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賃貸経営リスクを露呈させたレオパレスの今後

2020/11/09
2023/03/13
不動産投資コラム

賃貸経営リスクを露呈させたレオパレスの今後

日本でも長い歴史を持ち、有名なレオパレスの問題が露呈したのはまだ記憶に新しいのではないでしょうか。

問題が露呈して以降、最近ではメディアであまり見聞きしなくなりましたが、今回はレオパレスの現在や今後について、そして業者選びの重要性を考えてみましょう。

賃貸経営オーナーに衝撃を与えたレオパレス

少子高齢化や都市一極集中により空き家や空き地が増え、これらの物件を相続で取得した人たちがアパートなどに建て替えて賃貸経営を始めるというケースが増えました。

かつては、自ら計画して建てたアパートを自ら管理して賃貸経営をする、いわゆるプロの大家さんが多かったのですが、最近では土地があっても賃貸ノウハウは皆無という副業オーナーが増えています。
そのような未経験者でも賃料収入が得られるのは、賃貸経営請負人的な専門業者の存在があるのです。

計画から設計、建築、入居者募集から管理に至るまで丸投げできるので、土地や資金さえあれば、家賃収入が得られる仕組みになっています。

その「賃貸経営成功請負人」の代表格が長い歴史を持つレオパレスです。
独自開発の賃貸住宅を建て、積極的なテレビCMでブランドの知名度を上げ信用度を高め、スムーズに入居者を得られるという仕組みを作りあげました。

初期費用が多少高くても、入居者が確実に入り空室リスクが少ないとなれば、レオパレスブランドの賃貸住宅を建てておけば安泰と考えていたオーナーが多数存在しました。
その、信頼していたオーナーをはじめ、新たに賃貸経営をスタートさせようと計画段階にあったオーナーに衝撃を与えたのが施工不備の発覚です。

2018年4月27日から2019年5月29日にかけて、次々に問題が露呈しました。

オーナー2人が気付いたことをキッカケに、開発・販売した集合住宅に確認通知図書に記載されていた小屋裏界壁が施工されていないことが判明したのです。それにより、図面と施工マニュアルの整合性の不備があり、界壁施工が建築基準法に抵触する可能性が高まりました。

レオパレスでは図面と現場との照合確認や、社内検査体制も不十分であったことを理由に挙げています。
しかし、「費用を抑えて利益を上げるために故意に行っていた」というのがオーナーをはじめ、世間一般の見立てです。問題の発覚により、レオパレスオーナーとの間では訴訟問題が発生するとともに、防火面で問題があるため住むことができなくなった入居者への賠償問題などが巻き起こりました。

他の業者を使って賃貸経営を行っているオーナーの間でも、自分の物件は大丈夫なのかと不安になり、専門家にインスペクションを依頼する人も増えました。

賃貸経営を検討していた方々にとって、知名度があるから信頼できるわけではないという「業者選びの難しさ」や選定基準の見直しが迫られました。

レオパレスの現在の状況

レオパレスではこの問題の発覚を受け、不備に係る補修工事費用や付帯費用等の追加発生、補修の遅れによる入居率の停滞、信用低下に伴う建物建築請負工事の受注減少が発生しています。

2020年3月期の第1四半期決算の発表によれば、不備に起因した事業収益の悪化により、売上高は前年同期比▲8.2%(▲1,039億円)、営業損失は前年同期比から25億円増加の▲68億円に上っています。

また、損失の穴埋めのため賃貸用不動産の売却等に伴う減損損失37億円、補修工事関連損失19億円、希望退職制度実施に伴う退職特別加算金24億円を計上した結果、当期純損失は前年同期比83億円増大の▲141億円の損失となりました。

その結果として、純資産も134億円減少し、118億円の債務超過に陥るに至ったのです。

この状況を解消すべく、2020年6月5日付で抜本的な事業戦略再構築と構造改革を行うことを公表し、1,000名規模の希望退職を含む人的・物的資源の再配置や2020年7月以降には補修工事の規模・体制を一旦縮小させて業績および財務状況の改善を図るとしています。
資金確保のために保有する投資有価証券の売却や役員報酬の減額、取締役・執行役員数の削減を行いました。

