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【連載コラム:地震から住まいと暮らしを守る 第3回】旧耐震と新耐震は何が違う?1981年以前のマンションは危険なのか

2026/08/24
連載

中古マンションや中古戸建てを探していると、「旧耐震」「新耐震」「耐震等級」といった言葉を目にすることがあります。

特に大きな地震が起きた後は、「1981年以前の建物は危険なのか」「新耐震なら安心なのか」と気になる人も多いでしょう。

結論からいえば、1981年以前の建物だから直ちに危険、1981年以降なら絶対安全という単純な話ではありません。

重要なのは、どの基準で建てられたのか、耐震診断や改修が行われているのか、そして建物が現在どのように管理されているのかを総合的に見ることです。

今回は、旧耐震基準と新耐震基準の違い、耐震等級の意味、中古マンションや戸建てを選ぶ際に確認したいポイントを詳しく解説します。

旧耐震と新耐震の境目は「1981年6月1日」

まず押さえておきたいのが、旧耐震基準と新耐震基準の境目です。

新耐震基準は、1981年6月1日から適用されました。国土交通省も、新耐震基準の適用日を昭和56年6月1日としています。 (国土交通省)

そのため一般的には、

1981年5月31日以前の基準=旧耐震基準
1981年6月1日以降の基準=新耐震基準

と整理されます。

ただし、ここで注意したいのが「完成年月」だけで判断しないことです。

重要なのは、原則として建築確認を受けた時期です。

例えば1982年に完成したマンションでも、建築確認を受けたのが1981年6月1日より前なら、旧耐震基準で設計されている可能性があります。国土交通省も、新耐震基準適用以前に建築確認を受けた建物については、従来の構造計算書だけで新耐震基準への適合性を確認することはできないと案内しています。 (国土交通省)

中古マンションを検討するときは、「1982年築だから新耐震」と自分だけで判断せず、不動産会社などへ確認するのが安全です。

旧耐震基準は何を想定していたのか

旧耐震基準と新耐震基準の違いを理解するには、「どの程度の地震を想定していたか」を見ると分かりやすくなります。

旧耐震基準では、主に中規模の地震に対して建物が大きく損傷しないことを重視していました。

一方、新耐震基準では、大規模地震が発生した場合でも、建物が倒壊・崩壊して人命に重大な危険を及ぼさないことを重視する考え方が強化されました。

つまり、新耐震基準は、

「大きな地震でも建物を無傷にする」

ための基準ではありません。

大規模な地震でも、建物が一気に倒壊して人命が失われることをできるだけ防ぐことが大きな目的です。

ここは非常に重要です。

「新耐震だから地震後もそのまま住める」

「新耐震なら壁にひびも入らない」

という意味ではありません。

地震の規模や揺れ方によっては、内外装、設備、配管などに被害が出る可能性があります。

なぜ1981年に耐震基準が変わったのか

耐震基準は、一度決めたら永久に同じというものではありません。

大きな地震被害を経験するたびに、建物の被害状況が検証され、制度や技術が見直されてきました。

1981年の新耐震基準も、それまでの地震被害を踏まえて導入されたものです。

その後も1995年の阪神・淡路大震災や2016年の熊本地震などを経て、既存建築物の耐震化や木造住宅の耐震性能確認などが進められています。

国土交通省は、1981年以前に建築された建物には耐震性が不十分なものが多く存在するとして、耐震診断や耐震改修を推進しています。 (国土交通省)

つまり「1981年」という年は、単なる築年数の区切りではありません。

日本の建物の地震対策を考えるうえで大きな制度上の境目なのです。

旧耐震マンションは全部避けるべき?

