トップ > コラム > 【連載コラム:働き方から考える不動産投資 第2回】公務員は不動産投資ができる?副業規定と始める前の注意点

【連載コラム:働き方から考える不動産投資 第2回】公務員は不動産投資ができる?副業規定と始める前の注意点

2026/07/30
連載

「公務員は副業が禁止されているため、不動産投資もできないのではないか」

このように考える方は少なくありません。

公務員には営利企業への従事や自営業に関する制限があります。しかし、マンションの一室を貸すことや、相続した住宅を賃貸することまで一律に禁止されているわけではありません。

一方で、保有する物件の規模や賃料収入、管理の方法などによっては、不動産賃貸が「自営」とみなされ、勤務先の承認や許可が必要になる場合があります。

また、国家公務員と地方公務員では適用される法令や勤務先の規定が異なります。「小規模なら絶対に問題ない」と自己判断するのではなく、事前に所属先のルールを確認することが重要です。

今回は、公務員が不動産投資を検討する際に知っておきたい副業規定と、始める前の注意点を解説します。

公務員の副業が制限されている理由

公務員の副業が制限されているのは、単に本業以外の収入を得ることを防ぐためではありません。

公務員には、公務の公正性や中立性を守り、国民や住民からの信頼を損なわないことが求められます。

例えば、公務員として許認可や補助金、税務、契約などに関わる立場にある人が、職務上関係する企業と私的な事業を行えば、利益相反が生じるおそれがあります。

また、副業に多くの時間を使い、本来の職務へ支障が出ることも避けなければなりません。

そのため、不動産投資が認められるかどうかを考える際は、収入額だけでなく、本業との利害関係、管理にかかる時間、公務への影響などを含めて判断する必要があります。

国家公務員の不動産賃貸には規模の基準があります

国家公務員法では、職員が自ら営利企業を営むことについて制限を設けています。

ただし、不動産を所有して賃貸する行為が、すべて直ちに「自営」と判断されるわけではありません。

人事院の運用基準では、不動産賃貸が一定の規模に達した場合に、自営として取り扱う基準が示されています。

代表的なものは、次のようなケースです。

独立した戸建住宅を5棟以上賃貸する場合、アパートやマンションなど独立して区画された部屋を10室以上賃貸する場合、土地の賃貸契約が10件以上ある場合などです。

駐車場についても、機械設備を設けた駐車場や建築物となっている駐車場、または駐車台数が10台以上の場合は、自営に当たる基準に含まれます。

さらに、不動産と駐車場を合わせた年間の賃料収入が1,000万円以上となる場合も、原則として自営として扱う基準があります。ただし、建物賃貸のみで床面積の合計が600平方メートル未満の場合には、収入基準の扱いに例外が設けられています。

一般に「5棟10室基準」と呼ばれることがありますが、実際には土地、駐車場、賃料収入、建物の用途など、複数の条件があります。部屋数だけを見て判断しないことが大切です。

基準を超えても直ちに禁止されるとは限りません

一定規模以上の不動産賃貸が自営に当たるからといって、必ず不動産投資ができなくなるわけではありません。

国家公務員の場合、所定の基準を満たし、承認を受けることで不動産賃貸を行える可能性があります。

人事院の基準では、承認に当たり、職員の官職と不動産賃貸との間に特別な利害関係がないことが求められます。

さらに、入居者募集、家賃の集金、建物の維持管理などを管理会社へ委託し、職務の遂行へ支障が生じないことが明らかである必要があります。公務の公正性や信頼性を損なわないことも重要な条件です。

つまり、判断のポイントは「何戸持っているか」だけではありません。

公務員本人が平日の勤務時間中に入居者対応をしたり、頻繁に物件へ出向いたりする状態では、本業への影響を懸念される可能性があります。

不動産賃貸を本業と切り離し、管理会社などの専門事業者へ実務を任せる体制が重要になります。

小規模な不動産投資でも事前確認が必要です

5棟未満、10室未満であれば、何も確認せず始めてよいとは限りません。

人事院の基準は、自営に当たる規模を判断する重要な目安ですが、職員の所属や職務内容、物件の用途、管理への関与によって判断が変わる可能性があります。

例えば、保有している部屋数が少なくても、旅館やホテルなど特定の事業用途に使う建物を賃貸する場合は、自営に当たる基準に含まれます。

また、本人ではなく配偶者や親族の名義で物件を所有していても、実際には本人が事業を運営していると客観的に判断されれば、本人による自営として扱われる可能性があります。名義だけを変えれば規制を避けられるというものではありません。

