商業施設にとって重要なのは、駅から近いことや店舗数だけではない。
「あの建物を見てみたい」
という理由そのものが、人を呼び込むことがある。
その代表例として面白いのが、大阪・難波の「なんばHIPS」や東京・世田谷の「M2」である。
今回は、個性的な商業建築から「建物そのものが広告になる」という不動産の考え方を見ていく。
巨大な砂時計のような「なんばHIPS」
大阪・難波にある「なんばHIPS」は2007年に開業した商業施設で、外観デザインには建築家・高松伸氏が関わっている。
最も目を引くのは、建物中央の大きくくびれた部分である。
普通の商業ビルであれば、少しでも多く床面積を確保したいところだ。
それにもかかわらず、外観に強烈な特徴を持たせている。
ここに商業不動産ならではの考え方がある。
商業施設では「目立つ」ことにも価値がある
住宅の場合、奇抜すぎるデザインは必ずしも歓迎されない。
しかし商業施設の場合は違う。
建物そのものが、
「待ち合わせ場所」
「写真を撮る場所」
「街のランドマーク」
になれば、それだけで認知度が高まる。
これは看板広告とは違う。
建物自体が広告になるのである。
M2は自動車施設から別用途へ
第1回でも触れた東京・世田谷のM2も興味深い。
巨大なイオニア式の柱を持つ強烈な外観は、もともと自動車メーカーのデザイン・ラボとして計画されたものだった。
その後、建物はほぼ元のデザインを維持しながら別用途へ転用されている。
これは商業不動産を考えるうえで重要な例である。
建物の用途は永久に固定されるとは限らない。
時代が変われば、求められる施設も変わる。
SNS時代では「撮りたくなる建物」も強い
現在はInstagram、TikTok、YouTubeなどによって、建物の写真や動画が簡単に共有される。
すると、
「何これ?」
↓
「どこにあるの?」
↓
「行ってみたい」
という流れが生まれる。
商業施設にとっては、利用者自身が建物を紹介してくれる状態である。
そのため近年の商業不動産では、商品を売る場所だけでなく、
そこへ行く理由をつくる空間
がより重要になっている。
ただし奇抜なら成功するわけではない
もちろん、変わったデザインにすれば商業施設が成功するわけではない。
維持管理費、修繕費、動線、テナントの使いやすさなども重要である。
建築として評価されても、商業施設として収益が上がらなければ不動産経営は難しい。
面白い建物ほど、
「デザイン」と「使いやすさ」
の両立が求められる。
まとめ
なんばHIPSなどの個性的な商業建築を見ると、建物そのものが街の広告塔になることが分かる。
商業不動産では、駅距離や床面積だけでなく、
「覚えてもらえるか」
「訪れたくなるか」
「街のランドマークになれるか」
という価値も存在する。
SNSによって写真や動画が広がる現在、建築デザインが集客へ与える影響は以前より大きくなっている。
「変わった建物」は、単なる遊びではない。
建物そのものをブランド化する、一つの不動産戦略でもあるのだ。