中古マンションを探していて、

「このマンションは旧耐震です」

と言われると、候補から外したくなるかもしれません。

しかし、旧耐震だからといって、すべての建物が同じ耐震性能というわけではありません。

旧耐震マンションでも、

耐震診断を実施している。

耐震補強工事を行っている。

適切な大規模修繕を続けている。

という建物があります。

国土交通省も、旧耐震基準の建物については、まず耐震診断を行い、耐震性が不足していれば耐震改修や建て替えを検討するよう案内しています。 (国土交通省)

つまり中古物件では、

「旧耐震か新耐震か」だけで判断を終わらせない

ことが重要です。

旧耐震なら、

「耐震診断は行われていますか?」

「診断結果はどうでしたか?」

「耐震改修をしていますか?」

と、一段深く確認する必要があります。

旧耐震マンションには別のメリットがある場合も

旧耐震マンションは築年数が古いため、一般的に新築や築浅マンションより価格が抑えられている場合があります。

また、都心の好立地や駅前など、「現在では同じ規模のマンションを建てにくい場所」に立っているケースもあります。

そのため、

「築古だから価値がない」

とも言い切れません。

不動産では、

立地。

価格。

建物状態。

耐震性能。

管理。

修繕。

などを総合的に見る必要があります。

価格が安い理由が単に築年数なのか、それとも耐震性や管理状態に課題があるのかを確認することが重要です。

「新耐震だから安心」も危険な思い込み

反対に、新耐震基準の建物であれば何も確認しなくてよいのでしょうか。

もちろん、そうではありません。

新耐震基準は重要な判断材料ですが、建物の安全性はそれだけでは決まりません。

例えば、

地盤。

施工品質。

建物形状。

経年劣化。

過去の修繕状況。

地震による過去の被害。

なども影響します。

さらにマンションでは、建物の構造だけでなく、管理組合の状態や修繕積立金も重要です。

築40年近い新耐震マンションも存在します。

「新耐震」という言葉だけを見ると新しい建物のように感じますが、1981年からすでに40年以上が経過しています。

新耐震であっても、古い建物なら維持管理の状態を確認することが必要です。

木造住宅では「2000年」も重要な区切り

戸建て住宅の場合は、1981年に加えて2000年も確認したいポイントです。

国土交通省は熊本地震を踏まえ、1981年6月1日以降に建築された新耐震基準の木造住宅でも、2000年以前の住宅について耐震性能を確認する方法を公表しています。 (国土交通省)

2000年には、木造住宅について地盤、接合部、耐力壁などに関する規定が明確化・強化されました。

そのため木造住宅では、

1981年以前
1981年以降~2000年以前
2000年以降

という3つの時期を意識すると分かりやすいでしょう。

もちろん、2000年以前だから危険、2000年以降なら絶対安全という意味ではありません。

中古戸建てでは、耐震診断やリフォーム履歴、基礎や構造部分の状態も確認したいところです。

「耐震等級」とは何なのか

ここで、もう一つよく目にする言葉があります。

「耐震等級」

です。

耐震等級は、住宅性能表示制度の中で、地震に対する建物の構造躯体の性能を段階的に示すものです。国土交通省の最新ガイドでも、地震に対する構造躯体の倒壊等防止や損傷防止を等級で表示する仕組みが示されています。 (国土交通省)

一般的には、

耐震等級1
耐震等級2
耐震等級3

の3段階があります。

数字が大きいほど、より高い耐震性能を想定した基準です。

耐震等級1は「弱い家」という意味ではない

「耐震等級1」と聞くと、

「3段階の一番下だから危険なのでは?」

と思うかもしれません。

しかし耐震等級1は、建築基準法で求められる耐震性能を満たす水準を基本としています。

つまり、

耐震等級1=耐震性がない

という意味ではありません。

そのうえで耐震等級2、3になるほど、より大きな地震力を想定した構造性能となります。

そのため、新築戸建てなどを比較する際には、耐震等級を一つの判断材料として利用できます。

ただし、耐震等級だけで住宅全体の安全性を判断できるわけではありません。

土地の地盤や施工状態なども重要です。

耐震等級2・3なら地震で壊れない?