自己判断で購入を進めるのではなく、物件の契約前に勤務先の人事・服務担当部署へ相談することが望ましいでしょう。

地方公務員は自治体ごとの規則も確認します

地方公務員については、地方公務員法第38条が、営利企業への従事などを制限しています。

同条では、職員は任命権者の許可を受けなければ、自ら営利企業を営んだり、報酬を得て事業や事務へ従事したりすることができないと定められています。

ただし、地方公務員の場合、具体的な許可基準や申請手続きは、自治体の条例、人事委員会規則、服務規程などによって異なる場合があります。

国家公務員の「5棟10室」などの基準が、そのまますべての地方公務員へ同じ形で適用されるとは限りません。

都道府県庁、市区町村、警察、消防、公立学校など、所属する組織によって確認先も異なります。

インターネット上の一般的な解説だけを根拠にせず、所属先の服務規程や兼業許可基準を確認する必要があります。

管理会社への委託は公務との両立にも重要です

不動産投資では、入居者募集、家賃回収、クレーム対応、設備故障、退去手続きなど、さまざまな業務が発生します。

これらを公務員本人が日常的に行えば、本業への支障が問題となる可能性があります。

国家公務員が不動産賃貸の承認を申請する場合には、不動産管理会社との管理委託契約書など、管理方法を明らかにする書類の提出が求められます。

管理会社へ委託することは、単に手間を減らすためだけではありません。

勤務時間中に入居者対応をしない体制を整え、本業と賃貸経営を明確に分ける意味があります。

ただし、管理会社へ委託しても、オーナーとしての責任がなくなるわけではありません。

修繕の承認、収支の確認、契約更新、管理会社の対応状況などは、所有者自身が定期的に確認する必要があります。

安定収入だけを理由に借り過ぎないことも大切です

公務員は、毎月の給与が比較的安定していることから、金融機関の融資審査で一定の評価を受ける場合があります。

しかし、融資を受けられることと、返済に無理がないことは別の問題です。

不動産投資では、空室による家賃収入の減少、設備交換、大規模修繕、固定資産税、管理費、金利上昇などに備える必要があります。

給与収入が安定していたとしても、家賃収入が想定どおり入らなければ、給与からローン返済を補う場面も考えられます。

また、自宅購入、子どもの教育費、介護、転勤など、将来の家計状況が変わる可能性もあります。

「公務員だから多く借りられる」と考えるのではなく、空室や修繕が重なっても返済を続けられる範囲で、借入額を検討することが重要です。

物件を購入する前に確認したいこと

公務員が不動産投資を検討する場合、最初に物件を探すのではなく、勤務先の規定を確認することが重要です。

国家公務員なのか地方公務員なのか、自分の所属ではどのような基準が設けられているのか、許可や承認が必要となる規模はどこからなのかを確認します。

その上で、物件の戸数、年間の賃料収入、管理方法、勤務先との利害関係などを整理しましょう。

購入前には、少なくとも次の点を明確にしておく必要があります。

管理業務を誰へ委託するのか、勤務時間中に対応が発生しない仕組みになっているか、物件数や収入が増えた場合に申請が必要となるか、異動によって職務上の利害関係が生じないか、といった点です。

制度上の確認を後回しにすると、物件購入後に管理方法や保有規模の見直しが必要になる可能性があります。

まとめ

公務員であっても、不動産を所有し、賃貸することが一律に禁止されているわけではありません。

国家公務員の場合は、戸建住宅5棟以上、区分された部屋10室以上、土地の賃貸契約10件以上、一定条件で年間賃料収入1,000万円以上などが、自営と判断される主な基準です。

基準を超える場合でも、職務との利害関係がなく、管理会社へ実務を委託し、本業へ支障が生じないと認められれば、承認を受けられる可能性があります。

一方、地方公務員は、勤務する自治体や組織によって許可基準が異なる場合があります。

重要なのは、「小規模だから大丈夫」「公務員なら不動産投資に向いている」と自己判断しないことです。

物件を購入する前に所属先の人事・服務担当部署へ確認し、必要な手続きを済ませた上で、無理のない借入と管理体制を考える必要があります。

公務員としての信用や安定収入は、不動産投資を検討する上で一つの要素にはなります。しかし、それだけで投資の安全性が保証されるわけではありません。

制度を守り、本業へ支障を与えず、空室や修繕にも耐えられる計画を立てることが、公務員の不動産投資では特に重要です。

次回は、共働き世帯や医師、士業、大手企業勤務など、比較的収入が安定している人の不動産投資を取り上げます。「高収入で融資を受けやすければ安心」とは限らない理由を、家計と借入の両面から解説します。

不動産投資セミナー

不動産投資セミナー

あなたにオススメの記事