まずは結論(この記事の要点)
- 「持ち家vs賃貸」は、感情ではなく資産性・出口戦略・家計耐性で決める。
- 家の総コストは「購入価格 ± 売却差額 + 金利 + 税金 + 修繕・管理費 + 諸費用」で計算する。
- 判断の土台は簿記(B/S・P/L)。数字で“見える化”することが後悔しないための第一歩。
賃貸の“経済実態”を簿記で見る
まず、賃貸の家計は非常にシンプルです。会計の世界では、会社の損益をP/L(損益計算書)、資産と負債の状況をB/S(貸借対照表)という書類で見ますが、これは個人の家計にも応用できます。
賃貸の場合、毎月支払う家賃はP/L(損益計算書)上の「費用」として計上されるだけ。あなたのB/S(貸借対照表)に資産が積み上がることはありませんが、同時に負債が増えることもありません。
この身軽さが賃貸の最大のメリットです。転勤や収入の変動、家族構成の変化にも柔軟に対応できる機動性の高さが強みです。一方で、いくら家賃を払い続けても、それが自分の資産として貯まってっていかない点がデメリットと言えます。
持ち家の“経済実態”を簿記で見る
一方、家を買うという行為は、あなたの家計を「個人の家計」から「小さな会社の経営」へと変えます。
まず、住宅ローンを組んで家を買った瞬間、あなたのB/Sにはプラスとマイナスの両方が記録されます。
- 資産の部: 土地・建物
- 負債の部: 住宅ローン
そして、住んでいる間はP/Lに様々な費用が発生し続けます。
- ローンの支払利息
- 固定資産税や都市計画税
- 火災保険料などの保険料
- (マンションの場合)管理費・修繕積立金
さらに、会計上の重要な概念として「減価償却」があります。建物は時間とともに価値が目減りしていくため、その価値減少分も目に見えないコストとして存在します。土地の価値は市況に左右されますが、建物は基本的に古くなるほど価値が下がっていくのです。
10年スナップショットでざっくり比較
この考え方を、3,000万円で家を買った場合の10年後のシミュレーションで見てみましょう。
ケース①:5,000万円で売却
値上がり益で、10年間の実質的な家賃はタダ。さらに2,000万円の利益が出ます。
ケース②:3,000万円で売却
値下がりはしていませんが、家賃がタダになったわけではありません。
ケース③:2,000万円で売却
1,000万円の値下がりが、実質的に1,000万円分の家賃を払ったことと同義になり、賃貸の方が得だった可能性が高まります。
【重要】忘れてはいけない追加コスト
上記の売却差額に加えて、持ち家には10年分の固定資産税・管理修繕費・ローン金利・購入/売却時の諸費用が必ず上乗せされます。ケース②が実質的に賃貸よりコスト高になることが多いのは、このためです。
「売らない前提」は危険?——現実に起こり得ること
「一生住むのだから、売却価格は関係ない」という意見は、一見すると正しく聞こえます。しかし、その前提は本当に盤石でしょうか?
- 収入減(失職・病気)
- 転勤(国内・海外)
- 介護・家族構成の変化
- 災害・近隣トラブル
これらの理由で、住み替えや売却、賃貸化が必要になるケースは決して珍しくありません。だからこそ、購入する前から「いつでも有利な条件で売れる・貸せる」という出口戦略を仮説として持っておくことが、現代の持ち家戦略における最大の安全策なのです。
📝 マイホーム購入前に考えるべき5つの質問
次の質問に、あなたは迷わず「YES」と答えられますか?
- ① 10年後、家の資産価値が2割下がっても家計は困らないか?
- ② 固定資産税・修繕費・保険料なども含めた「総コスト」でシミュレーションしているか?
- ③ 転勤や病気で住めなくなった時の出口戦略(売却案と賃貸化案)を持っているか?
- ④ 毎年の建物の価値減少(減価償却)と、住宅ローン返済(元金と利息の内訳)を理解しているか?
- ⑤ 金利が1%上昇しても、家計の純資産が減っても、生活に影響はないか?
→ 1つでも「NO」があるなら、焦る必要はありません。
もう一度、購入計画を見直しましょう。
ケース別の目安(“買い”が有利 / “賃貸”が無難)
まとめ:お金の共通言語=簿記で意思決定を“再現可能”に
「持ち家vs賃貸」は、「どっちがお得?」という漠然とした問いではありません。B/SとP/Lを使い、総コストとリスクを数値化して、自分の状況に合った選択肢を選ぶというテーマです。
この考え方は、家電や車など、他の大きな買い物にも応用できます。「年あたりのコスト」と「出口(リセールバリュー)」を常にセットで考える習慣が、あなたの資産を確実に守り、育てていきます。
もし判断に迷ったら、まずは先ほどの「5つの質問」でセルフチェックをしてみてください。「NO」がある項目を整理することが、次の一歩に繋がります。
あなたの状況を「数字」で見える化しませんか?
この記事で、ご自身の判断軸がクリアになった方も多いのではないでしょうか。
次のステップとして、具体的なアクションをご提案します。
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