これも注意したいところです。

耐震等級が高いからといって、

「どんな地震でも絶対に壊れない」

という意味ではありません。

耐震等級は、一定の評価方法に基づいて建物の構造性能を示したものです。

実際の地震では、

震源。

揺れの方向。

地盤。

建物の劣化。

繰り返しの地震。

など、さまざまな要因があります。

そのため「耐震等級3だから絶対安全」と断定することはできません。

耐震等級は非常に有用な情報ですが、あくまで住宅選びの判断材料の一つとして見ることが大切です。

「新耐震」と「耐震等級」は同じものではない

ここは混同されやすいポイントです。

新耐震基準と耐震等級は、同じものではありません。

新耐震基準は、建築基準法に基づく建物の最低限の安全基準に関係する考え方です。

一方、耐震等級は住宅性能表示制度の中で、住宅の耐震性能を比較しやすくするために表示するものです。

住宅性能表示制度は2000年から運用が始まり、現在まで多くの住宅で利用されています。国土交通省によると、設計住宅性能評価書の交付ベースで累計約466万戸が利用されています。 (国土交通省)

つまり、1980年代や1990年代の中古マンションを探していて「耐震等級が書かれていない」というのは珍しいことではありません。

耐震等級が表示されていないからといって、直ちに耐震性能が低いという意味でもありません。

中古マンション購入で確認したい「耐震診断」

旧耐震マンションを検討するときに特に重要なのが耐震診断です。

耐震診断では、建物の構造や強度などを調べ、地震に対してどの程度の耐震性能があるのかを評価します。

旧耐震だから危険かどうかを築年数だけで判断するのではなく、実際に診断した結果を見ることが重要です。

不動産会社や管理会社へ、

「耐震診断を実施していますか?」

「結果は確認できますか?」

と質問してみましょう。

マンションによっては、診断結果を踏まえて耐震補強工事を行っているケースもあります。

耐震改修をしていても内容を確認する

「耐震改修済み」と書かれていれば安心に感じます。

しかし、可能であれば、どのような改修を行ったのかも確認したいところです。

柱や壁を補強したのか。

鉄骨ブレースを追加したのか。

基礎を補強したのか。

建物によって改修方法は異なります。

また、大規模な耐震改修では費用もかかります。

マンションの場合、その費用を修繕積立金から支出した結果、今後の大規模修繕資金が十分残っているかという別の問題もあります。

耐震性能だけでなく、耐震改修後のマンション財政まで見ることができれば、より安心です。

旧耐震マンションでは住宅ローンにも注意

中古マンション購入では、耐震性が融資や制度利用へ影響する場合があります。

金融機関によって融資条件は異なり、建物の築年数や耐震性などが審査材料になることがあります。

また、住宅ローン減税などの制度についても、対象となる住宅の要件は時期によって変更されます。

そのため、

「旧耐震だからローンが組めない」

「新耐震なら必ず住宅ローン減税が使える」

と自己判断しないようにしましょう。

購入時点の制度と、利用する金融機関の条件を確認する必要があります。

旧耐震マンションほど「管理」を見る

築年数が古いマンションほど、耐震性と同じくらい重要になるのが管理状態です。

長期修繕計画。

修繕積立金。

過去の大規模修繕。

給排水管。

エレベーター。

屋上防水。

外壁。

こうした部分が適切に維持されているかを確認します。

建物は、「完成したときの耐震性能」のまま永久に使えるわけではありません。

適切な点検・修繕を続けることが重要です。

新耐震か旧耐震かというスタート地点の違いと、その後40年、50年をどう管理してきたかという現在の状態を両方見る必要があります。

物件情報ではどこを確認する?

