行けるか、雨の日はどうするか
まで考えておく必要があります。
さらに大泉学園町では、大江戸線延伸と(仮称)大泉学園町駅を見据えたまちづくりが現在も進められています。 (練馬区公式サイト)
ただし、将来の鉄道計画だけを前提に住まいを選ぶのは慎重にしたいところです。
大泉学園町を検討するときのポイントは、
「駅ができたら便利か」ではなく、「今の交通環境でも暮らせるか」
です。
東京で家を探すとき、私たちはつい「駅徒歩5分」「駅徒歩10分」という条件から物件を探します。
しかし、その条件を一度外してみると、これまで検索結果にすら出てこなかった街が候補になるかもしれません。
大泉学園町は、便利な駅近住宅とはまったく違う東京の暮らし方を見せてくれる街です。
駅近を取るか、広さと住環境を取るか。
その優先順位を考えるには、非常に面白いエリアではないでしょうか。
次回、第2回は**「世田谷区・深沢」**です。
自由が丘、駒沢大学、都立大学など人気エリアに囲まれながら、深沢には鉄道駅がありません。
それにもかかわらず、なぜ住宅地として人気があるのでしょうか。
「駅から遠いのに、なぜ安くない?」
という大泉学園町とは少し違った「陸の孤島」の住みやすさを、家賃・バス・自転車・車・周辺環境から検証します。
引用元・参考元
- 練馬区「都営大江戸線延伸(光が丘~大泉学園町)」
- 練馬区「大江戸線延伸地域のまちづくり」
- 練馬区「大江戸線延伸-沿線まちづくりデザイン-」
- 練馬区「水害ハザードマップ」
- 西武バス「大泉学園駅~桜高校~長久保線ほか廃止について」
- CHINTAI「練馬区大泉学園町の家賃相場」
- LIFULL HOME’S「大泉学園駅周辺の街情報・住みやすさ」
- 月極駐車場どっとこむ「大泉学園町の月極駐車場相場」
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