中古マンションを探していると、
「築35年」
「築42年」
といった物件を見かけることがあります。
その数字を見た瞬間、
「古すぎて危ないのでは?」
「あと何年住めるの?」
「将来売れなくなるのでは?」
と不安になる人もいるでしょう。
確かに、築年数はマンション選びで重要な情報です。
しかし、
築40年だから危険。
築10年だから安心。
と単純に判断することはできません。
マンションは、建てられてからどのように修繕され、管理されてきたかによって状態が大きく変わるからです。
「マンションは管理で選ぶ」第3回は、築30年・40年のマンションを見るとき、本当に確認すべきポイントを整理します。
築40年以上のマンションはこれから珍しくなくなる
まず知っておきたいのは、築古マンションは一部の特殊な物件ではないということです。
国土交通省は、築40年以上の分譲マンション数を継続的に集計しています。
2025年末時点の最新データも公表されており、日本では今後、築40年を超えるマンションがさらに増えていくことが見込まれています。
つまり、
「築40年だから候補から外す」
という考え方だけでは、中古マンション市場そのものを十分に見られなくなっていく可能性があります。
これから重要になるのは、
古いか新しいかではなく、古くなった建物をどう維持しているか
という視点です。
マンションに「築何年で住めなくなる」という一律の期限はない
よく、
「マンションの寿命は何年ですか?」
という疑問があります。
しかしマンションには、
「築50年になったら住めない」
「築60年で必ず取り壊す」
といった一律の使用期限があるわけではありません。
建物の状態は、
構造。
施工状態。
立地環境。
日常的な維持管理。
修繕履歴。
設備更新。
などによって変わります。
同じ築40年でも、適切な補修を続けてきたマンションと、必要な工事を先送りしてきたマンションでは状態が違います。
築年数はあくまで、
「建てられてから何年経ったか」を示す数字
です。
建物の健康状態そのものを表す数字ではありません。
最初に確認したいのが「旧耐震か新耐震か」
築古マンションを見るとき、まず確認したいのが耐震基準です。
日本では1981年6月1日に耐震基準が大きく変わりました。
この日以降に建築確認を受けた建物には、いわゆる「新耐震基準」が適用されています。国土交通省も、1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物について、新耐震基準に基づくものとして案内しています。
そのため築40年前後のマンションでは、
旧耐震基準なのか、新耐震基準なのか
が一つの重要な確認項目になります。
ただし注意したいのは、
「1981年築なら新耐震」
と完成年だけで決めつけないことです。
判断では建築確認の時期などを確認する必要があります。
中古マンションを検討するときは、販売広告の築年月だけではなく、
建築確認の時期。
耐震診断の有無。
耐震補強工事の有無。
などまで確認したいところです。
「旧耐震だから絶対に危険」とも言い切れない
一方で、
旧耐震基準だから即座に危険なマンション。
新耐震基準だから絶対に安全なマンション。
と分けるのも適切ではありません。
旧耐震マンションでも、耐震診断を行い、必要に応じて耐震補強を実施している場合があります。
反対に、新耐震基準で建てられていても、経年劣化や被災、維持管理の状態などによって建物の状態は変わります。
国土交通省も、マンションの耐震性能は経年劣化や災害などによって建設時より低下する可能性があり、必要に応じて耐震診断や補強を検討することが重要としています。
つまり確認したいのは、
「何年築か」だけではなく、「現在どの程度の耐震性が確認されているか」
です。
築古マンションほど「修繕履歴」が重要になる
築30年、40年になると、それまでにどんな修繕をしてきたかが重要になります。
たとえば、
外壁補修。
屋上防水。
鉄部塗装。
シーリング。
給排水設備。
エレベーター。
インターホン。
消防設備。
などです。
築40年のマンションなら、その間に大規模修繕工事を複数回経験していることも珍しくありません。
ここで見たいのが、
「修繕したことがあるか」ではなく、「計画的に修繕しているか」
です。
国土交通省の管理計画認定制度でも、長期修繕計画について30年以上の計画期間を確保し、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれることなどを認定基準にしています。
マンションは、一度修繕すれば終わりではありません。
修繕して、また年数が経ち、次の修繕を行う。
この繰り返しです。
見た目がきれいでも「中身」は分からない
中古マンションを内見すると、
エントランスがきれい。
外壁も新しく見える。
廊下も清掃されている。
という物件があります。
もちろん好印象です。
しかし築古マンションでは、見た目だけでは分からない部分もあります。
特に注意したいのが設備です。
たとえば、
給水管。
排水管。
電気設備。
消防設備。
エレベーター。
機械式駐車場。
などです。
外壁は塗り替えれば新しく見えますが、建物内部の設備は外から確認できません。
だから中古マンションでは、
「きれいに見えるか」と「設備更新が行われているか」を分けて考える
必要があります。
