中古マンションを内見するとき、多くの人が最初に確認するのは室内です。
リビングは広いか。
キッチンは使いやすいか。
水回りはきれいか。
収納は十分か。
眺望はどうか。
もちろん、どれも大切です。
しかしマンションを長く所有するなら、室内と同じくらい確認したいものがあります。
それが、
「マンション全体がどう管理されているか」
です。
どれほどきれいにリフォームされた部屋でも、建物全体の修繕積立金が不足していたり、大規模修繕が何年も延期されていたりすれば、将来大きな負担が生じる可能性があります。
反対に築年数が進んでいても、修繕計画が整い、必要な工事を実施し、管理組合が機能しているマンションもあります。
「マンションは管理で選ぶ」最終回は、これまで6回で取り上げてきた内容をまとめながら、中古マンション購入前に確認したい管理チェック10項目を紹介します。
チェック1 エントランスより先に「管理組合が機能しているか」
マンション管理で最初に確認したいのは、管理組合がきちんと機能しているかです。
マンションの管理を行う主体は、管理会社ではありません。
所有者全員で構成する管理組合です。
管理会社は、管理組合から委託を受けて清掃や会計、設備管理などの実務を行います。
そのため、
「大手管理会社だから安心」
だけでは判断できません。
重要なのは、
総会がきちんと開催されているか。
理事会などで必要な課題を話し合っているか。
修繕や管理について意思決定できているか。
という点です。
国土交通省の管理計画認定制度でも、管理組合の運営に関する基準として、集会、いわゆる総会が年1回以上開催されていることなどが求められています。
管理会社の名前より、「所有者側がきちんと管理に参加しているか」を見る。
これが最初のポイントです。
チェック2 管理規約は現在のマンションに合っているか
次に確認したいのが管理規約です。
管理規約とは、
ペットを飼えるか。
専有部分をどこまでリフォームできるか。
駐車場をどう利用するか。
管理費や修繕積立金をどう扱うか。
総会をどう運営するか。
など、マンション内の基本ルールを定めたものです。
管理規約があるだけでは十分ではありません。
何十年も前に作ったまま、現在の法律や生活実態に合わなくなっている場合もあります。
国土交通省は2025年10月、マンション関係法の改正などに合わせてマンション標準管理規約を改正しました。改正区分所有法は2026年4月1日に施行されており、総会の開催手続きや決議要件など、管理組合運営にも関係する内容が見直されています。
中古マンションを見るなら、
「規約があるか」だけでなく、「必要に応じて見直されているか」
にも注目したいところです。
チェック3 修繕積立金は「月額」ではなく「将来不足しないか」
物件情報には、
管理費1万2,000円。
修繕積立金9,000円。
といった数字が掲載されています。
しかし修繕積立金を見るとき、
「9,000円なら安い」
と判断するのは早いでしょう。
重要なのは、
現在いくら積み立てているか。
積立金の総残高はいくらか。
今後いくら必要になるのか。
将来値上げする予定があるか。
です。
国土交通省も、中古マンション購入者向けの管理状況チェックシートで、現在の積立額だけでなく、長期修繕計画上の将来工事費に対して修繕積立金が不足しないかを確認するよう案内しています。
つまり、
修繕積立金は「安いか高いか」より「足りるかどうか」。
第2回、第5回で見てきた通り、ここは非常に重要です。
チェック4 修繕積立金の「値上げ予定」を確認する
現在の修繕積立金だけではなく、
将来の値上げ予定
も確認しましょう。
段階増額積立方式を採用しているマンションでは、数年ごとに修繕積立金を引き上げる計画になっていることがあります。
たとえば現在月8,000円でも、
3年後に1万2,000円。
8年後に1万6,000円。
という計画になっている可能性があります。
国土交通省のチェックシートでも、管理費や修繕積立金の変更予定と、その値上げ予定額を確認することが推奨されています。
中古マンション購入では、
「今払う金額」ではなく「10年後に払う可能性がある金額」
まで考えておく必要があります。
チェック5 長期修繕計画は「あるか」より「中身と更新時期」
マンション管理で最も重要な資料の一つが、長期修繕計画です。
長期修繕計画には、
外壁。
防水。
給排水設備。
エレベーター。
機械式駐車場。
などについて、
いつごろ修繕するのか。
どの程度の費用を見込んでいるのか。
が記載されています。
国土交通省の管理計画認定制度では、長期修繕計画について、計画期間が30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていることなどが基準となっています。
