「ビルの中を高速道路が走っている」。
そう聞いても、最初は意味が分からないかもしれない。
しかし大阪には、実際に高速道路が建物の中央を貫通しているように見えるビルが存在する。
大阪市福島区にある「TKPゲートタワービル」である。
今回はこの不思議な建物から、都市部の土地、不動産の権利、そして限られた土地を立体的に活用する考え方について見ていく。
本当に高速道路がビルを突き抜けている
TKPゲートタワービルは1992年に竣工した地上16階建ての建物である。
最大の特徴は、5階から7階に相当する部分を阪神高速11号池田線の梅田出口が通っていることだ。
外から見ると、道路がビルへ突っ込み、そのまま反対側へ抜けているように見える。
初めて見る人なら、
「建物が揺れないのか?」
「高速道路の上に部屋があるのか?」
「5階に車で行けるのか?」
と疑問を持つだろう。
実は建物と高速道路は別の構造
興味深いのは、高速道路が建物そのものによって支えられているわけではない点である。
道路とビルは構造的に分離され、高速道路は独立した支持構造によって通過している。
つまり、道路がビルの床を走っているというより、
「ビルの中に道路を通すための空間が確保されている」
と考えた方が分かりやすい。
エレベーターも5~7階には停止せず、4階の次は8階となる。
見た目以上に、建物と道路はきちんと分離されているのだ。
なぜこんな建物になったのか
ここが不動産として最も面白いところである。
都市を開発するときには、道路をつくりたい行政側と、土地を利用したい所有者側の希望が一致するとは限らない。
どちらかが全面的に譲れば話は簡単だが、都市部の土地には大きな価値がある。
そこで考えられたのが、
道路と建物を立体的に共存させる
という発想だった。
土地は平面だけで利用するものではない。
地下には地下鉄や地下街があり、地上には道路や鉄道、高架施設がある。
さらにその上には建物をつくることもできる。
東京や大阪のように土地が限られた都市では、「高さ」まで含めて不動産を考える必要があるのだ。
不動産は「土地を持つ=全部自由」ではない
土地を購入すると、その土地を自由に使えると思う人もいるかもしれない。
しかし実際には、
建築基準法、都市計画法、道路、用途地域、高さ制限、容積率、建ぺい率など、さまざまなルールの中で利用することになる。
また地下や上空など、立体的な空間に権利が設定されるケースもある。
ゲートタワービルは非常に特殊な例ではあるが、
不動産とは「土地の面積」だけではなく、「空間をどう利用するか」である
ことを分かりやすく見せてくれる建物でもある。
「変な土地」は必ずしも悪い土地ではない
住宅探しでも似たことがある。
例えば、
旗竿地、三角形の土地、細長い土地、高低差のある土地などは、一般的な四角い土地より敬遠されることがある。
確かに設計上の制約は増える。
しかし、価格や立地、設計方法によっては、その制約を逆に特徴へ変えられる場合もある。
「変な土地だから価値がない」と単純に判断するのではなく、
なぜその価格なのか、どんな建物が建てられるのか
を見ることが重要である。
まとめ
大阪のTKPゲートタワービルは、高速道路が建物の5~7階部分を通過する、日本でも極めて珍しい建築である。
しかし、その面白さは見た目だけではない。
限られた都市空間の中で、道路と不動産を共存させる方法を考えた結果として生まれた建物だからだ。
不動産を見るとき、私たちはどうしても土地の「広さ」や「形」だけに目を向けてしまう。
だが都市部では、地下から上空まで含め、限られた空間をどう使うかという発想が重要になる。
一見すると不思議な建物の裏側には、土地を最大限活用するための知恵が隠されているのである。