特に確認したいのが給排水管
築古マンションでよく話題になるのが配管です。
マンションには、
水を各住戸へ届ける給水設備。
使用した水を流す排水設備。
などがあります。
こうした設備も永久に使えるわけではありません。
築年数が進めば、
更新。
更生工事。
部分交換。
などが必要になることがあります。
そこで確認したいのが、
給排水設備の修繕履歴。
今後の更新予定。
長期修繕計画に工事費が含まれているか。
です。
もし近い将来、大規模な設備更新が必要なのに、修繕積立金に余裕がなければ、所有者の負担が増える可能性があります。
築古マンションでは、
「今きれいか」より、「次に何の工事が必要になるか」
を見ることが重要です。
2回目、3回目の大規模修繕で費用が増えることもある
築年数が浅いマンションでは、比較的外壁や防水を中心とした修繕になることがあります。
しかし築年数が進むと、それだけでは済まなくなります。
設備そのものの更新が増えてくるからです。
エレベーター。
給排水設備。
玄関扉。
インターホン。
機械式駐車場。
共用照明。
など、工事対象が広がる可能性があります。
つまり、
築古マンションでは「次の大規模修繕はいくらかかるのか」が特に重要
です。
前回取り上げた修繕積立金とも直結します。
築40年でも十分な積立金があり、将来工事まで計画できているマンションと、築20年でも資金不足が深刻なマンション。
どちらが安心かは、築年数だけでは決められません。
築古なのに修繕積立金が極端に安い場合は確認したい
築40年なのに、
「修繕積立金が月5,000円」
など、負担がかなり低い物件があったとします。
一見するとお得に見えます。
しかし、
本当にその金額で今後の修繕を賄えるのか。
積立残高はいくらあるのか。
次の工事はいくらかかるのか。
値上げ予定はないのか。
を確認する必要があります。
修繕積立金が安い理由が、
十分な積立残高がすでにある。
大規模設備が少ない。
戸数が多く負担を分散できる。
という合理的なケースもあります。
一方、
長年値上げを先送りしている。
修繕計画が現実と合っていない。
という可能性もあります。
金額だけでは判断できません。
築古マンションは「管理組合の経験」が強みになることもある
築古というとデメリットばかり考えがちですが、逆の見方もできます。
30年、40年と運営されてきたマンションでは、
大規模修繕を経験している。
管理会社を見直したことがある。
設備トラブルへ対応してきた。
管理規約を更新してきた。
修繕積立金を調整してきた。
というように、管理組合にさまざまな経験が蓄積されている場合があります。
これは新築マンションにはまだないものです。
問題が一度も起きていないことより、
問題が起きたときに、管理組合がどう対応してきたか
を見ることも重要です。
総会議事録や修繕履歴を見ると、そのマンションの管理姿勢が分かることがあります。
新築だから管理が良いとは限らない
新築マンションには、
最新設備。
新しい内装。
新しい耐震性能。
という魅力があります。
しかし管理という点では、まだ実績がありません。
管理組合もできたばかり。
大規模修繕も未経験。
長期修繕計画も将来予測です。
つまり新築は、
「建物が新しい」ことは確認できても、「30年間どう管理されるか」はまだ分からない
という側面があります。
一方、築30年のマンションなら過去30年間の記録があります。
修繕履歴。
総会議事録。
積立金推移。
管理会社との関係。
住民による意思決定。
などを見ることができます。
中古マンションの大きなメリットの一つは、
過去の管理実績を確認してから買えること
なのです。
築古マンションでは「住宅ローン」も確認したい
築古マンションでは、資金面にも注意が必要です。
住宅ローンを利用する場合、金融機関によって、
建物の築年数。
耐震性。
担保評価。
借入期間。
などの条件が異なることがあります。
そのため、
「物件として気に入ったから購入できる」
とは限りません。
特に旧耐震マンションなどでは、利用する住宅ローンや制度によって条件が変わる可能性があります。
物件選びと同時に、
融資条件も早めに確認する
ことが重要です。
不動産投資用ローンの場合も同様で、金融機関ごとの評価は異なります。
将来売るなら「次の買い手」のことも考える
築40年のマンションを買い、10年間所有したら築50年になります。
20年間所有すれば築60年です。
そのとき売却するなら、次の購入者も同じように、
耐震性。
管理状態。
修繕積立金。
設備。
融資。
建て替え。
などを気にします。
そのため中古マンション投資では、
「自分が買えるか」だけではなく、「将来ほかの人が買いやすいか」
も重要になります。
駅に近い。
人気エリアにある。
管理状態が良い。
修繕計画が明確。
耐震性を確認できる。
こうした条件が、築年数が進んだときにより重要になる可能性があります。
「築古=土地の価値があるから安心」でもない
古いマンションについて、
「建物が古くても土地の持分があるから大丈夫」
という考え方もあります。
確かに区分所有マンションでは、一般的に土地の共有持分を所有します。
しかし、
土地があるから必ず高く売れる。
古くなれば簡単に建て替えられる。
というわけではありません。
マンションには多くの区分所有者がいます。
建て替えや再生には、