ただし、
「長期修繕計画があります」
だけでは安心できません。
何年前に作られたものなのか。
工事価格は現在の水準に近いのか。
設備更新まで反映されているのか。
も確認する必要があります。
長期修繕計画は、マンションの未来予想図。
古い未来予想図のままでは、現実と合わなくなる可能性があります。
チェック6 「大規模修繕済み」ではなく修繕履歴を見る
中古マンションの広告には、
「2024年大規模修繕工事実施済み」
などと書かれていることがあります。
これは安心材料の一つです。
しかし、
大規模修繕済み=すべて問題なし
ではありません。
何を工事したのか。
外壁だけなのか。
防水も行ったのか。
給排水設備はどうなのか。
エレベーター更新は別なのか。
を見る必要があります。
国土交通省も、長期修繕計画だけではなく、実際にこれまでどのような修繕・改良工事を行ってきたか、その履歴を確認することを勧めています。
中古マンションでは、
「計画があること」と「実際に計画を実行してきたこと」の両方
が重要です。
チェック7 これから数年以内に大きな工事はないか
過去の工事だけでなく、
次に何が予定されているか
も見ておきたいところです。
たとえば、
来年に大規模修繕。
3年後にエレベーター更新。
5年後に給排水管工事。
という予定があるかもしれません。
国土交通省のチェックシートでも、今後予定されている修繕・改良工事の時期や内容を確認することが挙げられています。
これは購入後の負担にも関係します。
大きな工事が続けば、
修繕積立金の値上げ。
一時金。
借入れ。
などが検討される可能性があります。
購入するときは、
過去の修繕履歴と未来の工事予定をセットで見る。
これがポイントです。
チェック8 総会議事録には「マンションの本音」が出る
購入前に可能であれば確認したいのが、
管理組合の総会議事録
です。
総会議事録には、そのマンションが現在どんな問題を抱えているのかが表れていることがあります。
たとえば、
修繕積立金を値上げするか。
大規模修繕の工事費が想定より高い。
機械式駐車場を廃止するか。
漏水事故が発生している。
管理会社を変更するか。
管理規約を改正するか。
建て替えや再生について検討するか。
といった内容です。
販売図面や室内写真だけでは分からない情報が出てくる可能性があります。
特に、
「同じ議題が何年も繰り返されているのに決まっていない」
場合は注目したいところです。
問題があること自体より、
問題を把握し、話し合い、決定できているか
を見ることが重要です。
チェック9 現地では「部屋に入る前」を見る
マンション内見では、玄関を開ける前から管理チェックが始まっています。
エントランス。
郵便受け。
掲示板。
廊下。
階段。
駐輪場。
ゴミ置き場。
植栽。
こうした共用部分を見てみましょう。
たとえば、
ゴミが放置されている。
チラシが大量にたまっている。
共用廊下に私物が多い。
駐輪場が無秩序。
掲示板に古い紙が何年も残っている。
という状態なら、その理由を考える必要があります。
もちろん、
「少し汚れている=管理が悪い」
とは限りません。
しかし日常管理の状態は、建物全体の管理姿勢を知る一つの手掛かりになります。
逆に、
清掃されている。
掲示物が整理されている。
設備点検の案内が分かりやすい。
といったマンションは、日常的な管理が機能している可能性があります。
内見では部屋だけでなく、マンション全体を一つの物件として見る。
これを意識したいところです。
チェック10 「20年後、このマンションを誰が買うか」を考える
最後のチェックは、資料には直接書かれていません。
自分自身で考える項目です。
それは、
「20年後、このマンションを買いたい人がいるだろうか」
という視点です。
現在築30年なら、20年後には築50年。
現在築40年なら、20年後には築60年です。
そのとき、
駅から近いか。
生活利便性があるか。
耐震性はどうか。
修繕を続けられているか。
管理組合は機能しているか。
積立金はあるか。
設備更新は進んでいるか。
必要であれば再生について話し合えるか。
といった要素が重要になります。
マンションの資産価値は、管理だけで決まるものではありません。
立地。
需要。
景気。
金利。
築年数。
間取り。
周辺の供給。
など、さまざまな要因があります。
だから、
「管理が良ければ価格が必ず下がらない」
とは言えません。
しかし、同じような立地や築年数なら、
きちんと維持されているマンションと、必要な修繕を先送りしているマンションでは、将来の評価に差が生じる可能性があります。
「管理計画認定マンション」なら絶対安心?