また、第三者割当の方法による新株式発行により120億円、新株予約権付ローンにより300億円、並びに連結子会社レオパレス・パワーの優先株式発行により150億円、総額約570億円の資金調達によって債務超過を解消。

さらに、自己資本拡充による財務体質改善を実現するとともに、当社施工物件で判明した界壁等の施工不備に係る改修工事費用や既存借入金の返済および社債の償還といった必要不可欠な資金需要に対応します。

レオパレスの今後

資材や人件費の高騰に加え、自治体との工事計画の調整遅れなどにより、補修工事も遅々として進まず、オーナーの不安が増すばかりの中、2020年9月30日に大きなニュースが飛び込んできました。

ソフトバンクグループ系の米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループから出資と融資の合計で約570億円の支援を受けると発表したのです。
資金的な支援を受けることで118億円にもおよぶ債務超過を解消し、早期の経営立て直しを目指すというものになります。

この計画によれば、レオパレスが2020年11月に普通株120億円を発行し、フォートレスが約26%を保有する筆頭株主となる見込みです。また、子会社の優先株150億円の発行や新株への切り替えが可能な300億円におよぶ融資も実施される見通しです。

調達した資金の使い道として、補修工事に340億円、子会社の借り入れ返済に134億円、社債返還に65億円が予定されています。

これで業績回復が見込めるかといえば、まだ不安材料は尽きません。その一番の理由が資金調達コストの驚くべき高さです。300億円の新株予約権付き融資の金利は、利息制限法の上限金利15%に達するレベルの年率14.5%の高金利です。

これにはフォートレス側から条件が付されており、レオパレスブランドの賃貸住宅で一定の入居率が達成されれば、年率10%に軽減されると言われています。

子会社の150億円の優先株には最大7%の配当を支払う約束となっており、年間で最大54億円もの収益圧迫が見込まれているのです。

2020年5月以降の入居率は、コロナショックなどの影響も重なり、採算ラインである80%を下回る状況が続いています。
入居率の回復には施工不良物件の早期改修と、ブランドの信頼回復が欠かせない状態であり、そうでなければ、高額な資金援助を得ても安泰とは言えません。

業者選びの重要性

フォートレスはニューヨークを本拠とする投資ファンドであり、リーマンショックが起こった2009年から日本における不動産投資事業に本格的に乗り出しました。

2017年に日本のソフトバンクグループ傘下に入ったことで、10万6000戸もの公営住宅不動産の取得に踏み切っています。古い物件をリフォームして最低賃料2万円台というビレッジハウスとして運用をスタートさせ、うち約5万戸で稼働率を約2倍にしました。

レオパレスの入居者は、社宅利用などの法人契約が6割を占めている一方で、ビレッジハウスの入居者は中低所得者とターゲット層が異なるため、賃貸営業を一緒に行うことによるシナジー効果を期待する向きもあります。

もっとも、肝心のレオパレスの入居率を改善させるには現状を踏まえた賃料設定が欠かせません。物件の価値やブランドの価値が損なわれた中で入居率を上げるには、賃料の減額が必須となり、賃貸オーナーの収益を圧迫します。

レオパレスでは2021年3月までは施工不良問題を理由にした賃料の減額はしないとオーナーに約束しましたが、2021年4月以降は更新時期が到来したサブリース契約から、その時点の相場に合わせた賃料に順次変更されることが懸念されます。

多額の資金支援を得るニュースは、株式投資家にとっては買い材料とも言われましたが、賃貸オーナーにとっては賃料減額の不利益に迫られる一層の懸念材料となりました。

こうした事態を踏まえ、今後、賃貸経営をしていくうえでは、パートナーとなる業者選びの選定基準の見直しを迫られることになるでしょう。

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