トップ > コラム > 【地震と不動産 第3回】地震で家が壊れたらどうする?罹災証明・地震保険・住宅ローン・修理まで解説

【地震と不動産 第3回】地震で家が壊れたらどうする?罹災証明・地震保険・住宅ローン・修理まで解説

2026/08/05
連載

【地震と不動産 第3回】地震で家が壊れたらどうする?罹災証明・地震保険・住宅ローン・修理まで解説

大きな地震で自宅が被害を受けたとき、「これから何をすればいいのか」と戸惑う人は少なくありません。

建物の修理だけでなく、罹災証明書、地震保険、住宅ローン、仮住まい、公的支援など、さまざまな手続きが関係してきます。

しかし災害直後は生活そのものが混乱しており、すべてを一度に判断するのは難しいものです。

今回は、地震で住宅が被災したあとに知っておきたい手続きと、不動産に関係するポイントを順番に整理します。

まずは安全確保。家に戻れない場合は無理をしない

住宅に大きな被害が出ている場合、最初に考えるべきなのは修理ではありません。

人の安全です。

建物が傾いている、柱が大きく損傷している、屋根や外壁が落下しそう、周辺で火災や土砂災害の危険があるといった場合には、家へ戻ること自体が危険な可能性があります。

余震によって被害が拡大する場合もあります。

貴重品や荷物を取りに戻りたい場合でも、安全性が確認できない建物へ無理に入らないようにしましょう。

住宅の被害は片付ける前に記録する

安全が確認できたら、住宅の被害状況を写真や動画に残します。

例えば、

・建物全体
・外壁
・屋根
・基礎
・室内の壁
・床
・窓
・家具
・家電

などです。

近くから撮影するだけでは被害場所が分かりにくいため、建物や部屋全体が分かる写真と、損傷部分を拡大した写真の両方を残しておくとよいでしょう。

修理や片付けを始めてしまうと、後から被害状況を確認できなくなることがあります。

保険や行政手続きのためにも、「片付ける前に記録する」という意識が重要です。

「罹災証明書」とは何か

大規模災害で住宅に被害を受けたとき、重要になる書類の一つが罹災証明書です。

罹災証明書は、自治体が住宅の被害状況を調査し、その程度を証明するものです。

被災者向けのさまざまな支援制度を利用する際に必要になることがあります。

そのため住宅に被害が出た場合には、自分が住んでいる自治体のホームページや窓口で申請方法を確認しましょう。

大規模災害の場合には通常とは異なる専用窓口が設けられることもあります。

申請期限や必要書類などは自治体・制度によって異なるため、最新情報の確認が必要です。

罹災証明と地震保険は同じものではない

ここは混同しやすいポイントです。

罹災証明書は自治体が住宅の被害程度を証明するものです。

一方、地震保険の損害認定は保険会社などが保険契約に基づいて行います。

つまり、

「罹災証明で全壊とされたから、地震保険でも同じ判定になる」

とは限りません。

それぞれ目的や判定基準が異なるためです。

地震保険へ加入している場合には、保険会社や代理店へ連絡して手続きを確認しましょう。

火災保険だけでは地震被害を補償できない場合がある

住宅保険で注意したいのが、火災保険と地震保険の違いです。

一般的な火災保険では、地震を原因とした建物の損壊や火災などは補償対象外になることがあります。

地震による損害に備えるのが地震保険です。

そのため、「火災保険に入っているから地震も大丈夫」と考えず、自分の契約内容を確認しておく必要があります。

また、地震保険は住宅を完全に元通りにする費用をすべて補償することを目的とした制度ではありません。

保険金だけですべての修理費や再建費をまかなえるとは限らない点にも注意が必要です。

住宅ローンは家が壊れてもなくならない

地震被害で非常に厳しい問題となるのが住宅ローンです。

住宅が全壊・半壊したからといって、原則として住宅ローンが自動的になくなるわけではありません。

その結果、

「住めなくなった家の住宅ローン」

に加えて、

「仮住まいの家賃」

「住宅の修理・再建費」

を負担しなければならない可能性があります。

住宅購入時に「毎月のローンを払えるか」だけを考えるのではなく、災害が起きてもある程度対応できる手元資金を残しておくことが重要なのはこのためです。

実際に返済が難しくなった場合には、金融機関へ早めに相談することが大切です。

修理するか、建て替えるか、売却するか

住宅に大きな被害を受けると、

「修理して住み続ける」
「建て替える」
「土地や建物を売却する」

という判断を迫られることがあります。

この判断は簡単ではありません。

修理費だけではなく、

・住宅ローン残高
・地震保険
・建物の築年数
・耐震性
・地盤
・家族構成
・将来の居住予定

などを総合的に考える必要があります。

例えば築年数が古く大規模な耐震改修が必要な住宅では、高額な費用をかけて修復するより建て替えを検討した方が合理的な場合もあります。

一方、部分的な修繕で安全性を回復できる住宅なら、建て替える必要がないケースもあります。

専門家による調査を受けてから判断しましょう。

マンションの場合は個人だけでは決められない

戸建てとマンションでは、被災後の対応が大きく異なります。

マンションの場合、自分が所有している専有部分だけでなく、

・外壁
・廊下
・階段
・エレベーター
・給排水設備
・基礎や構造躯体

などの共用部分があります。

共用部分の修繕については管理組合が中心となって対応します。

そのため一人の所有者だけで「すぐ修理する」「建て替える」と決めることはできません。

大規模な被害が出た場合には、修繕方法、費用負担、保険、建て替えなどを区分所有者間で検討する必要があります。

ここで重要になるのが、普段からのマンション管理です。

修繕積立金が十分に確保されているか、管理組合が機能しているか、長期修繕計画が整備されているかといった点は、災害発生後の復旧力にも関係します。

賃貸住宅が被災した場合はどうする?

