【世界の不動産投資 第6回】オーストラリアの住宅価格はなぜ高い?人口増加と移民で変わる不動産投資
シドニーやメルボルンと聞くと、自然豊かで暮らしやすい都市というイメージを持つ人も多いでしょう。
一方、不動産市場を見ると、オーストラリアは住宅価格の高さや住宅不足が長年議論されている国でもあります。
その背景には、人口増加、海外からの移住、主要都市への人口集中、住宅供給の不足、金利など、さまざまな要因があります。
さらに興味深いのが、外国人による住宅購入に対する政策です。
2026年現在、オーストラリアでは外国人投資家による中古住宅の購入が原則禁止されています。
世界の不動産投資第6回は、人口が増える先進国で、住宅需要と投資をどのように両立させようとしているのかをオーストラリアから見ていきます。
オーストラリアの人口は今も増えている
不動産市場を見るうえで、まず注目したいのが人口です。
オーストラリア統計局によると、2025年12月末の人口は約2,780万人でした。
1年間で約41万2,500人増え、人口増加率は1.5%です。
日本から見ると、この数字はかなり印象的です。
さらに人口増加の内訳を見ると、出生数から死亡数を差し引いた自然増が約11万1,500人だったのに対し、海外からの純移住は約30万1,000人でした。
つまり、近年のオーストラリアの人口増加は、海外から移り住む人々によって大きく支えられています。
人が増えれば、当然「住む場所」が必要になる
人口増加は不動産にとって重要な要素です。
新しくオーストラリアへ移住した人は、
住宅を買う。
マンションを借りる。
シェアハウスに住む。
学生住宅を利用する。
といった形で住まいを必要とします。
そのため人口が増えれば、住宅需要も増えやすくなります。
特にシドニーやメルボルン、ブリスベン、パースなど、雇用や教育機関が集まる都市では住宅需要が集中しやすくなります。
不動産投資の視点では、
人口が増えているか
だけではなく、
その人口がどの都市に集まっているのか
を見ることが重要です。
オーストラリアは「移民国家」である
オーストラリアの人口構造を見ると、この特徴はさらに分かりやすくなります。
オーストラリア統計局によると、2025年6月時点で海外生まれの人口は約880万人で、総人口の32.0%を占めていました。
つまり、およそ3人に1人が海外生まれということになります。
これだけ国際的な人口構成を持つ国では、住宅需要も多様です。
家族向け住宅。
都心のマンション。
学生向け住宅。
短期間の滞在者向け住宅。
郊外の戸建て。
など、求められる住宅も異なります。
海外から人が集まる国では、「人口が増える」という数字だけでなく、どんな人が、どんな理由で移住しているのかを見ることが不動産投資では重要です。
住宅価格の高さは「人口だけ」が原因ではない
では、オーストラリアの住宅価格が高いのは、人口が増えているからなのでしょうか。
それだけではありません。
住宅価格には、
土地供給。
住宅建設のスピード。
建設コスト。
都市計画。
金利。
住宅ローン。
税制。
投資需要。
など、多くの要素が影響します。
オーストラリア統計局によると、2026年3月末時点の国内住宅資産の総額は約12兆7,726億豪ドルに達しています。
住宅戸数は約1,149万5,200戸でした。
巨大な住宅資産市場が形成されていることが分かります。
ただし、「住宅資産総額が大きい=投資に適している」という意味ではありません。
重要なのは、物件価格と賃料、融資条件、維持費などのバランスです。
シドニーやメルボルンだけを見るのも危険
オーストラリア不動産というと、
シドニー。
メルボルン。
を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、オーストラリアは非常に広い国です。
2025年12月までの1年間の人口増加率を見ると、西オーストラリア州が2.2%と最も高く、ビクトリア州が1.7%、クイーンズランド州が1.6%、ニューサウスウェールズ州が1.2%でした。
つまり、人口の伸び方も地域ごとに異なります。
不動産投資では、
「オーストラリアだから」
「シドニーだから」
という国名・都市名だけで判断するのではなく、
その地域で雇用が増えているか。
人口が増えているか。
住宅がどれだけ供給されるのか。
家賃はどう動いているか。
を見る必要があります。
これはアメリカの回でも見てきた考え方と同じです。
外国人は中古住宅を原則買えない
ここからが、オーストラリア不動産の非常に特徴的な部分です。
2026年現在、外国人投資家は原則としてオーストラリアの中古住宅を購入できません。
オーストラリア政府は、2025年4月1日から外国人による既存住宅の購入を原則禁止しました。
当初は2027年3月末までの措置でしたが、その後延長され、現在は2029年6月30日まで続く方針となっています。
例外はありますが、一般的な外国人投資家が中古住宅を自由に購入できる市場ではありません。
日本との違いはかなり大きいといえます。
なぜ外国人に中古住宅を買わせないのか
その理由は、政府の政策を見ると明確です。
オーストラリア政府は、外国からの住宅投資を既存住宅ではなく新築住宅へ誘導する方針を示しています。
外国資本が新築住宅へ向かえば、
新しい住宅が増える。
