「三軒茶屋に住みたいけれど、家賃が高い」。
渋谷へのアクセスが良く、飲食店も多い三軒茶屋は、世田谷区の中でも知名度の高い街です。部屋探しで一度は候補に入れたことがある人も多いのではないでしょうか。
そこで今回の「1駅ずらし」では、東急田園都市線で三軒茶屋から1駅先の駒沢大学駅に注目します。
「三軒茶屋から1駅離れれば家賃が安くなるのでは?」と思いたくなりますが、最新の家賃相場を調べると、実はそれほど単純ではありません。
三軒茶屋と駒沢大学の家賃、交通アクセス、買い物環境、街の雰囲気、そして駒沢オリンピック公園という住環境まで比較しながら、「1駅ずらす意味」がどこにあるのかを考えてみます。
三軒茶屋から駒沢大学までは田園都市線で1駅
三軒茶屋と駒沢大学は、どちらも東急田園都市線の駅です。
位置関係は、
池尻大橋 → 三軒茶屋 → 駒沢大学 → 桜新町 → 用賀
となります。
三軒茶屋から駒沢大学へずらしても、利用する路線そのものは変わりません。
つまり、
「田園都市線沿線に住みたい」
「渋谷方面へのアクセスを重視したい」
という大きな条件を残したまま、物件の検索範囲を広げられます。
これこそ、この連載で紹介している「1駅ずらし」の基本です。
ただし、三軒茶屋には田園都市線だけでなく東急世田谷線もあります。
駒沢大学へ移ることで変わる条件もあるため、家賃だけではなく交通や生活環境を含めて比較する必要があります。
1Kは三軒茶屋11.98万円、駒沢大学11.68万円
まず家賃相場を見てみましょう。
LIFULL HOME’Sが公表している最新の家賃相場では、駅徒歩10分以内の物件などを基準とした1Kは、
三軒茶屋 11.98万円
駒沢大学 11.68万円
となっています。
差はわずか3,000円です。
ワンルームでは、
三軒茶屋 12.26万円
駒沢大学 12.00万円
で、こちらも差は2,600円程度です。(ライフルホームズ)
「三軒茶屋は人気だから高い。1駅離れれば大幅に安くなる」
と思っていた人にとっては、少し意外な結果かもしれません。
少なくとも現在の相場では、単身向け物件については1駅ずらすだけで家賃が1万円、2万円と下がるわけではないのです。
1LDKでは、ほぼ同じ家賃という結果に
では、少し広い1LDKならどうでしょうか。
同じLIFULL HOME’Sのデータでは、
三軒茶屋 20.95万円
駒沢大学 20.96万円
となっています。
なんと、ほぼ同額です。(ライフルホームズ)
ここが今回の記事で最も重要なポイントでしょう。
この連載では「人気駅から1駅ずらして家賃を抑える」という考え方を紹介しています。
しかし、1駅ずらせば必ず家賃が安くなるわけではありません。
むしろ「本当に安くなるのか?」を最新の相場で確認することが重要です。
今回の三軒茶屋→駒沢大学では、少なくとも1LDKの平均相場だけを見る限り、家賃を下げる目的だけで駅を変えるメリットはほとんどありません。
ところが2LDKでは約2万8,000円の差
面白いのは、さらに広い間取りです。
2LDKの相場を見ると、
三軒茶屋 29.65万円
駒沢大学 26.86万円
となっています。
差は約2万7,900円です。(ライフルホームズ)
単純計算すれば年間で約33万5,000円。
二人暮らしやファミリーで2LDKを探す場合には、無視できない差です。
ただし、平均家賃はその時点で掲載されている物件の築年数、広さ、設備などにも影響されます。
特に広い間取りでは募集物件数が単身向けより少なくなる場合があり、平均値が物件構成に左右されやすくなります。
そのため、
「2LDKなら必ず駒沢大学の方が約3万円安い」
と考えるのは早計です。
あくまで「駒沢大学まで検索範囲を広げると、広めの物件で選択肢が変わる可能性がある」と捉えるのがよいでしょう。
三軒茶屋の強みは「街そのものが目的地」になること
三軒茶屋の魅力は、渋谷に近いことだけではありません。
駅周辺に飲食店やスーパー、商店街などが集まり、日常の買い物から外食まで多くのことを近所で済ませられます。
特に飲食店の選択肢は豊富です。
仕事帰りに食事をする。
休日に近所のカフェへ行く。
友人と飲みに行く。
こうした生活を重視する人にとって、三軒茶屋は単なる「渋谷に近い住宅街」ではなく、
自宅の最寄り駅そのものを楽しめる街
という価値があります。
そのため三軒茶屋に住みたい人は、「田園都市線に住みたい」というより「三軒茶屋という街に住みたい」と考えている場合も多いでしょう。
このタイプの人は、数千円の家賃差だけを理由に駒沢大学へ移ると、期待していた生活と違ってしまう可能性があります。
三軒茶屋は世田谷線も使える