マンションを探していると、
「管理計画認定マンション」
という言葉を目にすることがあります。
管理計画認定制度では、
総会の開催。
管理規約。
管理費と修繕積立金の区分経理。
長期修繕計画。
修繕積立金。
組合員名簿・居住者名簿。
などについて一定の基準が設けられています。
そのため、認定の有無は管理状態を見る一つの材料になります。
ただし、
認定されていれば将来何も問題が起きない
という制度ではありません。
また、認定を取得していなくても適切に管理されているマンションはあります。
認定の有無だけで判断するのではなく、
「どのような管理が行われているか」
を見ることが重要です。
修繕積立金の滞納も確認したい
もう一つ忘れてはいけないのが、
管理費や修繕積立金の滞納です。
毎月の積立額が十分でも、滞納する区分所有者が多ければ、計画どおりお金が集まりません。
さらに購入しようとしている住戸そのものに滞納がある場合もあります。
国土交通省の中古マンション向けチェックシートでも、購入予定住戸の管理費などに滞納がないか確認することが挙げられています。
中古マンションを買うときは、
建物全体の財務状況と、自分が購入する部屋の滞納状況を分けて確認する
ことが重要です。
管理費が高いマンションが悪いわけでもない
管理費についても、
「安い=良い」
とは限りません。
エレベーターが複数ある。
コンシェルジュがいる。
内廊下。
タワーパーキング。
ゲストルーム。
ラウンジ。
大規模な植栽。
などがあれば、それだけ維持管理費が必要になります。
重要なのは、
払っている管理費に対して、どんな管理サービスを受けているのか
です。
一方で、共用設備が少ないのに管理費が非常に高い場合は、理由を確認してもよいでしょう。
管理費も修繕積立金も、
金額だけではなく、
「なぜその金額なのか」
を見ることがポイントです。
「修繕積立金残高○億円」という数字にも惑わされない
大型マンションでは、
「修繕積立金残高3億円」
という数字を見ることがあります。
かなり安心できそうです。
しかし500戸のマンションと50戸のマンションでは、同じ3億円でも意味が違います。
さらに、
翌年の大規模修繕で2億円。
その後エレベーター工事で1億円。
という予定なら、余裕があるとは限りません。
国土交通省のチェックシートでも、現在の積立額だけではなく、将来予定される工事費との関係を見ることが重要とされています。
つまり、
残高だけを見ず、支出予定まで見る。
マンションの財務状態を見る基本です。
「築浅なのに管理が悪い」こともある
ここまで読むと、
「築古マンションだから管理チェックが重要なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし築浅でも管理は重要です。
新築から10年程度なら、
まだ大規模修繕を経験していない。
積立金が低く設定されている。
管理組合の運営経験が少ない。
という場合もあります。
むしろ築30年のマンションで、
大規模修繕を2回実施。
長期修繕計画も更新。
積立金も確保。
総会も毎年開催。
という物件なら、過去の管理実績を確認できます。
第3回でも触れたように、
中古マンションのメリットは「管理の履歴を見ることができる」こと
でもあります。
資産価値を守るのは「住民が住みたいマンションを維持すること」
マンションの資産価値というと、
駅徒歩何分。
都心まで何分。
再開発。
眺望。
ブランド。
などに目が向きます。
もちろん重要です。
しかしマンションは、建物そのものを何十年も使用します。
エントランスが傷んでいる。
雨漏りが続いている。
エレベーターが古い。
配管トラブルが多い。
修繕費が足りない。
所有者同士で何も決められない。
となれば、立地だけでは補えない問題が出てきます。
一方で、
必要な修繕を行う。
設備を更新する。
清掃を続ける。
ルールを見直す。
将来の費用を準備する。
という管理を続ければ、