建設業の雇用につながる。
住宅供給が増える。
という効果が期待できます。
一方、外国人がすでに存在する中古住宅を購入しても、住宅そのものの数は増えません。
むしろ国内の購入希望者と同じ物件を争うことになります。
政府はその考え方から、外国投資について「住宅ストックを増やすこと」を重要な原則としています。
これは非常に分かりやすい住宅政策です。
海外からお金は受け入れる。しかし、できるだけ住宅供給を増やす方向へ使ってもらう。
という考え方です。
外国人でも新築住宅なら投資できる
では、外国人はオーストラリアの住宅にまったく投資できないのでしょうか。
そうではありません。
外国人投資家は、一定の条件のもとで新築住宅や未開発の住宅用地などへの投資が可能です。
政府も、外国投資については新築住宅への投資を促す方針を明確にしています。
新築住宅の場合、デベロッパー側が一定の承認を取得していれば、外国人購入者が個別に申請しなくても購入できるケースもあります。
一方、住宅用の更地を取得する場合には、一定期間内に住宅を建設することなどが条件になることがあります。
つまり、
「外国人投資は禁止」ではなく、「新しい住宅を増やす投資を優先する」
という制度なのです。
買っただけで放置することにもルールがある
オーストラリアでは、外国人が住宅を購入した後についてもルールがあります。
外国人が所有する住宅について、年間183日を超えて居住されていない、または実質的に賃貸市場へ提供されていない場合には、空室料の対象になることがあります。
ここにも政策の考え方が表れています。
外国人が住宅を買う。
しかし誰も住まない。
賃貸にも出さない。
という状態になれば、住宅不足が問題となっている市場では社会的なメリットが小さくなります。
そこで、
「住宅を所有するなら、実際に住宅として使ってほしい」
という方向へ制度で誘導しているのです。
住宅不足が政策の中心テーマになっている
外国人の中古住宅購入規制だけで、オーストラリアの住宅問題が解決するわけではありません。
政府自身も、外国人による購入禁止を住宅政策全体の一部と位置付けています。
オーストラリア政府は、5年間で120万戸の住宅建設を目指す目標を掲げ、住宅供給の拡大を政策の柱の一つとしています。
ここから分かるのは、
「外国人を規制すれば住宅価格が下がる」
という単純な政策ではないということです。
住宅不足を解決するには、
土地。
建設人材。
インフラ。
住宅開発。
都市計画。
など、供給側の問題にも取り組む必要があります。
不動産投資家も非常に多い
一方、オーストラリア国内では不動産投資そのものが盛んです。
オーストラリア統計局によると、2026年6月期の新規住宅ローンのうち、投資家向け融資は5万2,599件、金額では約371億豪ドルでした。
前年同期比では投資家向け融資件数は2.8%増えていましたが、前期比では8.6%減少しています。
つまりオーストラリアでは、住宅は「住む場所」であると同時に、個人にとって重要な投資資産でもあります。
この点は日本と共通しています。
金利が上がれば投資家の行動も変わる
2026年のオーストラリア住宅市場では、金利も無視できません。
ABSは2026年6月期について、住宅向け新規融資件数が前期比5.4%減少し、投資家向け融資件数も8.6%減少したと発表しています。
住宅価格が高い市場では、融資金利の変化が投資収支に大きく影響します。
物件価格が上がっていても、
ローン返済が増える。
家賃との差が小さくなる。
購入できる人が減る。
ということが起こります。
不動産投資では、
人口増加と住宅不足だけを見るのではなく、金融環境も見る必要がある
ということです。
「人口が増える国なら不動産は上がる」は正しいのか
ここまで見ると、
「人口が増えているオーストラリアなら、不動産価格も上がり続けるのでは」
と考えるかもしれません。
しかし、それほど単純ではありません。
人口が増えていても、
住宅供給が増える。
金利が上がる。
景気が悪化する。
購入者の所得が追いつかなくなる。
税制が変わる。
投資家向け融資が厳しくなる。
といったことが起きれば、住宅市場は変化します。
人口増加は重要な材料ですが、
不動産価格を決める要素の一つにすぎません。
これはドバイの回でも見てきたポイントです。
人口が増えることと、購入した物件の価格が必ず上がることは別です。
オーストラリアでは「新築を買う外国人」と「中古を買う国内層」が分かれる
現在の制度は、不動産市場に興味深い構造を生みます。
外国人投資家には、
新築住宅。
新規開発。
住宅用地。
などへの投資を促す。
一方で既存住宅については、原則として国内の購入者に優先する。
という考え方です。
そのため海外投資家がオーストラリアへ投資する場合、
完成済みの中古住宅を探す。
という日本国内と同じ感覚では進められません。
制度そのものを理解する必要があります。
海外不動産投資では、
「何を買いたいか」
より先に、
「自分はその物件を買えるのか」
を確認する必要があるのです。
シンガポールとは似ているようで違う
第3回で取り上げたシンガポールも、外国人の住宅購入を強く抑えています。
しかし方法は違います。
シンガポールでは、一般的な外国人が住宅を購入すると60%のABSDが課されます。
つまり、
高額な税金を課すことで需要を抑える