賃貸住宅の場合、建物そのものは大家の所有物です。

柱や壁、設備などに被害が出た場合には、まず大家や管理会社へ連絡します。

入居者が独自の判断で大規模な修理をすると、費用負担を巡ってトラブルになる場合があります。

また、住宅が大きく損傷して住めなくなった場合には、契約や被害状況によって対応が異なります。

家賃、契約解除、修繕期間、仮住まいなどについて管理会社や大家と確認する必要があります。

自分の家具や家電については、加入している家財保険や地震保険の内容を確認しましょう。

災害後の「住宅修理トラブル」に注意する

大規模災害のあとには、住宅修理を巡るトラブルにも注意が必要です。

例えば突然業者が訪問し、

「屋根が危険だからすぐ直しましょう」

「保険を使えば無料です」

「今日契約すれば安くなります」

などと契約を急かすケースがあります。

住宅に被害があると不安になり、早く修理したくなるのは当然です。

しかし、緊急性のない工事については複数の業者から見積もりを取るなど、慎重に判断した方がよいでしょう。

保険を使った修理の場合も、契約前に保険会社へ確認することが重要です。

被災後の住宅再建では公的支援も確認する

大規模な災害では、被災者の生活再建や住宅の復旧に関するさまざまな支援制度が設けられることがあります。

支援内容は災害の規模や自治体によって異なります。

住宅の応急修理、仮設住宅、生活再建支援などが用意される場合もあるため、「すべて自己資金で直さなければならない」と判断する前に自治体の情報を確認しましょう。

内閣府も、自然災害への備えとして住宅再建に必要となる資金や耐震化、保険・共済などについて情報を公開しています。

不動産を売却する場合も被害を正確に確認する

被災した住宅を売却する場合には、地震による建物や土地の被害を確認しておく必要があります。

例えば、

・建物の傾き
・基礎の損傷
・液状化
・地盤沈下
・擁壁の被害
・修繕履歴

などです。

被害を把握している場合には、売却時に買主へ説明が必要になる可能性があります。

「地震が来た地域だから急いで売らなければならない」と焦る必要はありません。

災害直後は地域の不動産取引自体が少なくなり、適正な価格を判断しにくい場合もあります。

住宅の状態、ローン残高、地域の復旧状況などを確認したうえで判断することが大切です。

不動産投資でも「災害後の資金」を考えておく

不動産投資でも基本は同じです。

地震によって物件が損傷すれば、修繕費が発生する可能性があります。

さらに入居者が一時的に退去すれば、家賃収入が減ることもあります。

その一方でローン返済、管理費、修繕積立金などの支払いは続きます。

そのため不動産投資では、平常時の利回りだけではなく、

「大規模修繕が突然必要になっても対応できるか」

という視点で現金を確保しておくことが重要です。

地震が発生する時期を予測することはできません。

だからこそ、災害が起きてもすぐ資金繰りに行き詰まらない投資計画が求められます。

地震で家が被災したときの流れ

住宅が被災した場合は、安全を最優先したうえで、おおむね次のような流れを意識しておくとよいでしょう。

1.身の安全を確保する
2.建物へ入ってよい状態か確認する
3.被害を写真・動画で記録する
4.自治体の情報を確認する
5.罹災証明書の申請を確認する
6.保険会社へ連絡する
7.管理会社・大家・管理組合へ連絡する
8.専門家に建物を調査してもらう
9.修理・建て替え・住み替えを検討する
10.住宅ローンや公的支援について確認する

状況によって順番は変わりますが、「すぐ契約・すぐ修理」と焦らないことが重要です。

まとめ

地震で家が被害を受けたとき、最初に優先するのは住宅そのものではなく人命です。

安全を確保したあとは、建物や家財の被害を写真などで記録し、自治体、保険会社、管理会社などへ必要な連絡を行います。

住宅再建では、

・罹災証明
・地震保険
・住宅ローン
・修繕費
・仮住まい
・公的支援

など多くの制度や費用が関係します。

特に住宅ローンが残っている家庭では、「家が被災してもローン返済は続く可能性がある」という点を平常時から理解しておくことが重要です。

災害後には不安から判断を急いでしまいがちですが、大きな金額が動く住宅修理や建て替え、売却ほど慎重な判断が必要です。

地震への備えとは、水や食料を準備することだけではありません。

万が一住宅が被災したあとに、どのように生活を再建するかまで考えておくことも、不動産を所有するうえで大切な防災対策といえるでしょう。

あなたにオススメの記事