「ここに住みたい」
「ここを借りたい」
と思う人が残りやすくなります。
マンション管理とは、
建物を直すことではなく、「これからも選ばれる住環境」を維持すること
ともいえるでしょう。
中古マンション購入前の「管理チェック10項目」
最後に、今回の10項目をまとめます。
1.管理組合が機能しているか
総会が定期的に開催され、必要な意思決定が行われているか。
2.管理規約が整備・更新されているか
古い規約のまま放置されていないか。
3.修繕積立金は将来不足しないか
現在の月額だけでなく、残高と将来支出を見る。
4.修繕積立金の値上げ予定はあるか
段階増額方式や一時金予定も確認する。
5.長期修繕計画が現実的か
30年以上の計画があり、最近見直されているか。
6.過去の修繕履歴はどうなっているか
計画だけでなく、必要な工事を実際に行ってきたか。
7.今後どんな大規模工事が予定されているか
外壁、防水、配管、エレベーターなどの予定を見る。
8.総会議事録に重大な問題がないか
資金不足、工事延期、設備故障などの議論を確認する。
9.共用部分の日常管理はどうか
エントランス、ゴミ置き場、掲示板、駐輪場などを見る。
10.20年後も選ばれるマンションか
築年数が進んでも、住みたい・買いたい人がいる状態を維持できるか考える。
この10項目を見るだけでも、
販売図面だけでは分からないマンションの姿がかなり見えてきます。
まとめ
全7回にわたって、
「マンションは管理で選ぶ」
というテーマを見てきました。
第1回では、マンションの資産価値と管理の関係。
第2回では、修繕積立金。
第3回では、築30年・40年の築古マンション。
第4回では、大規模修繕。
第5回では、修繕資金不足。
第6回では、建て替えと再生。
そして最終回は、中古マンション購入前の管理チェックを取り上げました。
シリーズを通して最も伝えたいのは、
マンションは「部屋」だけを買う不動産ではない
ということです。
購入すれば、
エントランス。
外壁。
屋上。
エレベーター。
配管。
土地。
そして管理組合。
これらをほかの所有者と一緒に維持していくことになります。
だから中古マンションを選ぶとき、
価格。
立地。
間取り。
築年数。
だけを見るのでは十分ではありません。
管理費。
修繕積立金。
長期修繕計画。
修繕履歴。
総会議事録。
管理組合。
将来の工事。
まで見ることで、そのマンションの本当の姿が見えてきます。
そして、
「管理が良いマンションなら価格が必ず上がる」
わけでもありません。
不動産価格は立地、市況、金利、需給など多くの要因で変化します。
しかしマンションを長期間所有するなら、
必要な修繕ができる。
必要なお金を準備できる。
住民が意思決定できる。
建物をきちんと維持できる。
という状態は、大きな安心材料になります。
マンション購入で見るべきなのは、
「今、新しいか」
ではありません。
「これからも、きちんと年を重ねられるマンションか」
です。
築10年でも、いつか築30年になります。
築30年なら、やがて築50年になります。
そのときも、
住みたい人。
借りたい人。
買いたい人。
がいるマンションであり続けられるか。
中古マンションを選ぶなら、
「今の価格」だけではなく「未来の管理」まで見る。
それが、長く所有できるマンションを見極める一つの考え方ではないでしょうか。
引用元・参考元
- 国土交通省「マンション管理計画認定制度」
- 国土交通省「マンション標準管理規約」
- 国土交通省「マンション管理に関する各種ガイドライン等」
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン」
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
- 国土交通省 マンション管理・再生ポータルサイト「これだけは知っておきたい!マンションの管理状況チェックシート」