方式です。
一方、オーストラリアでは現在、外国人による中古住宅購入そのものを原則禁止しています。
こちらは、
購入できる住宅の種類を制限する
方法です。
どちらも「国内の住宅市場を守る」という方向性がありますが、政策手段は異なります。
世界を見ると、外国人による不動産購入に対する考え方が国によって大きく違うことが分かります。
香港、ドバイともまったく違う
ここまでのシリーズを振り返ると、さらに違いが見えてきます。
香港は2024年に、外国人を含む住宅購入者に対する追加的な需要抑制税を撤廃しました。
ドバイは指定エリアで外国人によるフリーホールド所有を認め、海外資金を積極的に取り込んでいます。
シンガポールは外国人に60%のABSD。
オーストラリアは外国人による中古住宅購入を原則禁止。
つまり、
「外国人のお金を不動産市場へどこまで入れるか」について、世界共通の答えはありません。
各国が、住宅事情や経済政策に合わせて異なる選択をしています。
そして日本はどうなのか
ここで、いよいよ次回の日本につながります。
日本では現在、一般的な住宅やマンションについて、
外国人だから購入時に60%の追加税がかかる。
外国人だから中古住宅を原則買えない。
指定地区でなければ所有できない。
といった制度にはなっていません。
これは今回見てきたシンガポールやオーストラリアとは大きく異なります。
では、日本の不動産市場は世界から見ると「買いやすい市場」なのでしょうか。
そして東京の住宅価格は、
ニューヨーク。
ロンドン。
シンガポール。
香港。
ドバイ。
シドニー。
などと比較すると、どのように見えるのでしょうか。
シリーズ最終回では、ここを考えていきます。
まとめ
「世界の不動産投資」第6回はオーストラリアを取り上げました。
オーストラリアの人口は2025年12月までの1年間で約41万2,500人増加し、そのうち約30万1,000人を海外からの純移住が占めました。
人口増加や移民は住宅需要を支える重要な要素です。
一方で、住宅不足や住宅価格の高さが問題となるなか、政府は外国投資を新築住宅の供給へ誘導しています。
2026年現在、外国人投資家による中古住宅の購入は原則禁止されており、この政策は2029年6月末まで続く方針です。
これは、
「海外資金そのものを拒む」のではなく、「住宅を増やす投資に海外資金を使う」
という考え方です。
そしてオーストラリアから学べるもう一つのポイントが、
人口が増えているだけでは、不動産投資の成功は決まらない
ということです。
人口。
移民。
住宅供給。
金利。
融資。
税制。
外国人規制。
エリアごとの需要。
こうした要素を総合的に見る必要があります。
これまで6回、世界の不動産市場を見てきました。
アメリカでは中古住宅の巨大市場。
ロンドンでは世界から集まる不動産マネー。
シンガポールでは強い住宅規制。
香港では土地供給と政策転換。
ドバイでは人口増加と巨大開発。
オーストラリアでは移民と住宅供給、外国人購入規制。
それぞれ不動産市場の「常識」がまったく違いました。
そして次回はいよいよ最終回、日本です。
第7回は、
「東京の不動産投資は世界からどう見える?海外6市場と比較して分かる日本の特徴」
をテーマにします。
世界の不動産市場を見てきたからこそ分かる、
日本の不動産は買いやすいのか。
東京は本当に高いのか。
外国人から見た日本市場の特徴は何か。
そして日本で不動産を持つメリットとリスクはどこにあるのか。
を整理して、シリーズ全体を締めくくります。
引用元・参考元
- Australian Bureau of Statistics「National, state and territory population, December 2025」
- Australian Bureau of Statistics「Australia’s population up 1.5% in December 2025」
- Australian Bureau of Statistics「Australia’s population by country of birth」
- Australian Bureau of Statistics「Total Value of Dwellings, March Quarter 2026」
- Australian Bureau of Statistics「Lending indicators, June Quarter 2026」
- Australian Government「Residential land – Foreign investment in Australia」
- Australian Government「Australia’s Foreign Investment Policy」
- Australian Treasury「Further streamlining and strengthening the foreign investment framework」
- Treasury Ministers「More homes and a fair go for first home buyers」


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