交通面でも三軒茶屋には独自の強みがあります。
三軒茶屋駅では東急田園都市線に加えて、東急世田谷線を利用できます。
世田谷線は三軒茶屋と下高井戸を結び、世田谷、上町、宮の坂、山下、松原などを通ります。
日常的に世田谷線を利用する人はもちろん、世田谷区内を移動する機会が多い人には便利です。
一方、駒沢大学駅で利用できる鉄道路線は田園都市線です。
つまり、
渋谷方面への通勤が中心なら両駅とも候補
ですが、
世田谷線も使いたいなら三軒茶屋
という違いがあります。
家賃だけを比較する前に、自分が普段どの方向へ移動するのかを考えることが重要です。
駒沢大学の魅力は「駅前の派手さ」ではない
では、駒沢大学へ1駅ずらすメリットはどこにあるのでしょうか。
三軒茶屋と比較すると、駒沢大学駅前は大規模な繁華街ではありません。
もちろん飲食店やスーパーなど生活に必要な店舗はありますが、「休日にわざわざ駒沢大学駅前へ遊びに行く」という人は、三軒茶屋ほど多くないでしょう。
しかし、住む街として考えると別の魅力があります。
代表的なのが、駒沢オリンピック公園です。
広い公園が身近にある環境は、都内で部屋を探す際の大きな魅力になり得ます。
ジョギングをする。
散歩をする。
休日に体を動かす。
子どもと外で過ごす。
こうした暮らしを重視する人なら、駅前の繁華街より公園への近さに価値を感じるでしょう。
つまり三軒茶屋と駒沢大学は、
「にぎわいの三軒茶屋」と「住環境の駒沢大学」
という違いで比較すると分かりやすくなります。
駒沢大学は駅もリニューアルされている
駒沢大学駅では近年、駅そのものも変化しました。
東急電鉄は田園都市線地下区間5駅を対象とする「Green UNDER GROUND」プロジェクトを進めており、その第1弾となった駒沢大学駅のリニューアル工事は2025年3月31日に竣工しています。
駅設備の更新だけでなく、廃材や国産木材の活用、街の情報を発信するサイネージなども取り入れられています。(YouTube)
毎日利用する駅が使いやすいかどうかは、部屋そのものほど目立ちません。
しかし、長く住むのであれば意外に重要なポイントです。
物件検索では室内写真ばかりを見がちですが、実際に内見するときには最寄り駅から物件まで歩いてみることをおすすめします。
「三軒茶屋徒歩12分」と「駒沢大学徒歩5分」なら?
今回も、1駅ずらしと「駅徒歩」を組み合わせて考えてみましょう。
例えば同じ家賃で、
三軒茶屋駅徒歩12分
と、
駒沢大学駅徒歩5分
の物件があったとします。
「三軒茶屋に住んでいる」と言えることに魅力を感じるなら前者でしょう。
しかし毎日の通勤を考えると、後者にも大きなメリットがあります。
片道7分の違いなら往復14分。
週5日通勤すれば70分です。
1カ月なら数時間になります。
雨の日も、真夏も、寒い冬も駅まで歩きます。
しかも両駅とも田園都市線です。
「三軒茶屋という街そのもの」が必要ではなく、「田園都市線で渋谷方面へ通いやすいこと」が目的なら、駅名より駅徒歩を優先した方が満足度が高くなる可能性があります。
実は「もう1駅、2駅ずらす」という方法もある
今回の比較でもう一つ注目したいのが、さらに先の駅です。
2026年7月24日時点のLIFULL HOME’Sの田園都市線沿線比較では、寝室と生活空間を分けたい人向けのカテゴリーで、
三軒茶屋 20.94万円
駒沢大学 20.60万円
桜新町 21.99万円
用賀 17.70万円
となっています。(ライフルホームズ)
ここが面白いところです。
三軒茶屋から1駅ずらした駒沢大学では大きく下がらない。
さらに桜新町へ行くと、むしろ相場が上がっています。
ところが用賀まで行くと17万円台になります。
つまり、
「都心から1駅離れるごとに家賃が一定額ずつ下がる」わけではない
のです。
駅ごとの人気、住宅供給、街の特徴、物件構成などによって家賃相場は変わります。
だからこそ、1駅ずらしは「隣駅だけを見れば終わり」ではありません。
「1駅ずらし」は家賃を下げる魔法ではない
ここまで第1回から読んでいただいた人なら、今回の結果は少し意外だったかもしれません。
自由が丘→都立大学。
吉祥寺→三鷹。
中野→東中野。
これまでの比較では、間取りによっては隣駅へ移ることで家賃差が見えてきました。
しかし三軒茶屋→駒沢大学では、1Kの差は数千円、1LDKはほぼ同額です。
これはむしろ、この連載で伝えたい重要なポイントです。
「人気駅の隣なら安いはず」と決めつけてはいけません。
1駅ずらしは節約術というより、
検索範囲を広げて、家賃と住環境のバランスを探す方法
なのです。
駒沢大学が向いているのはどんな人?