費用。
合意形成。
仮住まい。
事業採算性。
容積率。
建築規制。
など、さまざまな問題があります。
つまり、
「古くなったら建て替えればいい」ほど簡単ではない
のです。
2026年からマンション再生の制度も変わっている
高経年マンションの増加を背景に、マンション再生をめぐる制度も変化しています。
2026年4月1日から改正マンション関係法が施行され、国土交通省は建て替えだけでなく、さまざまなマンション再生を進めるためのマニュアルなどを公表しています。
つまり日本では、
「古くなったマンションをどう維持し、どう再生するか」
がこれから一段と重要な課題になっています。
築古マンションを購入するときも、
現在の状態だけでなく、
「さらに20年後、このマンションはどうしていくのか」
という長期的な視点が必要になります。
築30年・40年マンションで見たい8つのポイント
築古マンションを検討するときは、最低限次のような項目を確認したいところです。
築年数だけを見るのではなく、
耐震基準と耐震診断の状況。
過去の大規模修繕履歴。
長期修繕計画。
修繕積立金の残高と今後の金額。
給排水設備などの更新履歴。
管理組合の運営状態。
総会議事録に大きな問題がないか。
将来の売却や再生を考えられる立地か。
という視点です。
国土交通省も、中古マンション購入者向けに管理状況を確認するためのチェックポイントを案内しており、竣工年、管理組合、修繕計画などを確認する重要性を示しています。
「築40年」という一つの数字より、こうした情報を組み合わせて判断するほうが実態に近づけます。
築古マンションには「価格」という魅力もある
もちろん、築古マンションが注目される理由の一つは価格です。
同じ駅。
同じ広さ。
同じような立地。
なら、一般的には築年数が古い物件のほうが新築・築浅より購入しやすい価格になっているケースがあります。
購入価格を抑えられれば、
リフォームに費用をかける。
住宅ローン負担を抑える。
投資額を小さくする。
といった選択肢も生まれます。
しかし安い理由が、
単純に築年数だけなのか。
修繕問題を抱えているからなのか。
耐震性に懸念があるからなのか。
将来大きな支出が予定されているからなのか。
は確認する必要があります。
「安い築古」と「割安な築古」は同じではありません。
築年数より「これから何年使える状態なのか」
マンションを見るとき、
築10年。
築20年。
築40年。
という数字は分かりやすい指標です。
しかし本当に知りたいのは、
「これからこの建物をどう維持していけるのか」
ではないでしょうか。
築40年でも、
管理が良い。
資金がある。
設備更新をしている。
耐震性を確認している。
将来計画がある。
というマンションがあります。
一方、築20年でも、
積立金不足。
修繕先送り。
設備トラブル。
管理組合の機能低下。
などを抱えている可能性があります。
マンションは、人間と少し似ています。
年齢だけでは健康状態は分かりません。
何歳かではなく、どのように手入れされてきたかを見る。
中古マンションでも同じ視点が必要です。
まとめ
「マンションは管理で選ぶ」第3回は、築30年・40年のマンションについて取り上げました。
築古マンションを見ると、
「古いから危険」
「もう価値がない」
と思うかもしれません。
しかし、築年数だけでマンションの状態を判断することはできません。
重要なのは、
耐震性。
大規模修繕。
給排水設備。
修繕積立金。
長期修繕計画。
管理組合。
過去の修繕履歴。
そして将来の再生可能性。
です。
特に築40年前後のマンションでは、1981年6月1日から適用された新耐震基準との関係を確認することが重要です。
一方で、新耐震だから何も確認しなくてよいわけでもありません。
建物は時間とともに変化します。
だからこそ、
「何年築か」だけではなく、「現在どんな状態なのか」
を見る必要があります。
そして中古マンションには、新築にはないメリットもあります。
過去の管理実績を見ることができることです。
これまでどんな修繕をしてきたか。
お金をどう積み立ててきたか。
問題が起きたときどう対応したか。
その履歴を見ることで、
そのマンションが「きちんと年を重ねてきた建物なのか」
を判断する材料になります。
築古だから避ける。
築浅だから安心する。
ではなく、
10年後、20年後も住みたい人がいる状態を維持できるか。
中古マンション選びでは、そこまで考えることが重要です。
次回、第4回は、
「マンションの大規模修繕では何をしている?足場で覆われる工事の中身」
をテーマにします。
マンションが突然、足場とシートで覆われる大規模修繕。
一体あの中では何をしているのでしょうか。
外壁補修。
タイル。
防水。
シーリング。
鉄部塗装。
そして工事費。
なぜ十数年ごとに大きな工事が必要なのか。
次回は、普段は見えない大規模修繕の中身を詳しく見ていきます。
引用元・参考元
- 国土交通省「マンションに関する統計・データ等」
- 国土交通省「これだけは知っておきたい!マンションの管理状況チェックシート」
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省「新耐震基準に関する資料」
- 国土交通省「マンションの再生等について」
- 国土交通省「改正マンション関係法」

.png)