中古住宅を探すときは、まず次の情報をチェックしてみましょう。

建築年月。

建築確認時期。

耐震基準。

構造。

耐震診断の有無。

耐震改修履歴。

住宅性能評価の有無。

管理状況。

大規模修繕履歴。

これらを一度にすべて確認できない場合もあります。

しかし、購入を本格的に検討する段階になったら、不動産会社や管理会社を通じて必要な資料を確認していくことが大切です。

特に「築古だけれど価格が魅力的」という物件ほど、価格だけで判断せず、耐震性や管理状態を確認しましょう。

賃貸でも旧耐震・新耐震を見るべき?

賃貸住宅でも、建築時期は確認しておきたいポイントです。

賃貸だから建物の安全性が重要でないわけではありません。

旧耐震の物件でも、耐震改修が実施されている可能性があります。

逆に新耐震でも築年数が進んでいる場合には、建物の管理状況が重要です。

賃貸物件を探す際には、

築年数。

構造。

耐震改修の有無。

避難経路。

ハザードマップ。

などを確認しておくとよいでしょう。

特に家賃が周辺相場より大幅に安い築古物件では、「なぜ安いのか」を確認することも重要です。

「旧耐震だから買わない」ではなく「確認して判断する」

ここまで見ると、旧耐震マンションは避けた方が簡単だと感じるかもしれません。

しかし、不動産選びでは条件を一つだけで切ると、立地や価格など別の魅力を持った物件を見逃す可能性もあります。

一方で、

「安いから旧耐震でも気にしない」

という判断も慎重にする必要があります。

重要なのは、

旧耐震なら旧耐震なりに確認するべきことが増える

と理解することです。

耐震診断。

耐震改修。

建物状態。

管理。

修繕積立金。

地盤。

これらを確認したうえで、自分がリスクを受け入れられるか判断することが大切です。

まとめ

旧耐震基準と新耐震基準の大きな境目は、1981年6月1日です。国土交通省も、新耐震基準がこの日から適用されたことを案内しています。 (国土交通省)

ただし、中古住宅を選ぶときに、

1981年以前だから危険
1981年以降だから絶対安全

と単純に判断することはできません。

旧耐震マンションでも耐震診断や耐震改修を行っている場合があります。

一方、新耐震マンションでも築40年以上になる建物があり、管理や修繕状態の確認が重要です。

木造住宅では、1981年だけでなく2000年も一つの確認ポイントになります。

また「耐震等級」は新耐震基準とは別の仕組みです。

住宅性能表示制度では、地震に対する構造躯体の性能を等級で表示しており、耐震等級1・2・3という形で住宅性能を比較できます。 (国土交通省)

地震に強い住宅を選ぶために必要なのは、「新耐震」という一つの言葉だけではありません。

建築時期
耐震診断
耐震改修
耐震等級
地盤
管理状態

を組み合わせて見ることが大切です。

中古マンションで価格が魅力的な物件を見つけたときも、

「築年数が古いからやめる」

でも、

「安いから買う」

でもなく、

なぜこの価格なのか、耐震性はどのように確認されているのか

を調べてから判断することが重要でしょう。

そして次回は、マンション選びで多くの人が気になる疑問を取り上げます。

「地震のとき、マンションは何階が安全なのでしょうか?」

1階なら揺れにくいのか。

高層階は本当に危険なのか。

タワーマンションでは長周期地震動によってどのような影響があるのか。

さらにエレベーター停止や断水など、建物が無事でも生活できなくなるリスクもあります。

第4回では、マンションの高層階・中層階・低層階で地震時に何が違うのかを詳しく解説します。

引用元・参考元

  • 国土交通省「マンションの耐震性等についてのQ&A」 (国土交通省)
  • 国土交通省「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法」 (国土交通省)
  • 国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」 (国土交通省)
  • 国土交通省「共同住宅ストック再生のための技術の概要(耐震性)」 (国土交通省)
  • 国土交通省「新築住宅の性能表示制度 かんたんガイド」 (国土交通省)
  • 国土交通省「耐震性能を等級で確認して、安心の住まいづくり」 (国土交通省)
  • 国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律・住宅性能表示制度」 (国土交通省)

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