現在の家賃相場を踏まえると、単身者が「家賃を大幅に下げたい」という理由だけで三軒茶屋から駒沢大学へ移るメリットは限定的です。
それよりも、
田園都市線を使えればよい。
駅前の大きな繁華街は必要ない。
落ち着いた住宅環境を重視したい。
公園の近くで暮らしたい。
ランニングや散歩を日常的に楽しみたい。
広めの間取りまで含めて物件を探したい。
という人が比較してみたい街です。
つまり駒沢大学は、
「三軒茶屋より安いから選ぶ街」というより、「同じ田園都市線でも違う暮らし方ができる街」
として考える方が分かりやすいでしょう。
三軒茶屋が向いているのはどんな人?
一方、三軒茶屋は、
飲食店の多さを重視する。
仕事帰りに外食することが多い。
駅周辺で買い物や用事を済ませたい。
世田谷線も利用したい。
街のにぎわいが好き。
「休日も近所で楽しみたい」。
という人に向いています。
特に現在の1K・1LDKの相場差を考えると、希望条件の物件が数千円程度の差で見つかるなら、
「それなら三軒茶屋を選びたい」
という判断も十分あり得ます。
逆に、同じ予算で駒沢大学なら駅近、築浅、広めといった別の条件を改善できるなら、1駅ずらす意味が出てきます。
部屋探しでは「平均家賃」より実際の物件を見る
今回の数字について、もう一つ注意しておきたいことがあります。
家賃相場は「その街にあるすべての部屋の家賃」を示すものではありません。
今回利用したLIFULL HOME’Sの家賃相場は、駅徒歩10分以内の賃貸物件の平均賃料を軸に、過去データなどを用いた独自ロジックで算出されています。管理費や駐車場代なども含まれていません。(ライフルホームズ)
実際の部屋探しでは、
築年数。
専有面積。
駅徒歩。
階数。
建物構造。
オートロック。
宅配ボックス。
バス・トイレ別。
ペット可。
などによって家賃は変わります。
したがって平均家賃を見て終わるのではなく、同じ条件を三軒茶屋と駒沢大学の両方に設定して検索するのがポイントです。
まとめ
三軒茶屋の家賃が高いと感じたとき、田園都市線で1駅先の駒沢大学まで検索範囲を広げる方法があります。
ただし今回の比較では、「1駅ずらせば大幅に安くなる」という結果にはなりませんでした。
最新のLIFULL HOME’Sの家賃相場では、
1K
三軒茶屋 11.98万円
駒沢大学 11.68万円
1LDK
三軒茶屋 20.95万円
駒沢大学 20.96万円
と、差は非常に小さくなっています。
一方、2LDKでは三軒茶屋29.65万円に対して駒沢大学26.86万円と差が見られます。(ライフルホームズ)
つまり今回の1駅ずらしで重要なのは、
「駒沢大学なら安い」ということではありません。
三軒茶屋のにぎわいや世田谷線が必要なのか。
それとも田園都市線が使えれば十分なのか。
駅前の飲食店を重視するのか。
公園や落ち着いた住環境を重視するのか。
そして三軒茶屋の駅遠物件と、駒沢大学の駅近物件ならどちらが暮らしやすいのか。
こうした条件を比較することで、「駅のブランド」だけでは見えなかった選択肢が出てきます。
1駅ずらしは、必ず家賃を下げられる裏技ではありません。
「住みたい駅」だけで検索していた部屋探しを、「自分が本当に欲しい暮らし」から考え直す方法です。
そして、それでも家賃が高いなら、もう1駅、2駅と検索範囲を広げてみる。
東京の部屋探しでは、この小さな発想の転換が、条件に合った物件を見つけるきっかけになるかもしれません。
次回はいよいよ最終回。
東京を越えて神奈川県側まで視野を広げ、**「二子玉川」と「溝の口」**を比較します。
今回は厳密には1駅ではありません。
しかし、「二子玉川に住みたいけれど家賃が高い」という人が田園都市線を数駅ずらしたとき、住居費はどこまで変わるのでしょうか。
「東京にこだわらず、多摩川を越えると家賃はどう変わる?」
最終回では、二子玉川と溝の口の家賃、交通アクセス、買い物環境、街の違いから、「1駅ずらし」をさらに一歩進めた部屋探しを考えます。




